TOPトーク専門家毎朝の思考谷崎潤一郎の「陰影礼賛」の暗がりに浸る08:44 2024年4月14日 6,941再生 問題を報告する 再生する シェアする AI目次谷崎潤一郎の言葉に潜む、闇の美学とは?漆器の真価を引き出す、特別な光とは?日本の住居と、暗がりへの愛着の深淵現代社会と、陰影を愛でる文化の再興失われた技術、そして未来への提言AI文字起こし(β版) # 谷崎潤一郎の「陰影礼賛」の暗がりに浸る おはようございます。佐々木敏直です。 先日旅の途中で立ち寄った岡山のオクツ温泉。 夜のオクツ温泉の街、街って言うほどでもなくて 本当に数軒の宿しかない暗い通りが続いているだけなんだけど そこを歩いていて、あまりにもその暗闇の美しさですね。 ついパチリと一枚写真を撮ってみたんですね。珍しく。 その写真をアップしておくので見て欲しいんだけど 昼間の明かりの中だと古びた建物とか廃屋になった旅館とかの みそぼらしさが浮かび上がってきてしまうんだけど 夜の暗がりの中だとそういうのが全部沈み込んでいって逆に美しく見える。 通りを照らすのは所々にある、あまり明るくない街灯だけっていう。 こういう感じの良さって前に何かで読んだなって考えて思い出したのが 文豪谷崎純一郎の陰影来参なんですよね。 1933年、大変お戦争が始まる以前に書かれた文章なんだけど ありがたいことに今青空文庫で無料で読めるので このurlも貼っておきますね。 3万文字ぐらいで、本当に読もうと思えば一気に1時間ぐらいで読めるかな。 でもこの3万文字の短い文章の中にいろんな発見とかが今更ながらあって ああそうかというね。 なかなか久しぶりに目にして心にしみるものがありました。 例えばこういう話がある。 漆とかのお碗とかお皿とか あれって結構赤く塗ってあったりとかして派手な色が塗られている。 我が家にも前のお付き合いの秋田から沖縄に移住された 漆の職人さんが作られたお皿が2つあって それをよくサラダを入れたりとかに使っているんだけど 確かにパッと見ると結構派手で テーブルに乗せて料理を乗っけて iphoneで写真を撮ってみると結構派手な器だなって感じがする。 でもあの器の漆器の美しさというのは そんな蛍光灯とか明るい日の光で見るものじゃないだろう ということを種崎はこの陰影雷さんで書いてるんですよね。 ちょっと紹介すると 日本の漆器の美しさはぼんやりした薄明かりの中に置いてこそ 初めて本当に発揮される。 わらんじ屋というのは料理屋さんなんだけど その座敷というのは4畳半ぐらいのこじんまりした茶席で 柱や天井なども黒光りに光っているから 安頓式の伝統でももちろん暗い感じがする。 それを一層暗い食材、ろうそくですね。 食材に改めてその炎をゆらゆらと瞬く影にある禅や輪を眺めていると それらの塗り物の沼のような深さと 厚みを持った艶が今までと全く違う魅力を帯び出してくるのを発見する。 派手な薪絵などを施したピカピカ光るロウ塗りの手箱とか 踏み台とか棚とかを見ると いかにも気化らしく落ち着きがなく続白にさえ見えることがあるけれども しかしそれらの器物を、鳥かくむ空白を真っ暗な闇で塗りつぶし 太陽や伝統の光線に変えるに一転の灯明かろうそくの明かりにしてみたまえ たちまちそのケバケバしたものが底深く沈んで渋い重々しいものになるであろう。 なるほどね。確かに漆塗りというのは明るい光の下で見るものではなくて それこそろうそくの植材だったりとか灯明だったりの下で その周りの闇と溶け込むような美しさを見るものなんだ。 なんで日本はこの暗がりというのをそれほど愛するようになったのか。 その背景として日本の家屋、住宅とかにあるような日差しが長いというのがあるんじゃないか。 もともと木造の家ばかりで、西欧のようにレンガとかセメントとかなかった。 だから横殴りの風を防ぐためには日差しを深くする必要があった。 