
「今日からうまくいく話し方」は、Voicyの人気パーソナリティさんにコミュニケーションのコツを伺うインタビュー企画です。今回は「澤円の深夜の福音ラジオ」の澤円さんに話し方のコツについて伺いました。こちらは、そのインタビューを元に書き起こした記事の後編です。前編はこちらから。(記事末尾で、動画も紹介しています)
澤円さん
株式会社圓窓 代表取締役。
生命保険のIT子会社勤務、大手外資系IT企業を経て、現在に至る。
プレゼンテーションに関する講演活動や、数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書に『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)、『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)などがある。
Voicyチャンネル「澤円の深夜の福音ラジオ」では人生を豊かに生きるための思考法について発信中。
Twitter:@madoka510

感情的にならない。正しさより楽しませることを重視する
——プレゼンや会話の失敗経験は?
失敗はいろいろあるのですが、実はあんまり覚えてないんです。
ただ、昔と比べて大きく変わったのは、説明に重きを置かなくなったことですね。以前は僕自身も「正しく説明しなきゃいけない」という呪いにかかっていて、説明ばかりしていました。
前職のマイクロソフトでは、エンジニア職のメンバーは必ずイベント登壇をしていました。ただ、最初の数年は正しく話すことにフォーカスしていて、うまくプレゼンが出来ませんでした。でも、やっていくうちに、正しく説明することがすべてじゃないと思い始めたんです。
プレゼンで「こんな機能があるんですよ」と、デモンストレーションすることがあるんです。そのときに楽しませることに味をしめたんですよね。楽しませることで、興味を持ってもらえた。その成功体験があったことで、「正しく説明する」から「楽しませること」に意識が変わってきました。
あと、プレゼンテーションとは違いますが、ミーティングのファシリテーションでは、感情的になるのは効果が薄いです。腹を立てたり恫喝したりするのは、一時的には効果がありますが、持続力はないんです。
マネジメント能力がない若いころは、そういうやり方をしていました。怒られた側は、怒られないように行動するので本心からじゃないんですよね。モチベーションがゼロなので、まったく意味がない。結果的にコスパが悪かったです。
「人」として対立しない
——マネジメントやファシリテーションで、まず何を意識したらいいですか?
まず、人として対立しないことです。意見の対立は人間にとって自然なことですが、人として対立しないことは意識しています。
「だいたいお前さ……」や「そもそも君という人間は……」は、ミーティングの場では反則技なんですよ。何かのトピックについて語るのはいい。けれども、人間性について語るのは、物事が進まないので効果がありません。
——相手を尊重するのが大事?
もちろん。決定権や評価する権限を持っている人は、会話をする時はWhyを使ってはいけないと思ってます。
「なぜそうやったの?」「なんでこういう結果になった?」とWhyで聞くと、聞かれた側が責任を持って説明しないといけないんですよね。そうすると、すべてのことについて「言い訳をするな」と言われるリスクがある。これは、聞かれた側にとっては非常にストレスなんです。
なので、僕はWhyではなく、Whatで聞くことを心がけています。「何があった?」や「何があなたの邪魔になってるの?」と聞くと、聞かれた側もファクトで伝えることができ、説明しやすくなるんですよね。
そして、その後にHowで聞く。「どうすれば、あなたを助けられますか?」と。そうするとヘルプが出しやすくなり、「じゃあいっしょに考えよう」と次に進めるんです。
Whyで聞くと、前進するエネルギーがどんどん削られていく。特に問題が起きたときは「何があった?」と声をかけると、非常に解決しやすくなります。大切なのは、問題となっていることや目指すゴールを、相手といっしょに見ることなんです。
——これまでWhyで聞いたことはありましたか?
若いころはやってました。早く答えが返ってきますし、Whyの方が相手は考えるだろうと思ったりもして。
でも、世間的に認知されてきたときに、僕がWhyで質問されたことがあって。それが、ストレスだったんですよね。そのときに、このやり方は人がハッピーになってないと思うようになって、ここ10年ぐらいはかなり意識するようにしています。
言葉は人生を変える
——澤さんにとって会話、プレゼンとは?
コミュニケーションやプレゼンテーションは、端的に言うと人生を変えるものだと思っています。世の中が変わるのは、誰かが誰かに何かを言うからじゃないですか。
言葉によって、人は元気になったり行動を始めたりします。言葉はすごくパワーを持っていて、プレゼンテーションにせよ会話にせよ、相手の未来を変えるきっかけのひとつになっていると思いながら話していますね。
もちろん、ピースとしては小さいです。僕のひとことで人生が180度変わるとか、そこまで思い上がっていないです。ただ、少なくとも前に進めるようなものを提供していきたいですね。
