TOPハウツー・学習歴史十二単着付け師の【にちにち気づきだより】第677話 降っては止む雨に、ちゃんと名前がある12:38 10月28日 63再生 問題を報告する 再生する シェアする AI目次「しぐれ」とは?移ろいやすい雨和歌に詠まれた雨の多様な表情伝統の小袖を守るプロの心得繰り返す不安を乗り越える方法日々の穏やかさを生む「名前」の力AI文字起こし(β版) # 今日はどんな日? 日々気付きだより佐藤美奈子です。 今日もお聞きいただきありがとうございます。 このチャンネルでは、毎朝、平安の行事、季節の移ろい、 当時の人の暮らし、そしてコロモのこと、 その日の暦を一つお話ししています。 千年前の営みが、今の暮らしや仕事にどうつながっているのか、 毎朝一つお届けしています。 今日は10月28日です。 今日は72項が変わります。 小雨時々降る。 小雨時々降る。 小雨が時々降る頃という、そのままの意味ですけれども、 なんとも素朴な名前ですよね。 けれども、この項が伝えているのは、ただの小雨ではありません。 しぐれと呼ばれる、この季節ならではの雨のことです。 降ったかと思えば、もう止んでいる。 雲の切れ間から日が差したと思うと、また降り始める。 そんな移ろいやすい雨ですね。 今日は、このしぐれという言葉から、 昔の人たちがどのような季節を感じていたのか、 お話をしてみたいと思います。 # 降っては止み、止んではまた降る はい、「しぐれ」というのは、時に雨と書きますけれども、晩週から初頭にかけて見られる、降ったり止んだりする雨のことです。 長く降り続く秋雨とは違って、雲が通り過ぎると雨が止んで、しばらくするとまた降ってくるということもあります。 京都にも古くから、しぐれに親しんできた歴史があるようです。 北山の方角から雨雲が流れ込んで、ひとしきり雨を降らせてはまた晴れる。 そうした雨を、北山しぐれと呼んでいるそうです。 10月22日には平安京のお話をしましたよね。 その都に暮らした人々も、山から近づいてくる雨雲を眺めて、しぐれの気配を感じていたのでしょう。 さて、しぐれは和歌にもよく読まれてきた雨です。 昔の人たちは、しぐれが降ると、山の木々が美しく色づくと考えていました。 しぐれがもみじを染める。 そんな表現が和歌にはたびたび登場します。 実際に雨が葉を染めるわけではありませんけれども、冷え込みが進む季節と木々が色づく季節は重なっています。 昔の人はその変化を、しぐれという雨に託していたんですね。 また、しぐれは涙のたとえとしても使われました。 降っては止み、止んではまた降る。 その様子にふとこぼれる涙や、繰り返し胸に訪れる悲しみを重ねたんでしょうね。 しぐれには振り方によっていくつかの名前もあります。 村しぐれ、村にしぐれと書いて、村しぐれというのは人しきり降って通り過ぎていくしぐれです。 片しぐれ、片方の方と書いて片しぐれ。 こちらでは雨が降っているのに、少し離れたところでは日が差している。 そんな場所によって振り方の違うしぐれを言います。片しぐれ。 同じ雨でも振り方の違いを見つけて、それぞれに名前がついているんですね。 私はここに昔の人たちの細やかな眼差しを感じています。 ただ、雨が降った、で終わらせずに、どのように降って、どのように止んだのかを見ているわけです。 そしてその移ろいを言葉に残しているんですね。 考えてみれば私たちの暮らしにも思いがけず訪れたり、通り過ぎたりするものもありますね。 私の仕事でも雨の日にはそのことを感じる場面があります。 絵文堂の祭児では、小族を稽古場から会場へ運ぶことがあります。 大切な絹の衣ですので、お天気は気になることの一つです。 特に雨の日はいつも以上に気を配ります。 小族を濡らさないことはもちろん、運び込む場所や衣を広げる場所にも注意が必要です。 雨が止んでいても足元が濡れていることがありますし、建物の入口では思い分けず、雨が吹き込むこともあります。 ですから、雨が降っていないから大丈夫とは考えないようにしています。 小族を守るために今何を確かめるべきなのか、そのことに目を向けるようにしています。 そして、こうした心配は一度確かめたら終わりというものでもありませんよね。 空模様が変わればもう一度確かめるし、雨が止んだら次の動きを考えることだってあります。 私はそうやって一つ一つ対応していくことというのは、仕事には必要なことだと思っています。 ただ、経験を重ねる前は予定にないことが起きると気持ちが落ち着かなくなるものです。 せっかく準備してきたのに雨が降ってしまった。 このまま降り続いたらどうしよう。そんな風に先のことを考え始めると、まだ起きていないことまで心配になってしまいます。 けれども、雨を止ませることは私たちにはできませんので、できるのは小族を大切に扱って、その時の状況に合わせて必要なことをすることです。 私はこの仕事を続ける中で、心配をなくそうとするよりも、必要なことを具体的に確かめる方が落ち着いて動けるのだと感じるようになりました。 