だから暗い部屋より明るい部屋の方がいいんだけど しょうがなくああいう暗い部屋になっちゃったんじゃないかってことを谷崎が書いてるんですね。 こう書いてる。 美というものは常に生活の実態から発達するもので 暗い部屋に住むことを余儀なくされた我々の先祖は いつしか陰影の内に美を発見し、やがては美の目的に沿うように陰影を利用するに至った。 事実、日本座敷の美は全く陰影の濃淡によって生まれているので、それ以外に何もない。 暗い中で暮らすってことが当たり前になると その暗さの中で美しさを求めるっていう感性が生まれてきたんだ。 日本の住宅ってそう言いながら、特に戦後住宅ブームの中で できるだけ南向きみたいな、太陽光こそが正義であるみたいなノリが流行って どこの家もすごく明るくなった。 蛍光灯も普及し、間接照明どころか光光灯、蛍光灯を照らすっていうのが 昭和から平成にかけて20世紀の文化だったと思うんですよね。 でも今はあまりにも夏が暑すぎるようになって 逆に北向きの部屋とかもいいよねって言われるようになってきている。 寒いのは暖房でなんとかなるけど、暑すぎるのもなんともならないよね。 そうするとまた再び暑い夏の下で薄暗がりを楽しむみたいな文化が 日本でも生まれてくるんじゃないかなっていうのを この谷崎の陰影雷さんを読んでいるとちょっと考えたりしますよね。 テクノロジーもそれに合わせていいんじゃないかと。 こういう面白いことも書いてるんですよね。 写真とかレコードとか、いわゆるオーディオビジュアル機器も あれは西洋で生まれたもので、我々の文化に沿ったものではない。 だからこう書いてるんです。 我々に固有の写真術があったら、どんなに我々の皮膚や要望や気候風土に適したものであったかと思う。 チコン機やラジオにしても、もし我々が発明したなら もっと我々の声や音楽の特徴を生かすようなものができたであろう。 元来我々の音楽は控えめなものであり、気分本位のものであるから レコードにしたり、覚醒器で大きくしたりしたのでは大半の魅力が失われる。 話術にしても我々の方のは声が小さく、言葉数が少なく、そして何よりも間が大切なのであるが 機械にかけたら間は完全に死んでしまう。 そこで我々は機械に迎合するように、かえって我々の芸術自体を歪めていく。 なるほどね。この日本のもの静かな陰影の世界に合わせたテクノロジーって 本当はあり得たんじゃないかということを谷崎は1930年代に書いている。 今は再びこういう、あらゆるものがデジタル化して明明白白としているのではなくて 陰影を大事にするテクノロジーみたいなのは 改めてこの情報通信の進化の先に出てきてもいいんじゃないかなと そんなことさえ思いました。 種崎のinielaiさん、結構面白い、読みやすいし短いので皆さんぜひ読んでみてください。 青空文庫が見にくい人はkindleでも出ていますね。 ではまた明日。 もっと見る毎朝の思考佐々木俊尚08:441.谷崎潤一郎の「陰影礼賛」の暗がりに浸るhttps://www.aozora.gr.jp/cards/001383/files/56642_59575.htmlコメント感想・質問・応援メッセージを書こう ス・ギー2024年4月15日近々、茶道具の展示を観に行く予定だったので、この放送を聴けてよかったです。『陰翳礼讃』も読んでみます!1返信 ジュリエッタ オータニ2024年4月14日お写真、良い夜を綴じてありますね📷✨返信 ジュリエッタ オータニ2024年4月14日陰翳礼賛…。読んだ事が無かったのですが、題目といい、佐々木さんの語りで既に惹き込まれますね📖先日、市川崑監督の方の細雪を映画で観ました。(この映画は毎年のように桜の季節に観ています🌸)谷崎潤一郎の細雪の情景の〝間〟やら〝深み〟を映像で表現していて素晴らしいのです。市川崑も谷崎のいう美しさに魅せられた1人なのだと伝わってきます。