TOPハウツー・学習歴史【にちにち気づきだより】第685話 牡蠣の季節に、昔の人の知恵を思う09:50 11月5日 57再生 問題を報告する 再生する シェアする AI目次平安京へ届く牡蠣と保存の知恵冷蔵技術なき時代の工夫とは珍味コノワタに宿る昔の知恵伝統技を活かす臨機応変な思考不便から生まれた工夫の奥深さAI文字起こし(β版) # 今日はどんな日? 日日奇跡でおり、佐藤美奈子です。 今日もお聞きいただきありがとうございます。 このチャンネルでは、毎朝、平安の行事、季節の移ろい、 当時の人の暮らし、そして衣のこと、その日の暦を一つお話ししています。 千年前の営みが、今の暮らしや仕事にどう繋がっているのか、 毎朝一つお届けしています。 11月5日になりました。 今日は、これから美味しくなる柿のお話をします。 柿ではなくて、海の柿です。 皆さんは、ローマ字のアール、アールのつかない月には柿を食べるな、 という言葉を聞いたことがあるでしょうか。 英語で、5月から8月までの月の名前には、アールという文字がありません。 この頃は、冬に春を迎える、柿の産卵期にあたって、 実が痩せて味が落ちることから、そんな言い伝えが生まれたようです。 ヨーロッパ方面の格言とも言える言葉なんですね。 もっとも夏に美味しい岩柿もありますから、すべての柿に当てはまるわけではありません。 さて、この柿、日本人は縄文時代から食べていたことがわかっています。 貝塚からたくさんの柿の殻が見つかっているんですね。 それほど昔から慕まれていた柿ですけれども、平安時代の都では、 今のように気軽に味わえるものではありませんでした。 今日は、海の幸が都へ届くまでのお話です。 # 牡蠣好きですか? 平安京は海から離れたところに作られた都です。 海辺に暮らす人なら、採れたばかりの魚や貝をその土地で味わうことはできたかもしれませんけれども、 遠く離れた都へ届けるとなると、そう簡単にはいきません。 今のように、冷蔵したまま運ぶことはできなかったからです。 ましてや、急速冷凍みたいな素晴らしい技術というのは、到底ないわけですからね。 そこで大切になったのが、保存のための工夫でした。 例えば、魚を干す、塩につける、あるいは発酵させる。 水分を減らしたり、塩を使ったりすることで、食べ物を長く保てるようにしたんですね。 10月には演技式に記された鮭のお話をしましたね。 干した鮭や、あとは巣はやりといった保存しやすい形に加工された魚が、都へ運ばれてきました。 この古い書物には、魚介や海藻など、実に多くの水産物が記録されています。 都の食卓は遠い土地の人々の仕事にも支えられていたんですね。 ここで少し考えてみたいことがあります。 今私たちは、海のない土地に住んでいても、柿を買うことができます。 産地から冷やしたまま運ばれた海の幸を、季節の料理として味わうことができます。 千年前の都の人々が持っていなかった便利さを、今の私たちはごく普通に享受しているわけです。 なんともありがたいことですね。 ただし、柿は新鮮なら生で食べられるというわけではありませんね。 生でいただく場合は必ず生食用と表示されたものを選ぶ必要があります。 今も安全に食べるための知恵と心配りは欠かせません。 さて、昔の保存食をもう一つご紹介しましょう。 コノワタです。 生子ですね、これは。 その生子の蝶を塩漬けにしたものがコノワタです。 古い書物には、のどからなどから都へ納められた記録も載っているんです。 今も珍味として親しまれています。 お酒の好きな方は、まあ目がないものではないでしょうか。 長く保存するための方法がやがて、 その食べ物ならではの美味しさとして受け継がれていったわけです。 とても文化の面白さを感じますね。 このお話は私の仕事にもつながっています。 エモン堂の祭典、イベントなどでは、 いつもの稽古場とは違う場所で十二人のおふかげをすることもあります。 会場が変われば、広さも人の動きももちろん変わります。 衣を広げる場所やお方様をお迎えする位置など、 あらかじめ考えておいたことを現場に合わせて調整する必要があります。 