TOPハウツー・学習歴史十二単着付け師の【にちにち気づきだより】第652話 【水始涸】元へ戻し静かに閉じていく12:33 10月3日 56再生 問題を報告する 再生する シェアする AI目次「水初めて枯るる」七十二候の異質さ光を映す田んぼ、土色への回帰華やかさの後に続く「下ろす」仕事「終える」ことの真の意味、次への接続華やかではない「終わりの施策」の価値AI文字起こし(β版) # 今日はどんな日? 日々築きだより佐藤美奈子です。 今日もお聞きいただきありがとうございます。 このチャンネルでは、毎朝、平安の行事、季節の移ろい、 当時の人の暮らし、そして消息のこと、その日の暦を一つお話ししています。 千年前の営みが、今の暮らしや仕事にどう繋がっているのか、 毎朝一つお届けしています。 はい、おはようございます。 今日は10月3日です。 この四十二行の御読みのお話、 8月から始めまして、ちょうどお盆明けぐらいからでしたでしょうか。 9月一月間お話、そして10月と、 意外と長く続けさせていただいていますけれども、 調べていくと、どんどん面白くなって、 もうちょっとしばらく続くと思いますが、お付き合いください。 七十二行というのは、 5日ほどごとに移り変わっていく小さな季節の名前ですね。 今日からは、水初めて枯るる、水が初めて枯れる頃と書くんですが、 ここで言う水は、川や池の水ではなくて、田んぼの水のことです。 実った稲を刈るために、春から張っていた水を抜いて、田を乾かしていく、 そんな農作業の時期を表しています。 水初めて枯るる、の行に入りました。 私はこの初めて、この水初めて枯るるというのを聞いた時に、 ちょっと意外に感じたんですね。 これなぜかというと、七十二行というと、 花が咲いたり、鳥が渡ってきたり、霜が降りたりという風に、 自然の変化を見つめて、その様子に名前を付けたものだと思っていたからなんですが、 この水初めて枯るるは少し違います。 今日はその違いからお話をしてみます。 そしてこの七十二行の漢字がちょっと難しい漢字を使ったり、 難しくない漢字を並べていても、読み方がちょっと変わっていたりしますが、 そちらの方は、コロモト・コヨミのサイトの方で漢字付きでお読みいただけます。 こちらのチャプターにリンクを貼っておきますので、どうぞそちらもご利用になってください。 # 水を抱えたままでは稲は刈れない はい、72項の名前をいくつか思い出してみましょう。 桜初めて開く。 この項というのは、桜が咲き始める頃の項です。 桜初めて開く。 そして、つばめ来たるというのもありました。 つばめがやってくる頃ですね。 虹初めて現るという項もあります。 虹が見え始める頃です。 そして霜初めて降るというのもあります。 霜が降り始める頃を表しています。 どれも人が手を加えなくても起きることばかりです。 桜も私たちが手をかけなくても自然に咲いていくし、 つばめも私たちがおいでおいでって呼ばなくても、ちゃんとその時期になったらつばめは飛んできますよね。 霜が降り始めるのも特に、そろそろ霜が 生えてもいい頃だよなって言いませんよね。 私たちはただそれを見つめて、ああ季節がここまで来たのだなぁと知ります。 虹も霜も人の差出で現れるものではないですよね。 ところがこの水初めてかるるは違います。 田んぼの水は勝手になくなるわけではないからです。 人がこの水の口を開けて水をどんどんどんどん落としていく、流していく。 稲刈りの前に土を乾かしておかなければ、人も道具も田んぼに入りにくくなるからです。 枯らしておかなければいけないわけですよね。 つまりこの口には人の仕事が入っているということになりますよね。 季節を見つめるだけではなくて、季節の移ろいに合わせて人も手を動かしている。 その営みまで小読みの言葉になっています。 七十二行は中国から伝わったものですけれども、日本の風土に合わせて何度も手が入れられてきました。 江戸時代には、渋川春美、または渋川春海と読む、この天文歴の学者の方々によって、日本の気候や暮らしに沿うように整えられていきます。 その中で、こうした実りの風景も季節を表す言葉として残ったのではないかなと思います。 私はこの口を知ってから、秋の田んぼの見え方の感じ方っていうんですかね、少し変わりました。 ちょうど今父がちょっと体調を崩して入院をしている関係で、青森に帰る機会がたびたびあるんですけれども、 東京ではなかなか見れない、都心に住んでいるので見れませんが、田舎に帰る頃に田んぼの横を新幹線が走りますから、この田んぼの状況を見るわけです。 春から夏にかけての水を張った田んぼというのは、空を映すほど水が張っているわけです。 朝の光も映すし、夕焼けも月も映すし、風がなければ水面は静かに、こう薙のような感じになっている。 そして鏡のように映るようになっています。 その鏡のような田んぼが秋になると消えていきます。 水が引いて、土が洗われて、稲だけが残って、その稲も神戸を垂れているわけですね。 やがて稲が刈られていけば、霧株の並ぶ刈田になります。 半年ほど光を映していた場所が土の色へ戻っていく、それが田んぼですね。 何かが始まる風景はわかりやすく華やかですけれども、 季節にはこうして少しずつ何かを下ろしていく時期というものがあります。 最初は華やか、それでもどんどんどんどんいろんなものを下ろして、下ろして、下ろして、そして巣の状態に戻っていく。 その感じを私は、この下ろすという感覚、すごく仕事の中にたくさんあるなあというふうに思っています。 絵文道では、お方様の姿が整ったところだけが仕事ではありません。 私はこの小族を下げて、畳んで、あるべき場所へ納めるというところまでを、一つのおふくあげだと思っています。 