私は知らず知らずにアメリカ文化に犯されてきましたが、年々変わりつつある美意識に気がつきます。きっとまた、美の視点が変わりそうです。ありがとうございます🙏返信 俊尚 佐々木2024年4月18日こちらこそありがとうございます。細雪、いいですね。 りあ2024年4月14日佐々木さんの放送で陰翳礼讃の話が出るなんて感激しました!中公文庫本を遠い昔に買って海外移住と共に持参して何度も本棚の断捨離をしましたがこの本だけは捨てられませんでした。陰翳礼讃の価値観だけは日本人として大切にしていきたいものです。6返信 俊尚 佐々木2024年4月18日ありがとうございます。 あい2024年4月14日谷崎潤一郎の陰影礼賛の一部を耳で聞いていた時は、洗濯物を干しながらでした。イメージを膨らましながら静かな時間を脳内に持てたのはここちよい時間でした。陰影礼賛読んでみます。いい日曜日になりそうです。1返信 俊尚 佐々木2024年4月18日ありがとうございます、そう聞いていただいて嬉しいです。1 もっと見る
AI時代に「知」と「知識」を分けて考える 8分・昨日・ 3,753再生AI目次AIが与える「わかった気」の落とし穴情報としての「知識」価値低下の時代「知識」と異なる「知」が指すもの身体感覚に響く「腹落ち」の正体AI時代に磨くべき人間の「知」の形
2026年の今は1870年代と似ている 10分・一昨日・ 5,277再生AI目次AI時代を読み解く歴史の因19世紀末、驚異の発明集中期近代生活を形作った大変革AIは「馬の代わり」なのかこれから20年で世界はどう変わる?
急登もぬかるみも登山はすべてが快感 8分・10月21日・ 4,365再生AI目次登山道の「想定外」がもたらす試練滑る岩や泥道での転倒と苦労困難を「楽しみ」に変える心境の極意安全登山に不可欠な体力とスキルの追求逆境を笑い飛ばすマゾヒスティックな愉しみ
浜松のホルモン店・岩田屋さんを応援したい 9分・10月20日・ 4,804再生AI目次岩田屋の当て逃げ、店主が取った異例の行動とはSNSで容易に逆転する被害者と加害者熱海の無人駅で起きた世論の反転劇加害者は本当に悪なのか?見落とされがちな真実岩田屋が示す「救い」の社会を築くヒント
リニアとノンリニアを結ぶ触媒としての手書きメモ 7分・10月19日・ 5,188再生AI目次線形でバラバラな情報の課題とは?iPad手書きメモが導く思考の触媒富山茂彦が提唱「触媒としての私」曖昧な思考を立体化するメモの力3Dの「山」のように知識を結ぶ思考
人間への信頼とAIへの信頼の違いについて 9分・10月18日・ 5,941再生AI目次AI進化が問い直す人間の「努力」の価値AIが超えた分野で光る「人間」の物語なぜAIではなく人間の文章が心に響くのか「機械の信頼」と「人の信頼」根本的な違いAI時代に書き手が「人生」を綴る意味とは
図書館に人生を助けられた少年期の話 9分・10月17日・ 5,684再生AI目次少年期の苦境、唯一の逃げ場父に禁じられた読書と秘密『赤毛のアン』に見た希望とは書籍は唯一の親友、心の友AIと書籍、心の拠り所の変遷
農水大臣辞任と美人投票の共通点 9分・10月16日・ 6,266再生AI目次柳野農水大臣辞任 発言の真意は?昭和の利益誘導政治と現代の変容政治家の「力」と美人投票の共通点株式市場と新聞に潜む「幻想の力」美人投票が示す「時代の残滓」と未来
地方では「酒飲まない運転免許ある」が最強の属性 10分・10月15日・ 6,379再生AI目次地方生活の必需品、車の価値とは公共交通機関衰退と移動のラスト1マイル問題地方での移動手段、カーシェア活用術未来の移動、自動運転普及までの道のり地方で最強の属性、まさかのあのスキル
イメージを膨らましながら静かな時間を脳内に持てたのはここちよい時間でした。
陰影礼賛読んでみます。いい日曜日になりそうです。