TOPトーク専門家毎朝の思考「過剰な現場主義」には危うい落とし穴が潜んでいる07:26 2022年3月3日 6,094再生 問題を報告する 再生する シェアする AI目次「踊る大捜査線」が示す現場主義の功罪予備知識不足で取材に臨む危険性現地取材で全体像を見失う盲点3.11震災に見る「現場主義」の落とし穴現場を知ることで生まれるジャーナリストの過信AI文字起こし(β版) # チャプター 1 おはようございます。佐々木敏郎です。 昔、踊る大捜査船というドラマというか映画があって、 その映画版の方の有名なセリフ、主人公、主演の小田祐治さんが叫ぶんだけど、 事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ。 その通りなんですけどね。 その通りなんだけど、日本の警察じゃなくて、僕が言ったようなジャーナリズムの世界とか、 過剰な現場主義みたいなのがあって、ちょっと行き過ぎなんじゃないかと時々思うんですよね。 今でも結構そういう雰囲気が濃厚にある。 よく何かの出来事があって、取材に行かなきゃと。 でも予備知識がなさすぎるんで、もうちょっと学んでから行くかと思って、 調べ物とかしてるとデスクに、 おい佐々木何やってんだ。 いやちょっと調べ物してから取材に行こうと思って。 馬鹿野郎そんなのは取材当てに学べばいいんだよとか言われたりするわけですよ。 さすがに今そんなこと言う人いないと思うけど、 取材相手に学べばいいってそれはそうなんだけど、 それをやると一つは相手に失礼ですよね。 予備知識なしに取材に行ってね。 自分が取材を受ける側になって初めて気づいたんだけど、 たまに予備知識全然なしに突然やってくる人っていて、 そんなことも知らないで僕に取材に来たんですかって、 ちょっとガッケンに捉えるシーンってあります。 あともう一個は予備知識なしに例えばインタビューしに行く、 じゃあウクライナ問題取材に行って誰か研究者に聞くとか、 あるいは新型コロナで誰かお医者さんに聞くとか、 そういう取材をしようとした場合に、 間違えた人に聞きに行っちゃうってことはね、 往々にして起きる。 実際今回のウクライナでも新型コロナでもそうなんだけど、 大手の新聞とかテレビとかはね、 なんでその人を取り上げるのみたいなのを取り上げているケースが結構多いですよね。 何もいろんな専門家がいっぱいいるのに、 その人を選ばなくてもいいのにみたいなね。 それを結構、別に僕がそう思っているんじゃなくて、 専門家クラスターの人たちがみんな同じことを言って怒っているみたいなケースがある。 やっぱり予備知識をちゃんと蓄えて、 どういうのが世界のジャンルの共有認識かっていうのを学んだ方がいいよね、 っていうのはあると思うんですよね。 現場に行けば全てが分かるというのも、 それもどうなのかなと思うところがあるんですよ。 例えばウクライナに取材に行きますと、 キエフに行ったらキエフの自分がいる場所のことしかわからないし、 ハリコフに行ったらハリコフの自分がいる場所のことしかわからない。 モスクワに行ったらモスクワに行ったで、 ロシアのメディアが流している情報しかわからない。 全体が見えなくなるという逆のマイナス効果もあるんですよね。 もちろんその空気感とか、そこの生々しさを知るのは大事なんだけど、 逆にその生々しさに引きずられてしまって、 全体を俯瞰して見えなくなっちゃうという問題は常にあるんじゃないのかなと思う。 311の震災の時に、3月11日に起きて、 僕は東京で何が起きているかずっとウォッチということが自分の仕事だと思っていたので、 別に現地に行かなくていいやって思ってたんですよ。 ところが、現地を知らない人はジャーナリスト失格みたいな。 行った人の方が偉いという。 戦場ジャーナリズムとかそうなんだけど、 行った人が偉くて、行っていない人が偉くない。 別にそこに偉い偉くないという優劣なんかないと思うんだけど、 現場を知っている者が一番偉いという。 上から目線で語るジャーナリストってすごく多いんですよね。 そういう雰囲気が嫌なので、その時も行かないつもりだったのですが、 2週間ぐらい経つと、行ってもいないくせに偉そうと言うなという雰囲気が苦しくなってきて、 3月の終わりに行ったんですよね。しょうがないから取材に。 