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美術館・資料館こそ「ラジオ」を始めるべき?土方歳三資料館 館長に聞く音声活用術【Voicy】

美術館・資料館こそ「ラジオ」を始めるべき?土方歳三資料館 館長に聞く音声活用術【Voicy】

今、美術館や資料館などの施設で「音声ガイド」を活用しているところは多いですよね。作品の見どころや、施設で展示している資料をさらに詳しく解説して来場者の方にさらに楽しんでいただくために各館さまざまな工夫をしています。

一方で、音声ガイドを作るためには、音声ガイド用の機材の購入やレンタルが必要になったり、音声コンテンツの制作を別企業に依頼したりなど、コストがかかってきます。
また、費用面以外でも、音声で具体的にどんな内容を発信すれば良いのか想像できないという方も多いのではないでしょうか?

今回は、土方歳三さんのご子孫で、土方歳三資料館 館長の土方愛さんが「音声ガイド」や音声コンテンツの配信を通して、資料館の運営に役立てている事例をご紹介します。

土方愛さんは音声プラットフォーム「Voicy」で誰でも無料で聴ける「土方館長のゆるっと新選組!」で、土方歳三さんや幕末にまつわるお話を発信しています。

資料館の来館者のうち、約2割ほどの方から「いつもVoicyの放送を聴いています!」と声をかけていただいているそうです。
声の発信で来場者の方との距離が縮まったという土方さんの音声の使い方を、Voicy代表緒方との対談をもとに紹介します。
(写真:土方歳三資料館提供)

【こんな方におすすめ】
・博物館や資料館で、音声ガイドの導入を考えている
・館長や学芸員がパーソナリティを勤めるラジオを作ってみたい
・遠方にいるお客さんに向けて情報発信をしたい

こちらの記事は、音声でもお楽しみいただけます。
土方愛さんと、Voicy代表 緒方憲太郎の対談はこちら▼

土方歳三資料館長がお届けする「土方館長のゆるっと新選組!」とは?

今日のゲストは土方歳三資料館館長の土方愛さんです。

よろしくお願いします!

現在、Voicyで『土方館長のゆるっと新選組!』というチャンネルを運営しています。土方歳三と同じ家で育った6代目子孫の土方歳三資料館 館長の私が、幕末や新選組のことなどをゆるゆると毎日のように話しております。

今年の2月下旬に放送を始め、ちょうど7ヶ月ぐらい経ちました。(※9月の対談時点)現在1200人を超える方にフォローいただいていて、本当にありがたいです!放送回数も160回まで頑張って積み上げてきました。

放送は、どういう内容が中心になっているんですか?

新選組の話を中心にしています。新選組隊士さんのご命日は、その人にちなんだお話をしたり、池田屋事件とか8月18日の政変とか…新選組の活躍した事件があった日には、その事件のあらましをご紹介しています。
他には、そういう事件にからめて好きな隊士は誰ですか?というアンケートをとってみたり、新選組クイズをやってみたり、いろいろチャレンジしていますね。

なるほど!そもそも、Voicyに応募してくださったきっかけってどういうところにあったんですか?

緒方社長がClubhouseでお話をされていたのを聴いて、そこで音声配信をやってみたいなという思いが生まれたのが一つ。
あとは、コロナ禍で皆さん資料館に来館できなくなりましたとか、新選組の史跡めぐりが出来ないからつまらないですとか、そういう声がたくさん届くようになったんです。それで、自宅にいても新選組に触れていただけたらいいなという気持ちでパーソナリティに応募しました。

歴史初心者が聴いても楽しめる!土方歳三資料館の魅力とは

「土方歳三」って聞くとすごく難しい歴史の話をするのかなとか思うんですけど、土方さんのチャンネルの凄いところは、歴史に詳しくなくても楽しめる番組になっているんですよね。

例えば、幕末のおすすめ漫画を紹介したり、子孫の目線で裏話をするとか、歴史を深掘りするだけじゃなくて、いろんな楽しみ方がありますよね。

私は専門家ではないので、子孫の立場で語ると決めているんです。そういうところも、皆さんに親近感を持っていただけているところかもしれないです。

土方さんの実際の放送▼

「いつも聴いてます!」音声発信で遠方のファンとも繋がることができた

率直に、Voicyをはじめてどうですか?良かったことがあればぜひ聞きたいです!

1)音声ガイドを手軽に作成できた

まとめると5つあるんですけど、まず1つ目。
いつも私は、皆さんの前で直接お話しして館内ガイドをしてたんです。それがコロナになり、飛沫が飛んじゃいけないのでちょっとやりにくくなってしまって。そこで、音声ガイドを作成できたのはすごい良い点でしたね。

どんな内容の音声ガイドなんですか?

資料館が歳三さんの生家なので、例えば「歳三さんがこの家で暮らした多摩時代の遺品が置いてありますよ。少し進むと、新選組時代のものが並んでいて、最後箱館戦争を戦った頃のものがあって…」と、歳三さんのヒストリーに従って遺品が展示してあるので、一緒に館内を見ながら聴けるガイドを作りました。
キャプションでは説明しきれない部分を声でご紹介できるのは、ものすごく良いところでした!

