#304 報われる推し活~福岡市長選サポーター日記③ ウグイス前編
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お昼までにポスターを貼り終えて、告示日の午後からは選挙カーに乗りました。いわゆる「ウグイス」です。
事前に後援会事務所で二十年以上プロとしてウグイスをしてきた方からレクチャーを受けました。
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選挙カーで喋る人は、昔から「ウグイス嬢」と呼ばれてきましたが、もともとは野球場の場内アナウンスの女性を指す言葉だったそうです。
一説には、戦後まもない1947年、プロ野球の試合で初めてスポンサー広告の放送をする際、男性と女性のどちらがよいか検討され、女性の声のほうが響きがよいと採用されたのが始まりだといわれています。その球場アナウンスにならって、選挙カーで名前や呼びかけをくり返す女性の運動員も、「ウグイス嬢」と呼ばれるようになりました。
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ちなみに男性の場合は、黒っぽいスーツの印象から「カラス」、もしくは「カラスボーイ」と呼ばれるのだそうです。
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なんだかこの響き、ちょっと気持ち悪いなと個人的に思います。保母が保育士に、看護婦が看護師に、スチュワーデスが客室乗務員に変わったように、ウグイス嬢も、この流れの中で見直したほうがいい言葉なのではないでしょうか。実際、新聞社の中には「〇〇嬢」という言い方は女性であることをことさら強調するとして、使わないようにしているところもあります。私はここでは「ウグイス」と呼びたいと思います。
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公職選挙法上の呼び方は「車上等運動員」で、性別は含まれていません。報酬を払ってよいと認められている、数少ない運動員のひとつです。選挙運動は原則ボランティアで行うもので、お金を払っていいのは事務員や手話通訳者など、ごく限られた人だけなんです。
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その報酬にも上限があって、ウグイスは1人1日2万円まで。長く1万5千円だったのが、昨年の改正で引き上げられました。しかも誰にでも払えるわけではなく、事前に選挙管理委員会へ届け出が必要で、人数にも上限があります。
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多くの陣営ではプロのウグイスを雇います。私は無償のボランティアですが、候補者の名前を街に届ける、とても責任のある役割だと思っています。それを任せていただけたことが、本当にありがたかったです。
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【選挙カーのルール】
選挙カーの窓から身を乗り出して手を振る姿、見たことがありますよね。あれ、シートベルトはどうなっているんだろうと、ずっと思っていました。
道路交通法施行令(第26条の3の2)に、シートベルトをしなくていい特例がいくつか並んでいます。負傷している人や妊娠中の人などと並んで、その第1項第8号に、公職選挙法の適用を受ける選挙で、候補者や運動員が選挙運動用の車に乗っているとき、と書かれています。
もちろん、法律で認められていることと、安全であることは別の話。車内ではお互いに声をかけ合いながら、安全に努めていました。
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【ウグイスの仕事は三つ】
ウグイスの役割は喋ることだけかと思っていたら、意外と複雑で、仕事は三つあります。一つめは喋ること、二つめは手を振ること、そして三つめが、候補者の身の回りを整える「候補付き」です。
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車の後部座席では、真ん中の人がマイクで喋り、右の人は対向車に気を配りながら手を振り、左の人は電柱やバイク、自転車に目を配りつつ候補者を気にかける、というのが基本の形だそうです。窓際で喋ると風の音がマイクに入ってしまうから、話し手は真ん中。
プロでも喉を守るために二十分ほどで交代します。みんなでカバーしないと、二週間もたないんですね。
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三つのうち、私がいちばん奥深いと感じたのが「候補付き」です。
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候補者は選挙期間中、朝から晩まで人前に立ち続けます。声を出し、手を振り、車を降りては走って握手をし、また乗り込む。その間、自分のことにかまっている余裕はほとんどありません。だから、候補者が候補者であることに集中できるよう、身の回りのことを丸ごと引き受けるのが候補付きの役目です。
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まずは体のケア。喉を潤す水やのど飴、汗を拭くタオル、寒い日のカイロ。候補者が手を伸ばしたときに、さっと渡せるように準備しておきます。食事の時間もつい後回しになるので、移動の合間に少しでも口に入れてもらえるよう気を配ります。
