TOPハウツー・学習歴史十二単着付け師の【にちにち気づきだより】第665話 琵琶の音から、弾く人が見えてくる12:30 10月16日 49再生 問題を報告する 再生する シェアする AI目次平安貴族の琵琶:女性も奏でた優雅な音色源氏物語に学ぶ、技は「かきあわせ」に宿る姿見えぬ琵琶の音に込められた心のあり方着付けの心:最初の所作に表れるプロの技小さな変化を見抜く、聴き手の感性とはAI文字起こし(β版) # 今日は琵琶の話 日々気付きだより佐藤美奈子です。 今日もお聞きいただきありがとうございます。 このチャンネルでは毎朝、平安の行事、季節の移ろい、 当時の人の暮らし、そして衣のこと、その日の暦を一つお話ししています。 千年前の営みが今の暮らしや仕事にどう繋がっているのか、 毎朝一つお届けしています。 今日は10月16日、平安時代の楽器についてお話をしてみたいと思います。 琵琶のお話。 琵琶と聞くと皆さんはどのような姿を思い浮かべるでしょうか。 例えば、平家物語を語る琵琶奉仕の姿を思い浮かべる方も多いかもしれません。 物語を語りながら琵琶を奏でる。 あの独特な音色にはどこか遠い時代へ連れて行かれるような響きというものがありますよね。 ゾクゾクします、私は、あの琵琶の音。 ベベベベーンというあの感じ。 けれども、この平安時代の宮廷というのは、琵琶はまた違った形で示唆されていたと言われています。 貴族たちが音楽を楽しむ場で大切にされてきた楽器の一つだったわけです。 そして女性たちも琵琶を弾いていました。 源氏物語にも琵琶を見事に奏でる女性が登場します。 今日はその音色に耳を傾けながら少し面白いことを考えてみたいと思います。 人は姿を見なくてもその人のことを知ることができるのでしょうか。 # ささやかな動作にその人が出る 源氏物語に赤子の君という女性が登場します。 源氏が妻から赤子へ移り住んだ頃に出会った女性ですね。 赤子の君は音楽の教養に恵まれた人として描かれています。 中でも琵琶を弾く腕前は大変優れていました。 そのことが印象深く描かれているのが、若名の下という漢です。 光源氏のお宅で、女性たちが楽器を持ち寄り音楽を奏でる場面があります。 女楽と呼ばれる場面です。 赤子の君は琵琶を、紫の上は和琴を、 赤子の娘は奏を、そして女さんの宮は琵琶を受け持ちます。 それぞれの女性が異なる楽器を奏でるわけです。 考えてみると随分優雅な時間ですよね。 当時音楽はただ楽しむためだけのものではありませんでした。 楽器を学び音を整えて美しく奏でることも貴族の大切な教養でした。 どのような音を出すのか、どのような間合いで弾くのか、 そうしたところにもその人のだしなみや積み重ねてきた時間が現れていたのでしょう。 さて、この女楽の場面には私の好きな描写があります。 それぞれの楽器の調子を整え、音を合わせ始めるところです。 ここに、「かきあわせ」という言葉が出てきます。 楽器の調子を確かめ、演奏の音を合わせるための短い調べのことです。 本格的な演奏へ入る前にまず音を合わせるのですよね。 源氏物語ではその時の赤子の君の美話が、大変見事だったと書かれています。 古風で熟練した手遣いから、澄んだ美しい音色が響いてくる、そんな様子が描かれています。 私はここがとても好きで、なぜかと言いますと、長い曲を弾き終わったところでようやく腕前がわかるのではないからです。 最初に音を合わせるその短い時間にも、すでに技が現れている。 それまで積み重ねてきたものがほんのわずか音に滲み出るのですよね。 しかも平安の貴族の暮らしでは、女性がミスや貴重の内側で楽器を奏でることもあります。 姿がよく見えなくても音は届きます。 ミスの向うで誰かが美話を弾いている。 顔を見ることはできなくても、その音を聞けば、どれほど心を込めて楽器に向き合っているのか、想像することができます。 考えてみれば不思議なことで、人は姿を見せなくても、自分の内側にあるものを音に託すことができるのですよね。 そして私はこの始まる前のほんの短い時間に、その人らしさが現れるという感覚に仕事の中でも出会うことがあります。 着付けの現場で私は技術が始まる前の時間というものをとても大切にしたいと思っています。 この置物を一枚ずつお客様に重ねていくという手の動きももちろん大切ですけれども、 それよりもちょっと前、お客様をお迎えして最初にご挨拶をするところから、もう私たちの仕事は始まっていますよね。 本日はよろしくお願いいたします。佐藤でございます。 そういうふうな何気ない一言にも、いろんなものが現れます。 私の声の大きさだったり、話す速さだったり、言葉をかける間合いもそうですね。 そして相手のお返事を待つというほんの短い時間。 同じ言葉を使っていても、聞こえ方は一人ずつ違いがあります。 緊張していると知らず知らずのうちに声が少し速くなることもあります。 反対に落ち着いた声でご挨拶ができると、その場の空気がふっと和らぐことがあります。 私も緊張していればお客様も緊張なさっているわけですからね。 お客様にとってお着物をお召しになるということは、日常とは違うご経験です。 