TOPハウツー・学習歴史十二単着付け師の【にちにち気づきだより】第646話 【月やあらぬ…】同時に見られる唯一のもの10:21 9月27日 90再生 問題を報告する 再生する シェアする AI目次源氏物語に登場する「月」の役割とは?隔たった者同士を結ぶ唯一の「月」成平の歌にみる変わらぬ月と移ろう心着物と技が繋ぐ時空を超えた絆千年前の装束に触れることで得る一体感AI文字起こし(β版) # 今日はどんな日? 日々気づきだより佐藤美奈子です。 今日もお聞きいただきありがとうございます。 このチャンネルでは、毎朝、平安の行事、季節の移ろい、 当時の人の暮らし、そして少族のこと、その日の小読みを一つお話ししています。 千年前の営みが、今の暮らしや仕事にどう繋がっているのか、 毎朝一つお届けしています。 はい、昨日はお彼岸明け、おはぎの話をしました。 このおはぎの話、聞いてくださった方からメールをいただいて、 ちょっと面白いお話でしたということで、感想をいただきました。 ありがとうございます。 今日は月の話をもう一度します。 源氏物語などに出てくる月のお話です。 # あの人も同じ月を見ているだろうか 例えば、源氏物語には月の場面が数え切れないほど出てきます。 そして、ここがこの良さというか、みやびなものを感じさせるんですけれども、 そのほとんどが、別れか思い出か、届かない気持ちと結びついているということです。 なぜでしょうか。 これは、こういう理由ではないかなと思います。 月は、誰の上にも同じように出ているものだからです。 だから、離れた者同士が同時に見ることのできる唯一のもの、それが月です。 まあ、私たちは平安時代という時代に暮らしていなかったので、もちろんですけど、思い出せませんけれども、 ちょっと思いを馳せてみる、ちょっとやってみてください。 手紙は届くのがすごく時間がかかる時代です。 会いに行くには、方角の基地なのか、今日なのか、そういう方角の喫嬌まで気にしなければならない時代。 そんな時代に、月だけは同時刻に共有できたものです。 例えば、今頃、あの人も同じ月を見ているのだろうかというふうに、そういう思いを募らせ方というでしょうかね。 思い方と言えばいいかな。 思い方というのは、その時代の通信手段がない時代だからこそ、生まれた思いの募らせ方だと思います。 いつでも連絡がつく私たちは、その代わりに、この思いの募らせ方というのを忘れてしまったのではないかなと思います。 大丈夫かなと思えば、LINEをするとか、メールをする。 先日も台風などが多かった時に、主人の帰りがちょっと気になって、大丈夫って連絡を入れるのも一本で済みますよね。 大丈夫って返事がくれば、大丈夫かと思う。 けれども、大丈夫だろうか、大丈夫だろうかって思いを募らせることもなく、ポチッと押しちゃうわけですよね。 こういう一句があります。 月やあらぬ、春や昔の春ならぬ、我が身一つは元の身にして。 これは有原の成平の歌の一句です。 月も春も去年のままだのに、自分だけが変わってしまった。 そういう嘆きの歌だと言われています。 月は昔の月ではないのだろうか。 あの人と一緒に見た月ではないのだろうか。 春も昔の春ではないのだろうか。 いや、月も春も変わっていないな。 それなのに、私自身の身一つだけは昔のままでいる。 大切な恋人を失っていた男の人が、かつて一緒に過ごした荒れ果てた家を訪ねて、周囲の景色や時は変わってしまったように感じて、自分だけが取り残されて変わらない現実を悲しむ、切ない愛情や無情感を表していると、ここ時点に書いていました。 さあ、今夜月がめでられるでしょうか。 今夜の月は誰と同じものでしょうか。 # 着物を広げると思い出すあの人 私の話になりますけれども、ちょうどこの9月に私は58歳になりまして、 27歳の時に着物を教える、着付けを教えるという仕事を大瀬使いまして始めていましたから、 まるまるもう30年たったんですよね。 こういうふうに長く人と触れ合って教えていると、しばらくお会いしていない方のことをふっと思い起こすことがあります。 それはどういう時かというと、 お着物を広げた時なんですよね。 この着物、すごく思い出があるというふうにある方を思い出したりします。 以前稽古に通ってくださった方を思い起こすこともあるし、遠くへ行かれてしまった方もいらっしゃいます。 天に召された方もいらっしゃいます。 暮らしが変わって、今はなかなか来られない方もいらっしゃいます。 今も着物に触れていらっしゃるのだろうかというふうに思ってしまうこともあるんですよね。 不思議なもので顔合わせていなくても、その方の手つきだったり、その方から質問された言葉だとか、 この方とこの手技を何度も何度も練習したなというところをすごく思い出すんですよね。 そして、どこか別の場所で、もしかしたら着物を広げて帯を結んでいるのではないかなという姿を想像することもあります。 今は特にこのSNSの時代、なかなか遠方で私のところに来られなくなった方が一生懸命発信をしていて、 美しい着姿、美しい仕上げ方というのをインスタグラムで上げているのを見て、 ああ、土地は違うし、使っている着物は違うけれども、同じように着物を広げてやってらっしゃるんだなというふうに、 同じ時間、同じ場所にいなくても、この方も同じく私と同じように、やっぱり着物を広げてらっしゃるなというふうに感じることがあります。 教わった手順を思い出しながら、同じところで少し迷っているのかなと、ちょっと心配してみたり、 あるいは、以前できなかったことが、今は自然にできているかもしれない。 会えなくても同じ方をたどって、同じ着物に触れている。 そういうふうに思うと、離れているということがすごく違うものとして捉えられる、違って感じられるわけです。 技というものはそういうものかなと思います。 人から人へ渡った技も、それぞれの場所できちんと続いているものなんだなというふうに、最近は感じるようになりました。 例えば、離れた者同士が、同時に見ることのできる唯一のもの、それが月であるということ。 今、私たちにはいくらでも手段がありますよね。 会えなくても顔が見られるし、声も聞けます。 その代わりに、今頃あの人も同じものを見ているだろうかという思いの募らせ方というのは、いらなくなってしまった時代になりました。 けれども、私の仕事にはまだそれがちょっと残っていて、 所属というものは千年前と同じ形、ほとんど同じ形です。 本当の所属というものは、その時代に記された型、または寸法などを踏襲しながら作られておりますので、ほとんど同じ形です。 私が今扱っているものと、千年前の人が扱っていたものは同じ形をしているわけですよね。 そして、同じ順番で着せているわけです。 その時代の人に私は会うことはできませんけれども、同じ手順を同じ順で歴史が繋がっていく、通っているというか。 そういうのを月を見ることに少し似ているのではないかなと思います。 今、遠くで誰かが同じ所属を扱っている、誰かが十二単位を纏っている、その人の顔は私は分かりませんけれども、 同じところで迷っていて、同じところで手が止まっているのではないかなと思います。 そう思うと稽古場が少し広く感じてきます。 ちょっとした和室の稽古場ですけれども、すごく地球規模に広いなという感じがしてきます。 今日は9月27日、明日は72項が変わります。 虫が土に潜って、戸を塞ぐ頃です。 さて、どんなお話かお楽しみになさってください。 それではまた。ごきげんよう。 もっと見る #在原業平 #月見 #月夜 十二単着付け師の【にちにち気づきだより】さとうみなこ00:581.今日はどんな日?03:502.あの人も同じ月を見ているだろうか05:343.着物を広げると思い出すあの人コメント感想・質問・応援メッセージを書こう
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