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次に、見た目と段取り。たすきがよじれていないか、髪や服が乱れていないか、人前に出る前にチェックします。次の演説場所までの時間や予定の押し具合を把握して、そっと耳打ちする。車を降りて握手に走るときは、足元や車の流れに目を配り、安全に戻ってこられるよう先導します。
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街頭には応援の声だけでなく、心ない言葉を投げかけてくる人もいます。候補付きは、候補者がそういう相手と一対一で向き合わずに済むよう、間に立ちます。言い返すのではなく、さりげなく次へ促す。候補者の気持ちが削られないように守るのも大切な役目だと、ご指導いただきました。
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候補者のすぐ隣の影。いちばん目立たない場所で、いちばん候補者に近い役割なんですね。
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【ウグイスの事前準備】
マイクを握るうえで、いちばん強調されたのは「名前を届ける」ことでした。
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走っている車から長い文章を話しても、耳に入りません。聞く人の頭に残るのはせいぜい二つ。だから「佐々木です。佐々木綾乃です。29歳の挑戦です」と、短い言葉と名前をひたすらくり返す。
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上手に喋ろうとしなくていい。詰まったり、噛んだりしたら、それをぐっと飲み込んで、また最初から始めればいい。そう教えていただきました。
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車のスピードによって話す速さも変えます。速く走るときほど、名前はゆっくり。住宅街ではふつうに、幹線道路では一音ずつ置くように。
私は準備として、YouTubeで、ウグイス歴30年、400もの選挙に関わってきたという大阪のプロの方の密着動画を見て、研究しました。
その方の選挙カーには、基本のフレーズを書いたボードが貼ってありました。乗る人がそれぞれ違うことを言ってしまうと、候補者が伝えたいことがぼやけてしまうからだそうです。それを見て、私も自分で原稿を書いて準備していきました。
【場面ごとに、言葉を着替える】
団地に入ったときは「〇〇団地の皆さま、こんにちは。本日、〇〇団地の皆さまに一番にご挨拶に伺いました」。
住宅街では「ご家庭の皆さま、お騒がせいたしております」と、まず音を出していることへのお詫びから。商店街や事業所の前では「お仕事中の皆さま、お疲れさまでございます」。信号待ちの車には「信号待ちの皆さま、こんにちは」。
たとえば消防署の前を通るなら「市民の安全を守る消防署の皆さん、お疲れさまです」。郵便局の前なら「はがきには郵便番号を、投票用紙には佐々木綾乃とお書きください」。その場で見えたものを、そのまま言葉にしていく。
手を振ってくれた人を見つけたら、すかさず反応します。大事なのは、どこからの応援なのかを具体的に言うこと。
「二階のベランダから、ありがとうございます」
「お車の中からもエールをいただきました」
「お店の中から、ありがとうございます」
「お車からうなずいていただきました」
場所を言うことで、応援した本人は「自分に返してくれた」とうれしくなるし、まわりの人には「こんなに応援している人がいるんだ」と伝わります。
【喋らない場所、喋らない時間】
学校や病院のそばではマイクをオフにするのが基本です。
、葬儀中の斎場、トンネルや高架下、踏切。救急車の音が聞こえたら、どんな状況でも止める。赤信号で停まっている間も止めます。止まったまま横でずっと喋られたら、うんざりしますよね。
以前は病院の前で「ご療養中の皆さまの早期ご回復を」と呼びかけるのが作法だったそうですが、今はうるさいと思われるほうがマイナスだから、やめるようになっているのだそうです。作法にも時代の変化があるんですね。
対立候補の車とすれ違うときは、こちらから「お疲れさまです。〇〇候補、共に正々堂々と戦ってまいりましょう」と声をかけます。事務所の前を通るときは少し遠慮して、離れてからまた始めます。
ほかにも、車内の笑い声がマイクに乗るのは厳禁、コンビニに入るときは腕章を外す、トイレや体調不良は絶対に我慢しない、といった細かな心得がたくさんありました。
マイクを使っていいのは朝8時から夜8時まで。夜は8時になるぎりぎりまで、秒単位でタイミングを計って、最後の言葉を届けます。
【ウグイスの葛藤】
実は、ウグイスをやるうえで、私には葛藤がありました。
これまで選挙カーが来たら、私自身「うるさいな」「早く通り過ぎてほしいな」と思っていたんです。名前を連呼するだけで、何の意味もないじゃないか、と。
やっと子どもを寝かしつけたばかりだったり、受験勉強中だったり夜に働いて、昼間に休んでいる人だったり…
だから、大きな音を出す側に回ることには、ちょっと、いえ、かなり抵抗感がありました。