▼実際の資料館の解説放送

あとは、いわゆる「音声ガイド」とは別の使われ方もあるんです。イヤホンをつけて館内で聴かれる方は、意外と少なくて。
Voicyだと、PCやスマートフォンから事前に音声ガイドの放送を聴くことができるので、事前学習みたいな感じで、こういうところなんだ〜ってイメージしていただいたり、入館時に待ち時間が出来たらその間に聴いたり、家に帰ってからこんなところだったな、って思い出して聴いていただいているみたいです。

放送が聴けるQRコードを入れたカードを、資料館の受付のところに設置

美術館とかに行った後、家に帰ってからも振り返りができるのはめっちゃいいですね!
館内にいなくても聴けて、いても楽しめる。今の美術館の音声ガイドは、その場にいて、そこに行かないといけないんですよですね。

そうそう。どこでも聴けるのはすごいことだなと思いました。
特別展示があれば、放送をその都度更新できるし、館内の展示変えをしたら、それに伴って更新するのも、Voicyのアプリならすごく自由にできますよね。

2)放送をきっかけに声をかけられるように!来場者との距離が近くなった

大体2割ぐらいのご来館者さんから「いつもVoicy聴いています!」ってお声かけていただけるようになりましたね。

それがきっかけで、資料館に来る人もいるんですね。

そうなんです。Voicyを聴いて行きたくなったっていう方もすごく多くて。ご来館のきっかけにしていただいたりだとか、あの時の放送でこう思いましたとか、やっぱり会話も弾みますね。

資料館ではTwitterを頻繁に更新していて、フォロワーさんも28,000人以上いますが、VoicyはTwitterなど、他のSNSの繋がりよりも何倍も濃い繋がりができているなと思います。

それ、結構いろんなパーソナリティから言っていただけるんです。ユーザーが濃くて「放送聴いてます!」という反響も多いって。

それは私も実感してます。SNSって、匿名で身バレをしたくないという方がほとんどだと思うんですよね。でもそうじゃなくて、わざわざ資料館に来て「私が聴いてるんです」ってちゃんと歩み寄ってくださる方が多くて。私もこうやって声でお届けして、皆さんに歩み寄ったからこそ、リスナーさんも歩み寄ってきてくれたのかなと思うとすごく嬉しいです!

3)キャプションでは伝えきれないエピソードも声でじっくりと伝えられる

土方歳三資料館内にある、歳三さんが植えた矢竹

3つ目は、先程も少し出ましたが、音声ではキャプションに書くことができない、それぞれのエピソードを濃く紹介できるのがとても良かったです。
しかも一方通行じゃなくて、その放送に対してコメントをいただいて、そのコメント返しをして、というやりとりも生まれます。

「土方歳三手植えの矢竹」について土方愛さんが解説した放送▼

資料館・美術館は、一方的に見て帰ってもらうという形が多いと思うので、来場者さんとの双方のやりとりはないですもんね。

そうなんです。声の放送でコミュニケーションが生まれますよね。

4)月額有料課金(プレミアムリスナー)で、ファンと交流

私は2021年7月から、友の会のような位置づけで「プレミアムリスナー(※)」を始めています。(※月額課金した人だけが限定の放送を聴ける仕組み)

よく博物館に友の会とかファンクラブがありますよね。そういうコミュニティって年会制がほとんどなんです。Voicyのプレミアムリスナーは月額制なので、うちは月額500円(※Web決済の場合)とさせていただいているんです。

資料館の1回の入館料が500円なので、資料館に来ていただいた気分で応援していただく、という形をとっています。500円でプレミアムリスナーに入会した方は、月4回くらいプレミアム放送が聴けるようになっていて、たくさんの方に入っていただいてます。

月額制だから、リスナーさんも気軽に参加できますし、私も個人情報を全部管理して、もし退会が出たら月額で割って返して…など、そういう金銭のやりとりなどもなく、心を落ち着けて皆さんと繋がれるところがすごく良かったなと思っています。

このプレミアムリスナーは、芸能人の方のファンクラブとしても使ってもらったり、結構いろんな方に喜んでもらえています。

そうなんですか?

