声なら情報も人柄も伝わる。精神科医が音声配信を選び、発信し続ける理由
Voicyフォロワー21,000人、放送回数730回、再生回数510万回を超える人気チャンネル『精神科医のココロに効くラジオ』のkagshunさん(かぐしゅんさん)に、月額課金機能「プレミアムリスナー」をうまく活用できるようになった背景を伺いました。
2020年3月、Voicyでの音声配信を開始。当初は週3〜4回だった配信を、2021年2月から毎日更新にし、月額課金機能「プレミアムリスナー」もスタート。リスナーとの信頼関係を強めてきました。
精神科医であるkagshunさんが、人柄とコンテンツの両方が求められる存在になったのはなぜでしょうか?
Voicyの音声配信がなかなか思うように聴いてもらえないと悩んでいる方、音声配信の収益化のポイントを知りたい方の参考になれば幸いです!
―― Twitterから発信活動をスタートしたkagshunさんですが、なぜ音声配信を始めたのでしょうか?
140字という文字数制限のあるTwitterでは、背景やニュアンスなどを含めた正しい情報を伝えきれないなと感じたからです。
そもそも、研修医2年目に精神科を回ったときに初めて、統合失調症などの精神疾患を抱えた人たちとその家族、周囲の人たち、医師との間に、認識のギャップや差別のようなものがあることを知りました。
そこから数年後、精神疾患に対する誤解や差別をなくしたいという思いで、Twitterで発信を始めました。
Twitterは多くの人に届く一方で、「分かりやすくて拡散されやすい」発信がよく見受けられます。
拡散されやすい情報では病気に対して正しい理解が進まない、と歯がゆい思いをする機会が増え、Twitter以外のツールを探しました。
YouTubeも検討しましたが、動画の編集作業に自分の時間を使いたくないなと思い、手軽に発信できるVoicyに応募しました。
Voicyはもともとリスナーとして、イケハヤさんや聖丁さん、澤円さん、はあちゅうさんなどの話を聴いていたので、音声なら自分の生活に取り込みやすいだろうと感じていました。学会発表などの場で話し方を褒められることも多く、喋りなら大丈夫だろうという自信もありましたね。
kagshun/EMANON@精神科医
『精神科医のココロに効くラジオ』
精神科医。元世界一周バックパッカー。
心の病気への理解を一般の人にも深めてほしいという思いから、SNSで現役精神科医として発信をスタート。
Voicyでは、精神医学や心理学、脳科学などの「心を理解する情報」や、世界一周のエピソード、サブカル雑談などを放送中。
各種SNSリンク:Voicy/Twitter
―― 期待を持って始めたVoicyですが、よかったことはありますか?
コツコツと続けてきたことで「kagshun先生だから聴く」というリスナーが増えました。
その結果、精神疾患に関心がなかったり、考えたこともなかったりするような人たちに、精神疾患について知ってもらうことができるようになりました。
続けていく中で、だんだん精神疾患への認識や反応が変わってきているなと感じられて、Voicyを始めてよかったなと思います。
―― 「kagshun先生だから聴く」状態になったのは、音声だから魅力が伝わったのかもしれませんね。
そうですね、人として好かれるのは時間がかかりますが、それでもコツコツと、僕自身の考えや関心事について楽しみながら話すことで、思考やコンテンツに興味を持って聴いてくれている人が増えました。
また、Voicyを通して他のパーソナリティとコラボ放送をして、いろんな人と出会うこともできました。
コラボ放送をすると、リスナーからは一人喋りとは違った一面が見えるのと、僕自身も思ってもみなかった話ができるので、より一層「人となり」が引き出されてファンの方が増えたように感じます。
他にもVoicyをやっててよかったなと思ったのは、初めての書籍出版が決まったことです。聴いてくれているリスナーのおかげで、「書籍を出しませんか?」と出版社からお声がけいただきました。発売日を発表した日の気持ちはVoicyに残しています。本当に嬉しかったです。
あとは、Voicyのおかげで「健康」になりました(笑)。途中から週3〜4放送に切り替えたのですが、それは自分で話した習慣化についての放送がきっかけです。
リスナーに向けて「良い習慣を身に着けよう」とアウトプットした結果、飲み続けていたお酒をやめて、その時間に筋トレやVoicyの収録をするようになり、僕自身が健康的な生活習慣を身につけられました。
▼Voicyの2年記念日に、改めて伝えたいことを語った回
―― 具体的には、どんな放送づくりをしていますか?