一番やっぱり確認するのはお客様の足元ですね。 お客様がいらっしゃった時に、例えばコートをお召しだったり、 例えばお靴だったり、手も全体的に濡れていらっしゃる方もいらっしゃいますよね。 なので玄関先には、もうそのままいろんなところが拭けるようなタオルのようなものをたくさん ご用意しています。どんどんお使いくださいという感じです。 あとは、例えばソックスですとかタビですとか、そういうものも濡れる可能性があるので、 ソックスですけれども、白い替え用のソックスを新しいものですが、ご用意をしてお待ちしています。 比較的タビをお履きの方というのは、替えのタビをお持ちの方がほとんどです。 あとはタビカバーをお付けいただいて、備えていらっしゃる方が 道場のお客様には多いです。本当にそういう心得のあるお客様が多くて、助かっております。 消毒も、乾いたところへの移動なんですけれども、例えば濡れた方がそこにいらっしゃるということで、本当に安全かどうかというのはわからないわけですよね。 置き場所は安全かだとか、あとはお方様が移動されるところに支障がないか、お客様がお持ちいただいた荷物にちょっと水滴が付いていたら よろしくないので、体験をなさる場所とは別に保管をしていただく、そういうことも大切ですね。 確かめることが分かれば、手を動かして、どんどん皆様にもスタッフにも確認を急いでもらいます。 もちろん雨の日のお仕事は晴れの日よりも気を遣いますけれども、雨が降ったからといって全てがうまくいかなくなるわけではないですからね。 その場でできることを丁寧に重ねていけば、無事におふくあげを終えられるということが多くありますから、私たちはスタッフとともに、もうあまり気にせずにどんどんどんどん準備をしていきます。 しぐれのお話を聞くと、そんな現場のことを思い浮かべていますね。 雨が降ったり止んだりしますし、でもこちらまでその度に心を大きく揺らさなくても良い。 そうなった時にはそうなった時の準備がある。自分のするべきことに静かに向き合う。それも大切な技の一つなのかもしれません。 # 人の気持ちにも似た… シグレという雨の面白さは、降っては止むことにあります。 降っているときには空がすっかり暗くなることもありますけれども、 雲が通り過ぎればまた明るさが戻ってきます。 そしてしばらくするとまた雨が降る。 昔の人たちはその繰り返しをよく知っていたんですよね。 だからこそシグレという名前をつけて、その振り方の違いまで言葉にしたんだと思います。 私はこの名前があるということに一つの力があるように感じています。 何が起きているのかわからないとき、私たちは戸惑いますけれども、 これはシグレなんだということがわかれば、 降ったり止んだりする雨として少し落ち着いて眺めることができます。 どうだろうか、こうだろうかって考えなくても、 今でしたら気象庁のお電気も精度が上がりましたからね、 何時頃になったら止むってねっていうふうな感じでみんなと話していけば、 じゃあまず午前中が勝負ですねっていうふうに気持ちも切り替えられるわけです。 目の前の出来事をむやみに大きく感じずに受け止められる、 そういうことも必要かなと思います。 人の気持ちにも少し似ているところがあって、 仕事をしていれば同じような迷いですとか心配が何度も訪れることがありますけれども、 一度乗り越えたと思ってもまた気になることだってありますよね。 そんな時、またいつもの心配がやってきたなと軽く思えたら、 少し違った向き合い方ができるかもしれません。 その気持ちを無理に追い払うのではなくて、 まず自分は何が気がかりなのかを知って、 そして今できることがあれば一つずつこなしていく。 昔の人たちはしぐれの振り方を見分けたように、 私たちも自分の心の移ろいを少し丁寧に見つめてもよいのかなと思いました。 繰り返し訪れる者には名前をつけておく。 それは季節を知るためでなく、日々を穏やかに過ごすための小さな知恵にもなるように思います。 今日は四十二項の小雨時々降るとしぐれのお話でした。 降ったかと思うと止み、また雲が来ると降り始める。 昔の人たちはそんな雨の姿にも心を止めて、さまざまな名前を残してくれました。 これからの季節、雨が降ったり止んだりする日があったら、 しぐれという言葉を思い出してみてください。 もし急な雨に出会ったら慌てず空の様子を眺めてみる。 安全な場所でひとしきり雨をやり過ごす時間も悪くないかもしれません。 やがて雲が流れて景色が少し明るくなる。 そんな季節の移ろいを味わっていただけたらと思います。 それではまたご機嫌よう。 もっと見る #紅葉 #七十二候 #時雨 #霎時施 #北山時雨 #村時雨 #片時雨 十二単着付け師の【にちにち気づきだより】さとうみなこ01:301.今日はどんな日?07:482.降っては止み、止んではまた降る03:213.人の気持ちにも似た…コメント感想・質問・応援メッセージを書こう
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