TOPハウツー・学習歴史十二単着付け師の【にちにち気づきだより】第647話 蟄虫坏戸 — また戻れる場所であるために08:10 9月28日 72再生 問題を報告する 再生する シェアする AI目次巡る季節に宿る穏やかな眼差し稽古場を「休む」ことの真意鍵をかけずに待つ教える側の心休止期間に育つ見えない学びの力戸を閉じても歩み続ける人生の道AI文字起こし(β版) # 今日はどんな日? 日々気付きだより佐藤美奈子です。 今日もお聞きいただきありがとうございます。 このチャンネルでは、毎朝、平安の境地、季節の移ろい、 当時の人の暮らし、そして消息のこと、その日の暦を一つお話ししています。 千年前の営みが、今の暮らしや仕事にどう繋がっているのか、 毎朝一つお届けしています。 はい、昨日は、源氏物語の月の話をしました。 今日は、足元の小さな生き物に目を向けてみたいと思います。 9月28日、七十二校は今日から、「虫隠れて戸をふさぐ」に入ります。 虫が土に潜り、入り口をふさいで冬ごもりの支度をする頃です。 虫たちにも外へ出て活動するときと、静かにこもるときがあるのですね。 今日は、この「戸をふさぐ」という言葉から、稽古場での出来事を思い返してみたいと思います。 # 鍵をかけずに待っている はい、七十二項には、春と秋で対になっている言葉があります。 三月の景日の頃には、 すごもり虫、戸をひらく。 土にこもっていた虫が、戸をあけて出てくる頃です。 そして秋には、 虫かくれて、戸をふさぐ。 春には戸をひらいて、秋には戸をふさぐ。 同じ戸という言葉で、季節の移り変わりを表しています。 九月十一日に、つばめの話をしたのを覚えていらっしゃいますでしょうか。 つばめ来たると、つばめ去る。 つばめが来る頃と去る頃。 こちらも春と秋で対になっています。 こうして並べてみると、 去っていく姿の先に、再びやってくる季節が思い浮かびます。 虫たちの戸をふさぐという言葉もそうです。 地上から姿が見えなくなっても、 土の中では命の営みが続いている。 そして春になれば、また戸をあいて出てくる、そんな時を迎えるわけです。 私は、こうした小読みの言葉に季節の巡りを見つめる穏やかな眼差しを感じるんですね。 今見えている姿だけで、その先を決めてしまわないということ。 そう考えると、人が何を学び続ける時間にも、重なるところがあるように思いました。 例えば、お稽古を長く続けていますと、 しばらくお休みになる方がいらっしゃいます。 仕事が忙しくなったりだとか、あとは家庭のご事情があったりとか、 あとは気持ちが少し離れたり、 やる目標みたいなものというのが変わってくるというのもそうだと思いますけれども、 理由はそれぞれです。 そんな時、私はできるだけ、やめるという言葉を使わないようにしています。 少しお休みですね、ということです。 また来られる時にお待ちしています。 そうお伝えします。 実際、何年か経ってからフラッと戻って来られる方というのはいらっしゃいます。 本当に扉を開けるように、何事もなかったかのように、稽古間に戻って来られるわけです。 最初は少し手が止まっていたとしても、不思議とやはり体は覚えているんですよね。 そして以前よりも落ち着いて学ばれる方もいます。 休んでいた時間もその方の人生の一部だったからですよね。 それがちょっと手ににじみ出ているような技術になっていらっしゃる方もいます。 例えば着物の着付けだとしても、着物に触れているような時間もなかったけれども、 この時というのは素晴らしいもので、いろんな人生の一部の何かしらをこなされてきた、超えてきた、 そういうものを一つ一つ片付けてきたという方は、やはり直接着物を触れていなくても、 手に現れていたり心に現れていたりします。 だから私は離れることを終わりだとは思わないようにしていますし、 終わりじゃない、逆にもっともっと熟成させるというか、そういうふうだと思っているので、 またいつでもどうぞと、来れるときになったらいつでもどうぞと、そういう感じで思っています。 ですから、いつでも受講生の方が戻れる場所であり続けることというのが一番ですね。 教える側にできることは、その扉を内側から鍵をかけずに待っていることなのかもしれません。 どうしても長く離れていますと、今更戻ってもよいのだろうかとためらうことがあるかもしれません。 そんな時に、以前かけてもらった、また来られるときにお待ちしていますという言葉を思い出せたら、 ちょっと稽古場の戸に少し手をかけたくなるのではないでしょうか。 かけやすくしておいておきたいなというふうに思います。 言葉というものには、その場を離れた後も人の中に残るものというのがありますよね。 お休みに入るときの一言が、何年か先に安心につながることもあるのでしょう。 そして、休んでいる間も、それまでに積み重ねたものが全て失われるわけではありません。 手が覚えていること、ふとした折に思い出す先生の言葉だったり、 いろんな同僚の言葉だったり、友人からの言葉だったり、いろんな時に思い出して、 暮らしの中で以前よりもよくわかるようになったこともあるかもしれません。 お稽古場を離れている時間にも学んだことが、その方の中で育っているかもしれませんね。 戻る時間というのは、その方に委ねます。 その上でまた学びたいと思われたときに、安心して迎えられる場所を整えておく。 それも長く教えていく上で大切なことなのだと思っていますし、そうありたいと感じています。 戸を閉じている時間も、その人の歩みの途中にあること。 今日の小読みの言葉は、私はそのように受け取っています。 皆さんいかがでしょうか。 今日は9月28日。9月も残りわずかとなりました。早いですね。 もし今少しお休みしていることがあっても、それまでの時間までなくなってしまうわけではありません。 また向き合いたいと思う日が来たら、その時に戸を開けてみる。 休む時間も含めて、長く大切にできるものがあると良いですね。 明日は、秋の寒さを表す言葉をいくつかご紹介いたします。 少しずつ深まる秋を、日本の言葉はどのように表してきたのでしょうか。 その細やかな違いを一緒に味わってみたいと思います。 それではまた。ごきげんよう。 もっと見る #二十四節気 #暦 #七十二候 #蟄虫坏戸 #衣と暦 十二単着付け師の【にちにち気づきだより】さとうみなこ01:141.今日はどんな日?06:572.鍵をかけずに待っているコメント感想・質問・応援メッセージを書こう
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