「自分が聴いて楽しいなと思える話をする」ようにしています。それはVoicyリスナーである僕が「面白い話のほうが聴いていたい」と思ったからです。
学校でも楽しくない授業を受け続けるのはしんどいですよね。それと同じ感覚で、ずっと真面目な話ばかりでは聴かれないと思ったので、自然と熱が入るような楽しい話をしようと思うようになりました。
その結果、リスナーからの熱量が高まってきたと感じています。きっと内容以上に気持ちや熱量がリスナーに届くんだと思います。
ただ最初からうまくいったわけではないです。始めた当初は、どうしても医者としての立場を考えて、「医者らしく振る舞おう」と意識してしまっていました。
そのときは時事ネタや、自己肯定感や精神疾患などメンタルに関する知識を中心に発信していました。きっちりとしたスーツ姿にネクタイを締めて(笑)。
でも、これじゃないなと気付いたんです。いきなり精神科医が真面目に話していたとしても聴いてもらえない。だからこそ、話を聴いてもらえるような土壌作りをしようと思いました。
世界一周の旅行エピソードや、漫画について熱く語る放送などを話すようにして、僕自身が面白いなと思ってもらえるようにしたほうがいい、と。
リスナーの反応も変わって「楽しい話を待ってました!」という声もありますね。今は「スーツ姿」を卒業して「タンクトップ姿」で話すことができています(笑)。
▼リスナーからも人気な「世界一周たび話」の一話目
―― 雑談と、知識やノウハウの話のバランス、難しくないですか?
もちろん発信内容によってバランスは考えないといけないと思います。雑談ばかりでも、役立つ情報だけでも聴かれない。
今では、雑談のような気軽な話と、医療の話を半分ずつくらいのバランスで放送しています。
まずは、この人の話や雑談が面白いな!と思ってもらうのが大事だと思います。自分自身がしょうもない話が好きなのもありますし、面白い話を織り交ぜて話した放送回の反応がいいと、「こんな話をしてもよかったんだ」と気付けます。そうすると、毎日放送することも楽しくなってきますよ。
時間はかかりますが、続けないともったいないですね。忙しくて時間のない医者は音声メディアと相性がいいと思います。
最初から堅い内容ばかりを話していて反応が悪くてやめてしまう人を見かけますが、もったいないと思います。正しいこと、真面目なことを話そうと固執してしまうと続かなくなります。「Voicyは放送コードないですよ!」と伝えたいです(笑)。
―― 発信するネタがなくなることはないのでしょうか?
発信内容は、自分の知識や体験を切り売りしていくだけではジリ貧になるので、旬なトピックを盛り込むようにしています。
医者としての発信が中心ですが、医学の内容以外にはどんな考え方をするんだろう?と関心を抱いてくれてるリスナーが増えてきたからです。
「プロとして価値のある情報を届けなければ」という呪いは、リスナーからのコメントやいいねなどの反応を見ていくことで解けていきましたね。
頻度はできれば毎日が良いと思いますが、何より「細く」「長く」「続ける」ことが大切だと思います。コメント返し回やこれまでの振り返り回を入れるなどして無理のない続け方が良いです。
―― 月額課金「プレミアムリスナー」をどのように活用していますか?
通常放送よりもさらにパーソナルな話をする場所としてスタートしました。記念すべき1回目のプレミアム放送は「カザフスタンでの色恋」の話です。この頃は、ファンが「人柄」を求めて聴いてくれる場所でした。
そもそもプレミアムリスナーを始めたのは、発信活動のモチベーションにするためです。
最初はお金をもらって発信するのは気が引けるなという思いがありましたが、それでも、ファンになってくれた人たちに応援してもらうことで、「お金をいただいた分さらに楽しんでもらえる放送をしよう」というモチベーションになるだろうと思い、よりパーソナルな部分を話す場所としてプレミアムリスナーを始めました。
ただ、しばらく続けてみて、方向性を変えました。
―― どのような方向性に変えたのでしょうか?