人の目が集まるのは、やはり着せていく時間、華やかですからね。 衣を一枚ずつ重ねていって、色が重なってきて、形が整って、お方様の姿が完成していく、とても華やかさがあります。 けれども、終わった後は場の空気がガラリと変わっていきます。 先ほどまで体に沿っていた小族を一枚ずつ下げて、そして布に残ったシワもあるわけですね。それを私たちは確認をしていきます。 体につけていた体の熱というものが衣にこもっているので、 その湿り気がないかどうかとか、そういうことを確かめながら、静かに元の形へ戻していきます。 着せる時とは別の手が必要ですし、別の意識が必要になっていきます。 本番が無事に終わるとホッとします。その安心から片付けになると手が急いでしまう人もいます。 どうしても華やかなところで完結してしまって、その後はお離れになるというか、ちょっと乱暴になってしまうという方も見受けられるのですが、 反対に人の目がなくなってから、一層静かに小族へ向き合うという方もいます。 私はそこにもその人の技が現れると思っているんですね。 次にこの小族へ触れる人が何の滞りもなく仕事を始められるところまで整えておく、その前の人が整えておかないと次の人は困るわけです。 そこまで戻してようやく終わりです。 小族を下げていく時間は少し寂しさもありますけれども、先ほどまで目の前にあった華やかさがあるお姿は一枚ずつ解いていくと、 どんどん寂しさも出てきますけれども、その時間を通らなければ次のおふくあげは始まらないので、それもまた一つ仕事なわけです。 何かを終えるというのは、ただ消してしまうことではなくて、次へ渡せる形にちゃんと戻していく、そこがやはり終えるということにつながっていきます。 田んぼの水も同じです。稲を刈るためにはまず水を落とさなければならない。 実りを手にする前に先に終わらせておくことがある。これは順番なんですよね。 私たちは始めるための順番にはよく慣れていますけれども、道具を揃えたりとか、日を決めたりとか、人を集めるけれども、 終えるための準備については、そこまで意識してこなかったように思います。皆さんいかがでしょうか。 水を落とす作業は何かを足す仕事ではなくて、むしろそこにあったものを減らしていく。 光を映していた水面も消えて、田んぼの表情も変わっていきます。 実をによっては少し寂しい風景ですけれども、水を抱えたままでは稲を刈ることはできない。 終わりの施策というものは大抵華やかなものではない。 ものを減らして、元へ戻して、静かに閉じていく。だからつい後回しにしたくなるんですけれども、そのひと手間がなければ次へ進めない。 七十二項はそんな時間にも名前をつけていたというわけです。 水、はじめて刈るる。覚えておいてください。 春からずっと空を通してきた田んぼが、水を手放して土の色へ戻っていきます。 皆様もちょっと田んぼを見る機会があれば、そういうことを思い出してみてはいかがでしょうか。 それではまた。ごきげんよう。 もっと見る #二十四節気 #田んぼ #七十二候 #水始涸 十二単着付け師の【にちにち気づきだより】さとうみなこ02:481.今日はどんな日?https://ikumina.com09:452.水を抱えたままでは稲は刈れないコメント感想・質問・応援メッセージを書こう
第672話 霜降〜露と霜の違いは? 11分・一昨日・ 40再生AI目次梅雨と霜、その形成メカニズムの差二十四節気に刻まれた秋の深まり暦が示す日付と各地の季節のずれ十二単が教える変化の美しさとは日々の小さな変化に気づく心の豊かさ
第671話 平安京はなぜ、東へ広がったのか? 15分・10月22日・ 48再生AI目次平安京建都の日に振り返る歴史設計図通りの都にならなかった理由理想と現実の間で都はどう変化したか守るべきものと変えるべきもの見極め世代を越え育まれた古都の姿とは
第670話 清少納言は、なぜ御簾を上げたのか。 13分・10月21日・ 67再生AI目次平安貴族を魅了した白詩文集の世界紫式部を悩ませた漢詩の学びと女性清少納言が御簾を上げた、その真意言葉なき対話を生む共通認識の力知を分かち合う教養が繋ぐ人と人
第669話 神様の留守を守る「恵比寿さま」 13分・10月20日・ 80再生AI目次カンナ月に出雲に残る神様とは?商売繁盛を司る恵比寿さまの役割目立たぬ場所を守る「留守神」への感謝「べったら市」が今に伝える恵比寿講日常を支える「見えない貢献」の価値
第668話 「百日の祝」生後百日、もう一度祝った理由 12分・10月19日・ 78再生AI目次平安時代の「百日の祝」その真意とは医療が未発達な時代の「日々の重み」「百日の祝」から「お食い初め」へ「できた」だけではない継続の価値誰かと分かち合う「日々の歩み」
第667話 虫の声と、言葉にしない「寂しさ」 12分・10月18日・ 79再生AI目次暦と虫の声 古代のキリギリスとは和歌が紡ぐ独り眠る夜の情景「衣片しき」に秘められた寂しさ言葉なき感情を察する仕事の視点現代社会と日本語の余白の美
第666話 新米を、まず神さまへ 13分・10月17日・ 78再生AI目次「新米をまず神様へ」平安の智慧稲作と「衣」に宿る感謝の祈り「良いものをまず誰かのため」仕事術自分の喜びより先に「誰かを想う」「いただきます」千年の感謝と恵み
第665話 琵琶の音から、弾く人が見えてくる 13分・10月16日・ 81再生AI目次平安貴族の琵琶:女性も奏でた優雅な音色源氏物語に学ぶ、技は「かきあわせ」に宿る姿見えぬ琵琶の音に込められた心のあり方着付けの心:最初の所作に表れるプロの技小さな変化を見抜く、聴き手の感性とは