そんな時に私は、道具を増やしたり手順を変えたりする前に、 まず今あるものをよく見たいと思っています。 どこなら衣を安全に扱えるか。 二人のエモン者が無理なく動けるか。 お方様に安心してお召し上げいただけるでしょうか。 そんなこと一つ一つ確かめていくと、 大掛かりなものを用意しなくても、 立ち位置や動き方を工夫することで整う場合がたくさんあります。 もちろん必要な場所や道具、安全なところを省いて良いということではないのですけれども、 受け継いできた作法を大切にすることももちろん欠かせませんが、 その上でどうすれば今の条件の中で美しく安心しておふくあげができるのかを考えるわけです。 私はそこにも長く伝えられてきた技の意味があると思っています。 手順を知っているだけでは、いつもと違う場所で戸惑うことがあります。 けれど、なぜその位置に立って、なぜその順番で衣を扱うのかを理解していれば、 考える手掛かりになります。 決められた形を守るためにその場に合わせた工夫ができるというわけです。 中高生の方にはそうした判断も少しずつ身につけていただきたいと思っていて、 稽古場では必要なものが整えられているからこそ、 実際の仕事では毎回全く同じ条件が揃うとは限らないんだよということも付け加えて、 ご指導をさせていただいています。 その時に、できないと諦めるのではなくて、何を守るべきなのか、 そして逆にできることというのは何なのかということを探してみること、 そうした経験を重ねることで、技の意味もより深く分かっていきますね。 私は伝統の技というのは、昔の人が決めた形をただ繰り返すことではないと思っています。 限られた条件の中で何を大切にするのかを考え続けてきたその知恵も受け継いでいるのではないでしょうか。 遠くへ食べ物を届けるために干したり、塩に漬けたりする工夫を重ねてきた人々、 ご先祖様、その工夫がやがて独特の食文化として残っていったこととどこか通じるように感じます。 # おわりに 保存のために生まれた干物や塩殻というものは、 冷蔵技術が進んだ今も食べられています。とっても大好きです。こういうもの。 もう昔と同じ方法で保存しなければならないわけではなくて、 それでもその味わいが好きで食べ続けているわけですよね、私たちは。 私はこのことがとても興味深くて、不便さを補うために始めた工夫が、 こんなに長い時間の中で独自の価値を持つようになる。 すごいことだなぁと思いました。 初めは必要だったことがやがて残しておきたいものにある。 珍味といえばこの綿だよね。酒の魚といえば塩殻だよね、なんて、 今の私たちは軽く言いますけれども、初めはそれがなければ食べれなかった、必要な技術だったわけですよね。 それも文化が育つ一つの姿です。 ただ私は昔のやり方を何でも残せば良いと思ってなくて、 便利なものができたらありがたく使えば良いと感じています。 大切なのは何を変えて良くて、何を残したいのかを知ることだと思います。 そのためには昔の人がなぜそのようにしてきたのかを学ぶ必要があります。 理由を知らずに形だけ守るのではなくて、新しくなったからといって全てを手放すものでもない。 今私がやっているエモンドーもそうなのかなと思います。なぜそうしてきたのか。 やっぱり今必要なんですよね。 今の暮らしや仕事に生かせるものを丁寧に受け取っていく。 私はそんな姿勢を大切にしたいと思っています。 今日は牡蠣のお話から平安時代の海の幸と保存の知恵について考えてみました。 今私たちが気軽に楽しんでいる食べ物にも長い歴史があります。 これからは牡蠣鍋や焼き牡蠣の美味しい季節ですね。 食卓に牡蠣が並んだら海の恵みを遠くへ届けるために工夫を重ねてきた 昔の人々のことも少し思い浮かべてみてください。 それではまたごきげんよう もっと見る #発酵食品 #牡蠣 #保存食 #平安時代 #七十二候 #延喜式 #海鼠腸 【にちにち気づきだより】さとうみなこ/十二単着付け師01:461.今日はどんな日?05:472.牡蠣好きですか?02:183.おわりにコメント感想・質問・応援メッセージを書こう
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