これから何枚もの衣ですとか帯をつけていくわけです。 普段とは異なる装いに体を預けていただくことになります。 ですから私たちは手を動かす前に、まず安心していただけるように心を配ります。 お声掛けをしてお客様の様子を伺いながらお支度を始めていくわけです。 私は技術というものは手先だけにあるものではないと思っていますし、お伝えもしています。 どれほど美しく着物を着付けられたとしても、その方が不安なままでは良い着付けとは言えません。 相手の呼吸に気づくこと、少し緊張されているようなら急がずに待つこと、 その方が安心して体を委ねられるように、こちらも心を落ち着けておくこと、 そうしたことがやがて手の動きにも繋がっていきます。 受講生の方のお稽古を見ていても、技術を覚えるにつれて最初のお声掛けや立ち入り振る舞いが自然に落ち着いてくることがあります。 以前は手順を間違えないことで精一杯だった方が、いつの間にか目の前の相手のことまで考えられるようになっている。 私はそういう変化をとても嬉しく思います。 衣を扱う技だけではなくて、人に向き合う心も少しずつ育っているからです。 そしてその変化は大きな動作よりも案外小さなところに現れるんですよね。 それが最初のご挨拶だったり、衣に触れる前の呼吸だったり、相手のお返事を待つほんのちょっとのわずかな間、 それをすごく短い時間ですけれども、そこにその人が学んできたことがじわりと現れているように思います。 私はそういうところにも目を向けられる人でありたいなと日々思っています。 源氏物語の書き合わせのお話に戻りますね。 まだ長い曲を奏でているわけではありません。 これから演奏を始めるために楽器の調子を整えて、音を合わせているところです。 けれどもその短い調べの中に、明石の君の美話の美しさが現れていました。 私はそこに耳を止めたこの物語の描写がとてもいいなと思います。 華やかな曲の完成だけを見ているのではなくて、音を合わせ始めたその一時から、すでに人の技を感じ取っているんです。 考えてみると私たちは普段、完成したものに目を向けることが多いですよね。 美しく仕上がった装束、立派に演奏された音楽、きれいに整えられた料理、 もちろん完成した姿にはそれまでの仕事が集まっていますけれども、その人らしさは完成したものだけに現れるのでしょうか。 私はそうではないのではないかなと思います。 まだ誰も注目していないような、ささやかな動作にもその人が見えることがあります。 道具を手に取る時とか、誰かに声をかける時とか、これから始める仕事を前に呼吸を整えている時とか、 そういうところに無理に飾ろうとしていないその人の本当の姿が現れるのかもしれません。 そしてもう一つ思うことがあります。 それは、そうした小さな違いに気づくためには、受け取る側にもよく見る目やよく聞く耳が必要だということです。 同じ音を聞いていても、ただ音が鳴ったと感じる人もいれば、その響きの違いに気づく人もいます。 同じ所作を見ていても何も感じないこともあれば、そこに長い稽古の積み重ねを感じることもあります。 私はそういう違いに気づけることも学ぶということの一つなのだと思います。 目立つところばかり見るのではなくて、その前にある小さな変化にも心を向ける。 大きな音ばかり聞くのではなくて、静かな音にも耳をすませる。 そうすると、これまで気づかなかった美しさが少しずつ見えてくるのではないでしょうか。 平安の人たちは水の向こうから聞こえる音に心を寄せていました。 姿が見えなくても音を聞いて、その響きに何かを感じ取っていたんですよね。 私はそんな風に耳をすませる時間を、今の暮らしの中でも大切にしたいと思っています。 # 始まる前に心を寄せる はい10月16日今日は平安時代の琵琶のお話でした 源氏物語には明石の君が見事な琵琶を奏でる場面があります そして曲を奏でる前に音を合わせる その短い調べにも長く積み重ねてきた技が現れていました 今日はもし身近な方が何かを始めようとしていたら その最初の一言や小さな動作に少しだけ心を向けてみてください いつもは気づかなかったその方らしさが感じられるかもしれません 華やかな音楽が始まる前にも美しい音は聞こえている そんなことを思いながら今日も1日を過ごしていただけたら嬉しいです それではまたごきげんよう もっと見る #二十四節気 #源氏物語 #七十二候 #琴 #琵琶 #筝 #衣と暦 #和琴 十二単着付け師の【にちにち気づきだより】さとうみなこ01:501.今日は琵琶の話09:492.ささやかな動作にその人が出る00:513.始まる前に心を寄せるコメント感想・質問・応援メッセージを書こう
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第658話 【木守柿】ひとつ残すということ 11分・10月9日・ 48再生AI目次柿が持つ学名と秘められた意味平安時代から続く「木守柿」の習わし全てを教えない講師業の「余白」の価値「残す」行為から学ぶ日本人固有の知恵一つ残された柿が語る「豊かさ」とは