さっき土方さんもお話しされていたように、ファンクラブも、ユーザーを管理して、資料を作って送ったり、グッズ作ったり、いろいろしてたらめっちゃ大変ですよね。でもVoicyのプレミアムリスナーの場合は、声で返せば良いので原価はほぼ0円なんですよね。

そうなんですね!確かに、スタッフも少なくてよくて、Voicyの放送は本当に私1人で運営できてる感じですね。

それで声のライブ(生放送)もできるので、ファンやリスナーは嬉しい。本人性がしっかり出ていれば喜んでもらえるんですよね。低コストなのにファンサービスができて、ファンとしても本人性とか、いろいろ深みがあるコンテンツが聴けて嬉しい。この組み合わせは、多分声が一番強いと思いますね。

5)リアルタイムで資料館のお知らせを発信できる

5つ目は、リアルタイムで資料館のお知らせができるところが良いなと思っています。こんな講座をやります!と事細かに内容を説明できたりとか、こういう特別展示をやるので予約受付中ですが、今はこれぐらい埋まりましたよとか、そういうお知らせが日々できる状況もすごく良いなと思います。

なるほど。確かにそれは良いですね。

実は、ユーザーさんに全然知られてないVoicyの機能がありまして!Voicyはイヤホンがなくても聴けるんですよ。(Voicyをイヤホンなしで聴く方法はコチラ

それはいいですね!イヤホンを忘れちゃった人でも大丈夫ってことですよね?

そうなんですよ。美術館や資料館もイヤホンを配らなくても、「通話モード」にすれば、電話を聴いているかのように耳に当てて聴いてもらえば良いんです。

音声配信は、個性的な施設ほど向いている!

土方歳三資料館さんのように、博物館とか美術館などの施設が「音声ガイド」以外でも音声発信をして、音声のメディアを持つということがもっと増えたら良いなと思っているんです。資料館長の土方さんから、おすすめポイントはありますか?

今、SNSを頑張られている展示施設がどんどん多くなってきてると思うんですけれど、音声も可能性がすごくあると思うので、本当におすすめしたいですね。

やっぱり博物館とか個性的な館に行くと、“名物学芸員さん”といった方がいて。学芸員さんの話ってすごい面白いじゃないですか!
例えば動画だと「ニコニコ美術館」という番組があって、生放送で学芸員さんが展示を案内してくれるんです。その動画配信を何万人もの人が見てるので、やっぱり学芸員さんの話はみんな聴きたいんですよ。

あとは、その展示を企画してでき上がるまでのプロセスとか意図とか、そういった裏話も分かるとワクワクするんですよね。「あ、だからこういう展示企画が持ち上がったのか」とか「資料借りに行く交渉とかも大変だったんだろうな」とか。そういう裏側が見えると何倍も盛り上がるんです。

音声で自分の館のアピールもできるし、あとは音声ガイドとして外国語バージョンを作っても良いし、マニア向けのすごい難しい専門的なことを発信したり、子ども向けの優しく噛み砕いた音声ガイドを作っても良いし…バリエーションも無限大に作れるじゃないですか。

企画次第でいかようにでもできるし、今までは館の中で聞いてた音声ガイドが予習用で館に行く前にも使えて、見ている時に使えて、帰り道の電車内や家に帰ってから聴ける。持ち運びできる図録みたいな感じで使えますよね。

そして1番大きいのは、自分の館のファンに向けて「友の会」(プレミアムリスナー)のようなものを気軽に始められるのが、いろんな展示施設に合っているなと思います!

人気になるコンテンツの秘訣は、偏愛を語ること

Voicyをやってて、人気になるコンテンツとしゃべり方があるんですよ。それは偏愛を語るなんですね。

学芸員の方にも、もうとにかく偏愛を語ってほしいです。人が愛情を注いだ、熱のこもっているものってみんな聴いていてめちゃくちゃ嬉しいですよね。

分かります!個性のある美術館とか博物館ってたくさんあるじゃないですか。例えば「刀剣博物館」とか陶磁器の美術館とか。そういう特化した施設にはすごく合ってるんじゃないかなと思うんですよね。

Voicyの場合、初心者向けの放送と、上級者向けの放送を作ったりとか、音声だからやりやすいですよね。なぜこれをここに飾ろうと思ったか、っていう館長の気持ちをとにかくしゃべるような放送も入れてみたり。

ありだと思います。その放送を聴けるQRコードを、展示の前に張っておいて、お好きなのものを聴いてください、っていうのも楽しいですよね。

入館チケットには、初心者向けのQRコードをつけて、上級者用にはまた別のチケットで、上級者向けの放送が聴けるようになっているとかもできそうですね。

音声×展示の可能性は無限大!

今後、土方さんはこんなことをしたいとか展望を聞いても良いですか?

コロナが落ち着いたら、皆さんとリアルでイベントを企画してみたりしたいですね!

いいですね。最後に、美術館や資料館で音声活用したいなと思っている方に向けて、メッセージをお願いできますか?

Voicyは施設の規模が小さくても手軽に始められますし、個性も出しやすいです。企画や考え方次第で、音声×展示の可能性も無限大に広がると思うので、ぜひおすすめします!

ありがとうございます!僕達Voicyも、声の文化をどんどん作っていきたくて。「声っていいじゃん」ってもっと思ってもらいたいし、声があることによってさらに活躍して、お客さんを喜ばせて、さらに収益にもなって…ということができたらめちゃくちゃ嬉しいです。
こういった施設さんとの取り組みがもっともっと増えてくればいいなと思っています。

緒今日はゲストに土方歳三資料館の館長の土方愛さんに来ていただきました!ありがとうございました。

ありがとうございました。

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