でも、連呼がなくならないのには理由があります。日本の選挙では、告示前の選挙運動も、家を一軒ずつ訪ねる戸別訪問も禁じられています。名前を覚えてもらうのは、とても難しい。
特に、綾乃さんのように組織の後ろ盾も知名度もない新人にとって、選挙カーで名前を届けることは貴重な機会です。今回のように13人もの候補者がいる中で名前を覚えてもらうには、この方法しかないのだろうと理解できました。
今の制度が続くかぎり、連呼はなくならないでしょう。だからこそ、どう連呼するかが問われるのだと思います。周囲への配慮を怠れば、候補者だけでなく、政治そのものへの嫌悪感を増やしてしまう。それは本当に残念なことだし、やりたくありません。
名前を届けることと、街の暮らしを邪魔しないこと。そのぎりぎりのバランスを取るのは、なかなか難しいなと思いながら、マイクを握らせていただきました。
【表に立つのは一人。その後ろに】
関わらせていただいて思うのは、いろいろな役割の、ちゃんとわかっている人が絶対 に必要だということです。
たとえば運転手さん。選挙カーの運転は、ただ目的地に向かうことではありません。適切なスピードで後ろの車の邪魔にならないように走る。近くに学校や病院があれば教えてくれる。マイクを握る人が安心して喋れるのは、車を預かってくれる人がいるからです。
そして、法律に詳しい専門家の存在も欠かせません。ネットで発信できる範囲、街頭演説の際のルール。知らなかったでは済まされないルールが、選挙には驚くほどたくさんあります。一つの違反が、候補者の挑戦そのものを台無しにしかねません。
最近は、日本でも選挙コンサルタントという仕事が一般的になってきています。アメリカでは、選挙を勝利に導くコンサルタントが非常に高い報酬で雇われ、「この人を入れれば勝てる」と全国から引っ張りだこになる人もいます。日本でも、だんだんとそういう仕事が成り立つようになってきているんですね。
ほかにも、翌日の予定を発信する人、演説場所に前もって連絡を入れる事務局の人、ボランティアのシフトを組む人。
いま佐々木あやの選挙事務所でボランティアとして活動している人は、およそ100人。仕事が終わってから、休みの時間に、と、それぞれができる範囲で関わっているので、私も全員を存じ上げているわけではありません。でも、しがらみのない完全無所属だからこそ、気持ちのいい人たちが集まってきているなと感じています。
表に立つのは候補者一人です。でもその後ろには、それぞれの持ち場で力を出すプロたちと、慣れないながらも手を挙げたボランティアたちがいます。私も、その一人です。
次回は、ウグイスをやってみて、キャリアコンサルタントとして、そして社会福祉士として感じたことを話してみたいと思います。
事前に後援会事務所で二十年以上プロとしてウグイスをしてきた方からレクチャーを受けました。
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選挙カーで喋る人は、昔から「ウグイス嬢」と呼ばれてきましたが、もともとは野球場の場内アナウンスの女性を指す言葉だったそうです。
一説には、戦後まもない1947年、プロ野球の試合で初めてスポンサー広告の放送をする際、男性と女性のどちらがよいか検討され、女性の声のほうが響きがよいと採用されたのが始まりだといわれています。その球場アナウンスにならって、選挙カーで名前や呼びかけをくり返す女性の運動員も、「ウグイス嬢」と呼ばれるようになりました。
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ちなみに男性の場合は、黒っぽいスーツの印象から「カラス」、もしくは「カラスボーイ」と呼ばれるのだそうです。
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なんだかこの響き、ちょっと気持ち悪いなと個人的に思います。保母が保育士に、看護婦が看護師に、スチュワーデスが客室乗務員に変わったように、ウグイス嬢も、この流れの中で見直したほうがいい言葉なのではないでしょうか。実際、新聞社の中には「〇〇嬢」という言い方は女性であることをことさら強調するとして、使わないようにしているところもあります。私はここでは「ウグイス」と呼びたいと思います。
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公職選挙法上の呼び方は「車上等運動員」で、性別は含まれていません。報酬を払ってよいと認められている、数少ない運動員のひとつです。選挙運動は原則ボランティアで行うもので、お金を払っていいのは事務員や手話通訳者など、ごく限られた人だけなんです。
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その報酬にも上限があって、ウグイスは1人1日2万円まで。長く1万5千円だったのが、昨年の改正で引き上げられました。しかも誰にでも払えるわけではなく、事前に選挙管理委員会へ届け出が必要で、人数にも上限があります。
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多くの陣営ではプロのウグイスを雇います。私は無償のボランティアですが、候補者の名前を街に届ける、とても責任のある役割だと思っています。それを任せていただけたことが、本当にありがたかったです。
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【選挙カーのルール】