人柄だけでなく「コンテンツ」に価値を感じてくれる人にも聴いてもらえるように、プレミアムリスナーの内容や構成を変えました。
方向性を変えたのには、2つの理由があります。
1つ目は、医学の話をするのにも、ものすごく時間をかけて下調べをしているので、無料で発信し続けるのは大変だと思うようになったから。
2つ目は、プレミアムリスナー数に頭打ちを感じたからです。ファンに向けた放送だけでなく、「コンテンツ」にもファンがつくような人になりたいと思うようになったんです。
方向性を変更してからは、プレミアム放送は「3日に1回」と決まったタイミングで行うようにしたので、精神疾患について解説するシリーズもの(4〜8放送連続で解説)の途中で有料化する回があっても、本気で聴きたい人なら課金して聴いてくれるだろうと思い切っています。
そのくらい僕自身も、コンテンツに誇りを持てるようになったんだと思います。
昔は「人柄」を求められていたところから、今は「人柄」と「コンテンツ」の2つを同時に求めてくれる人たちが集まる場所になってきています。
―― プレミアムリスナーを増やすことにもつながったのですね。他にも工夫したことはありますか?
普段の放送の中でプレミアム放送の紹介をし、チャプターに購入ページのURLを貼っていることを伝えることと、アプリで入会するよりもWebから入会した方がお得であることをしっかりと伝えています。
リスナーに周知し続けることを意識し始めて、着実にプレミアムリスナーが増えた印象がありました。
面倒がったり、お金儲けと思われることを気にし過ぎず、きちんと宣伝はすべきだと思っています。
無料コンテンツがあふれる世の中ですが、無料が当たり前じゃないという感覚は持っていていいと思います。価値のあるコンテンツにはお金が支払われることが、より良いコンテンツが増えることに繋がると考えています。
―― 今後プレミアムリスナーをどのように使っていきたいですか?
医療について正しい情報を伝える活動を持続的に続けていくためには、原資を得ることも大事だと考えています。しっかりと音声配信で収益を得られている状態を目指したいと思っています。
プレミアムリスナーの方は、僕自身の人間味に魅力を感じてくれていたり、活動や考え方に共感して応援したいと思ってくれていたりする方が集まっています。
その方々からお金をいただくことは、発信活動を継続するモチベーションにもなりますし、活動の可能性や幅を広げ、より価値のある情報を届ける原資にもなります。
また、音声メディア全体を拡大させていくことにも寄与したいです。お金を払っているリスナーも、しっかりと聴くようになると思うので、熱心に学びたい人にとっても良いと思います。
―― 今後Voicyをどのように活用していきたいですか?
「精神疾患を持つ人への差別をなくす」という夢に向かって、伝えたいことをしっかりと伝える場所として活用していきたいです。
音声メディアは、自分が伝えたいことを一番伝えられます。それは、感情を乗せられることと、動画とは違ってスキップされないことが背景にあります。
そして、リスナーが習慣化して聴いてくれることが、Voicyを始めてみて、初めて分かりました。毎日聴きたいと思ってくれているリスナーがいるからこそ、僕も毎日発信できています。
また、メンタルヘルスを悪化させない、心の幸福度を底上げするような発信をしたいです。それには、堅くなく伝えられる音声がフィットしています。本を読むよりも、声で聴くほうがニュアンスや人となりが伝わって残りやすいと思います。
病気の一次予防、二次予防という考え方がありますが、Voicyは「0次予防」として使えます。マイナスをゼロにするだけでなくて、ゼロをさらにポジティブにする考え方が届けられ、リスナーが心のしなやかさを持てるようになります。
このことについて書いているのが今回発売した書籍でもあるので、今後はVoicyでも書籍の内容を深堀りしていく予定です。リスナーには聴いた内容を書籍に書き込んでもらい、自分だけの本を作ってもらいたいですね。
また、いずれは物販やその他のビジネスへ展開していくことも視野に入れています。精神科医であることや発信から大きく外れることはないですが、Voicyで得た信頼や影響力を良いことに使っていきたいと思っています。
―― 最後にVoicyなどで音声配信をしている方にメッセージをお願いします。
結果を急がないでほしいです。Voicyをはじめとした音声メディアは時間がかかるものです。
1年は石の上に座る覚悟でいてください。その代わり、それ以上の価値があります。
僕自身、出版やテレビなどの話もいただくようになりました。バズるようなツイートをしてフォロワーを増やすよりも、Voicyを続けると「意味のある人間関係」「影響力」が広がっていきます。
人として好かれるようになると、伝えたいことも、コンテンツも聴いてもらえるようになります。それが音声です。時間はかかりますが続けてほしいなと思います。
―― kagshunさん、ありがとうございました!
Voicyは手軽に放送ができて、声を通してファンとの距離を縮めることができます。
発信内容のジャンルは問いません。声で発信したい!伝えたい想いがある方!
Voicyであなたの声を届けて、リスナーの生活をより豊かにしていきましょう。
そして一緒に「声のある世界」を盛り上げていきましょう!
あなたの応募をお待ちしております。
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