福島まで電車で行って新幹線でそこでレンタカーを借りて 福島から仙台から経由して気仙沼に入って、 気仙沼から陸前高田までずっと行って、 現地の紹介してもらった人に案内してもらいながら取材しながら行ったんですけど、 行ってわかったのは、これで自分が現地に来て現地を知っている、 現場を知っているというのは、もう疑問以外の何者でもないなということだったんです。 どういうことかというと、仙台ぐらいは行ったことがあったけど、 正直気仙沼も陸前高田も生まれてから一度も行ったことがなかった。 でも行ってみると確かに想像を絶するぐらいの瓦礫の山で、 巨大な船が陸に打ち上げられたりとかして、 言葉を失う光景が広がっているんです。 それはそうなんだけど、 自分はそうなる以前の平和だった時代の気仙沼や陸前高田の景色、 あるいはそこに住んでいた人たちのことを何一つ知らない。 そんなものを何一つ知らないで、その瓦礫の山だけを見て、 俺は現場に行ったんだと言える神経が僕には到底信じられないなと思ったし、 こんな取材をしたからといって、いかにも現場を知っていますという体で、 被災地の人の心の痛みみたいなのを記事に書くということの疑問は ちょっと耐えられないなと逆に思ったんですよね。 そういう思いがあって、取材に行くジャーナリストにとって、 当事者性とは一体何なんだろうとすごい考えるようになって、 それでその1年後ぐらいに、当事者の時代という、 すごく分厚い、小難しくて何が書いてあるかわからないと言われた本を出すことになるんだけど、 やはり我々は、現場は大事なんだけど、行くことはね。 でもそれによって、自分がすごい知っているとか、 被災者や被害者の気持ちはわかるんだみたいな風に思い上がることの方が危険なんじゃないかなと思います。 これからウクライナとかに取材に行く人もいるでしょう。 行って、僕はウクライナの人の気持ちが一番わかってますという人は 話半分で聞いておいた方がいいんじゃないかなと。 逆に何も語らなくなっているジャーナリストの方が、 実は信用できるんじゃないかなって僕は思ったりします。 ではまた明日。 もっと見る毎朝の思考佐々木俊尚07:261.チャプター 1コメント感想・質問・応援メッセージを書こう Gen2022年3月3日先日、『ドライブ・マイ・カー』を映画館で観たのですが、スクリーンの中や役に自分が没入していました。現実がそうあってほしいというほどに緊張感があり、滑らかなのです。宇多田ヒカルさんの最新アルバム『BADモード』にも似たような生っぽさが感じられます。私は、幻想をみているだけなのでしょうが、現代の先端のクリエイターの方々は、こちらを製作現場に連れて行ってくれるのかなと思います。そういった感覚の受け取りも、現実のメディア報道というものへのまなざしに複雑な変化を起こしていそうです。返信 ばいぱー2022年3月3日まったく同感です。私は会社の本部で働いており、所謂“現場経験ゼロ”。ただ、支店が300を超えると支店長たちが口にする“現場はこうだ!”が以外にそれぞれ違っていることに気が付きました。以来私は“現場知らず”を開き直って、全国多種多様の“現場はこうだ!”を拾い集め、繋ぎながら、そうした声をまとめるというスタンスに徹しています。まあ、営業現場はクライアントに理不尽な怒られ方をする場面もありますしそもそもの売上を作っておますので、それはそれで最大の敬意を評しておりますが。返信 俊尚 佐々木2022年3月3日興味深いお話ですね。
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現実がそうあってほしいというほどに緊張感があり、滑らかなのです。
宇多田ヒカルさんの最新アルバム『BADモード』にも似たような生っぽさが感じられます。
私は、幻想をみているだけなのでしょうが、現代の先端のクリエイターの方々は、
こちらを製作現場に連れて行ってくれるのかなと思います。
そういった感覚の受け取りも、現実のメディア報道というものへのまなざしに複雑な変化を起こしていそうです。
私は会社の本部で働いており、所謂“現場経験ゼロ”。
ただ、支店が300を超えると支店長たちが口にする“現場はこうだ!”が以外にそれぞれ違っていることに気が付きました。
以来私は“現場知らず”を開き直って、全国多種多様の“現場はこうだ!”を拾い集め、繋ぎながら、そうした声をまとめるというスタンスに徹しています。
まあ、営業現場はクライアントに理不尽な怒られ方をする場面もありますしそもそもの売上を作っておますので、それはそれで最大の敬意を評しておりますが。