選挙カーの窓から身を乗り出して手を振る姿、見たことがありますよね。あれ、シートベルトはどうなっているんだろうと、ずっと思っていました。
道路交通法施行令(第26条の3の2)に、シートベルトをしなくていい特例がいくつか並んでいます。負傷している人や妊娠中の人などと並んで、その第1項第8号に、公職選挙法の適用を受ける選挙で、候補者や運動員が選挙運動用の車に乗っているとき、と書かれています。
もちろん、法律で認められていることと、安全であることは別の話。車内ではお互いに声をかけ合いながら、安全に努めていました。
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【ウグイスの仕事は三つ】
ウグイスの役割は喋ることだけかと思っていたら、意外と複雑で、仕事は三つあります。一つめは喋ること、二つめは手を振ること、そして三つめが、候補者の身の回りを整える「候補付き」です。
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車の後部座席では、真ん中の人がマイクで喋り、右の人は対向車に気を配りながら手を振り、左の人は電柱やバイク、自転車に目を配りつつ候補者を気にかける、というのが基本の形だそうです。窓際で喋ると風の音がマイクに入ってしまうから、話し手は真ん中。
プロでも喉を守るために二十分ほどで交代します。みんなでカバーしないと、二週間もたないんですね。
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三つのうち、私がいちばん奥深いと感じたのが「候補付き」です。
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候補者は選挙期間中、朝から晩まで人前に立ち続けます。声を出し、手を振り、車を降りては走って握手をし、また乗り込む。その間、自分のことにかまっている余裕はほとんどありません。だから、候補者が候補者であることに集中できるよう、身の回りのことを丸ごと引き受けるのが候補付きの役目です。
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まずは体のケア。喉を潤す水やのど飴、汗を拭くタオル、寒い日のカイロ。候補者が手を伸ばしたときに、さっと渡せるように準備しておきます。食事の時間もつい後回しになるので、移動の合間に少しでも口に入れてもらえるよう気を配ります。
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次に、見た目と段取り。たすきがよじれていないか、髪や服が乱れていないか、人前に出る前にチェックします。次の演説場所までの時間や予定の押し具合を把握して、そっと耳打ちする。車を降りて握手に走るときは、足元や車の流れに目を配り、安全に戻ってこられるよう先導します。
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街頭には応援の声だけでなく、心ない言葉を投げかけてくる人もいます。候補付きは、候補者がそういう相手と一対一で向き合わずに済むよう、間に立ちます。言い返すのではなく、さりげなく次へ促す。候補者の気持ちが削られないように守るのも大切な役目だと、ご指導いただきました。
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候補者のすぐ隣の影。いちばん目立たない場所で、いちばん候補者に近い役割なんですね。
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【ウグイスの事前準備】
マイクを握るうえで、いちばん強調されたのは「名前を届ける」ことでした。
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走っている車から長い文章を話しても、耳に入りません。聞く人の頭に残るのはせいぜい二つ。だから「佐々木です。佐々木綾乃です。29歳の挑戦です」と、短い言葉と名前をひたすらくり返す。
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上手に喋ろうとしなくていい。詰まったり、噛んだりしたら、それをぐっと飲み込んで、また最初から始めればいい。そう教えていただきました。
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車のスピードによって話す速さも変えます。速く走るときほど、名前はゆっくり。住宅街ではふつうに、幹線道路では一音ずつ置くように。
私は準備として、YouTubeで、ウグイス歴30年、400もの選挙に関わってきたという大阪のプロの方の密着動画を見て、研究しました。
その方の選挙カーには、基本のフレーズを書いたボードが貼ってありました。乗る人がそれぞれ違うことを言ってしまうと、候補者が伝えたいことがぼやけてしまうからだそうです。それを見て、私も自分で原稿を書いて準備していきました。
【場面ごとに、言葉を着替える】
団地に入ったときは「〇〇団地の皆さま、こんにちは。本日、〇〇団地の皆さまに一番にご挨拶に伺いました」。
住宅街では「ご家庭の皆さま、お騒がせいたしております」と、まず音を出していることへのお詫びから。商店街や事業所の前では「お仕事中の皆さま、お疲れさまでございます」。信号待ちの車には「信号待ちの皆さま、こんにちは」。
