2026年10月・バックナンバー
#091 『無門関』を読む...069:第23則 不思善悪
41:29
二十三 不思善不思悪
六祖、因に明上座、趁(お)うて、大庾嶺(だいゆれい)に至る。
祖、明の至るを見て、即ち衣鉢(えはつ)を石上に擲(なげう)って云く、
此の衣(え)は信を表わす。力をもって爭うべけんや、君が將(も)ち去るに任す。
明、遂に之(これ)を擧ぐるに、山の如くにして動ぜず、踟蹰(ちちゅう)悚慄(そくりつ)す。
明曰く、我は來って法を求む、衣の爲にするに非ず。願はくは行者(あんじや)、開示(かいじ)したまえ。
祖云く、不思善不思惡(ふしぜんふしあく)、正與麼(しやうよも)の時、那箇(なこ)か是れ、明上座が本來の面目。
明、當下(とうげ)に大悟、遍體(へんたい)汗流る。泣涙(きゅうるい)作禮(さらい)して問うて曰く、上來(じやうらい)の密語密意(みつごみつい)の外、還って更に意旨(いし)有りや。
祖曰く、我れ今、汝が爲に説くは、即ち密に非ず。汝、若し自己の面目を返照(へんしょう)せば、密は却って汝が邊(へん)に在り。
明云く、某甲(それがし)、黄梅(おうばい)に在って(しゅ)に隨うと雖(いえど)も、實に未だ自己の面目を省(せい)せず。今、入處(にっしょ)を指授(しじゅ)することを蒙(こうむ)って、人の水を飮んで冷暖自知するがごとし。今、行者は即ち是れ某甲の師なり。
祖云く、汝、若し是くのごとくならば、則ち吾と汝と同じく黄梅を師とせん。善く自ら護持(ごじ)せよ。
この時、明上座は六祖を追って大庾嶺にやって来た。
六祖は、明上座がやって来るのを見ると、師から譲り受けた衣と持鉢を、石の上に手放して置いて言われた、この衣は「信」を表わすものだ、力ずくで争うべきものではない。あなたが持って行くというのであれば、そうすれば良い。
明上座は衣を手に取ろうとしたが、山のようにビクともしなかったため、狼狽え恐れ戦いた。
明上座は言った、わたしは法を求めてやって来たのです、衣のためではありません。行者よ、どうぞお教え下さい。
六祖は言われた、善も思わず、悪も思わない(不思善不思惡)、この時、明上座よ、あなたの本来の己とは一体何なのだ?
明上座はその言葉で言下に大悟した。全身を汗が伝い、涙を流しながら礼拝し、問うた、
今お教えいただいた特別な教え(密語密意)の外に、まだ別の教え(意旨)はあるでしょうか?
六祖は言われた、わたしが今、あなたのために説いたことには特別な秘密などありません。あなたが自分の本来の己に(自己の面目)に取って返すことができれば、特別な秘密などというのは、もともとあなた自身の中にあるのです。
明上座は言った、わたしは黄梅山で門下の修行者たちとともに修行してきましたが、これまで己の本来の姿を顧みることができませんでした。今、あなたから悟りの入口をお教えいただいて、水を飮めばその温度の加減が自ずとわかる(冷暖自知)ように、会得することができました。行者よ、あなたはまさにわたしの師です。
六祖は言われた、あなたが今、言われたとおりであるならば、あなたもわたしもともに黄梅山の五祖禅師を師としているのです。己をしっかりと保って御修行ください...
六祖、因に明上座、趁(お)うて、大庾嶺(だいゆれい)に至る。
祖、明の至るを見て、即ち衣鉢(えはつ)を石上に擲(なげう)って云く、
此の衣(え)は信を表わす。力をもって爭うべけんや、君が將(も)ち去るに任す。
明、遂に之(これ)を擧ぐるに、山の如くにして動ぜず、踟蹰(ちちゅう)悚慄(そくりつ)す。
明曰く、我は來って法を求む、衣の爲にするに非ず。願はくは行者(あんじや)、開示(かいじ)したまえ。
祖云く、不思善不思惡(ふしぜんふしあく)、正與麼(しやうよも)の時、那箇(なこ)か是れ、明上座が本來の面目。
明、當下(とうげ)に大悟、遍體(へんたい)汗流る。泣涙(きゅうるい)作禮(さらい)して問うて曰く、上來(じやうらい)の密語密意(みつごみつい)の外、還って更に意旨(いし)有りや。
祖曰く、我れ今、汝が爲に説くは、即ち密に非ず。汝、若し自己の面目を返照(へんしょう)せば、密は却って汝が邊(へん)に在り。
明云く、某甲(それがし)、黄梅(おうばい)に在って(しゅ)に隨うと雖(いえど)も、實に未だ自己の面目を省(せい)せず。今、入處(にっしょ)を指授(しじゅ)することを蒙(こうむ)って、人の水を飮んで冷暖自知するがごとし。今、行者は即ち是れ某甲の師なり。
祖云く、汝、若し是くのごとくならば、則ち吾と汝と同じく黄梅を師とせん。善く自ら護持(ごじ)せよ。
この時、明上座は六祖を追って大庾嶺にやって来た。
六祖は、明上座がやって来るのを見ると、師から譲り受けた衣と持鉢を、石の上に手放して置いて言われた、この衣は「信」を表わすものだ、力ずくで争うべきものではない。あなたが持って行くというのであれば、そうすれば良い。
明上座は衣を手に取ろうとしたが、山のようにビクともしなかったため、狼狽え恐れ戦いた。
明上座は言った、わたしは法を求めてやって来たのです、衣のためではありません。行者よ、どうぞお教え下さい。
六祖は言われた、善も思わず、悪も思わない(不思善不思惡)、この時、明上座よ、あなたの本来の己とは一体何なのだ?
明上座はその言葉で言下に大悟した。全身を汗が伝い、涙を流しながら礼拝し、問うた、
今お教えいただいた特別な教え(密語密意)の外に、まだ別の教え(意旨)はあるでしょうか?
六祖は言われた、わたしが今、あなたのために説いたことには特別な秘密などありません。あなたが自分の本来の己に(自己の面目)に取って返すことができれば、特別な秘密などというのは、もともとあなた自身の中にあるのです。
明上座は言った、わたしは黄梅山で門下の修行者たちとともに修行してきましたが、これまで己の本来の姿を顧みることができませんでした。今、あなたから悟りの入口をお教えいただいて、水を飮めばその温度の加減が自ずとわかる(冷暖自知)ように、会得することができました。行者よ、あなたはまさにわたしの師です。
六祖は言われた、あなたが今、言われたとおりであるならば、あなたもわたしもともに黄梅山の五祖禅師を師としているのです。己をしっかりと保って御修行ください...
禅僧と考える...日々の暮らしから人生まで
恵林寺 古川周賢
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初めのあいさつ
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終わりのあいさつ
- 00:097.
チャプター 7
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