たとえば消防署の前を通るなら「市民の安全を守る消防署の皆さん、お疲れさまです」。郵便局の前なら「はがきには郵便番号を、投票用紙には佐々木綾乃とお書きください」。その場で見えたものを、そのまま言葉にしていく。
手を振ってくれた人を見つけたら、すかさず反応します。大事なのは、どこからの応援なのかを具体的に言うこと。
「二階のベランダから、ありがとうございます」
「お車の中からもエールをいただきました」
「お店の中から、ありがとうございます」
「お車からうなずいていただきました」
場所を言うことで、応援した本人は「自分に返してくれた」とうれしくなるし、まわりの人には「こんなに応援している人がいるんだ」と伝わります。
【喋らない場所、喋らない時間】
学校や病院のそばではマイクをオフにするのが基本です。
、葬儀中の斎場、トンネルや高架下、踏切。救急車の音が聞こえたら、どんな状況でも止める。赤信号で停まっている間も止めます。止まったまま横でずっと喋られたら、うんざりしますよね。
以前は病院の前で「ご療養中の皆さまの早期ご回復を」と呼びかけるのが作法だったそうですが、今はうるさいと思われるほうがマイナスだから、やめるようになっているのだそうです。作法にも時代の変化があるんですね。
対立候補の車とすれ違うときは、こちらから「お疲れさまです。〇〇候補、共に正々堂々と戦ってまいりましょう」と声をかけます。事務所の前を通るときは少し遠慮して、離れてからまた始めます。
ほかにも、車内の笑い声がマイクに乗るのは厳禁、コンビニに入るときは腕章を外す、トイレや体調不良は絶対に我慢しない、といった細かな心得がたくさんありました。
マイクを使っていいのは朝8時から夜8時まで。夜は8時になるぎりぎりまで、秒単位でタイミングを計って、最後の言葉を届けます。
【ウグイスの葛藤】
実は、ウグイスをやるうえで、私には葛藤がありました。
これまで選挙カーが来たら、私自身「うるさいな」「早く通り過ぎてほしいな」と思っていたんです。名前を連呼するだけで、何の意味もないじゃないか、と。
やっと子どもを寝かしつけたばかりだったり、受験勉強中だったり夜に働いて、昼間に休んでいる人だったり…
だから、大きな音を出す側に回ることには、ちょっと、いえ、かなり抵抗感がありました。
でも、連呼がなくならないのには理由があります。日本の選挙では、告示前の選挙運動も、家を一軒ずつ訪ねる戸別訪問も禁じられています。名前を覚えてもらうのは、とても難しい。
特に、綾乃さんのように組織の後ろ盾も知名度もない新人にとって、選挙カーで名前を届けることは貴重な機会です。今回のように13人もの候補者がいる中で名前を覚えてもらうには、この方法しかないのだろうと理解できました。
今の制度が続くかぎり、連呼はなくならないでしょう。だからこそ、どう連呼するかが問われるのだと思います。周囲への配慮を怠れば、候補者だけでなく、政治そのものへの嫌悪感を増やしてしまう。それは本当に残念なことだし、やりたくありません。
名前を届けることと、街の暮らしを邪魔しないこと。そのぎりぎりのバランスを取るのは、なかなか難しいなと思いながら、マイクを握らせていただきました。
【表に立つのは一人。その後ろに】
関わらせていただいて思うのは、いろいろな役割の、ちゃんとわかっている人が絶対 に必要だということです。
たとえば運転手さん。選挙カーの運転は、ただ目的地に向かうことではありません。適切なスピードで後ろの車の邪魔にならないように走る。近くに学校や病院があれば教えてくれる。マイクを握る人が安心して喋れるのは、車を預かってくれる人がいるからです。
そして、法律に詳しい専門家の存在も欠かせません。ネットで発信できる範囲、街頭演説の際のルール。知らなかったでは済まされないルールが、選挙には驚くほどたくさんあります。一つの違反が、候補者の挑戦そのものを台無しにしかねません。
最近は、日本でも選挙コンサルタントという仕事が一般的になってきています。アメリカでは、選挙を勝利に導くコンサルタントが非常に高い報酬で雇われ、「この人を入れれば勝てる」と全国から引っ張りだこになる人もいます。日本でも、だんだんとそういう仕事が成り立つようになってきているんですね。
ほかにも、翌日の予定を発信する人、演説場所に前もって連絡を入れる事務局の人、ボランティアのシフトを組む人。
いま佐々木あやの選挙事務所でボランティアとして活動している人は、およそ100人。仕事が終わってから、休みの時間に、と、それぞれができる範囲で関わっているので、私も全員を存じ上げているわけではありません。でも、しがらみのない完全無所属だからこそ、気持ちのいい人たちが集まってきているなと感じています。
表に立つのは候補者一人です。でもその後ろには、それぞれの持ち場で力を出すプロたちと、慣れないながらも手を挙げたボランティアたちがいます。私も、その一人です。
次回は、ウグイスをやってみて、キャリアコンサルタントとして、そして社会福祉士として感じたことを話してみたいと思います。
昼スナママ・フィッシュ明子の役にたたなくてもいいラジオ
フィッシュ 明子
- 00:161.
タイトルコール
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ウグイスの仕事は三つ
- 04:473.
ウグイスの葛藤
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チャプター 4
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