Voicy Journal

一次情報に触れる人のすそ野を広げたい 日本経済新聞「ながら日経」・「ヤング日経」

一次情報に触れる人のすそ野を広げたい 日本経済新聞「ながら日経」・「ヤング日経」

Voicyで聞くことができるチャンネルには、多様なバックグラウンドを持つパーソナリティの他、企業や新聞メディアによるチャンネルもあります。

今回はそのようなチャンネルの中から、日本経済新聞が運営する「ながら日経」・「ヤング日経」について総合プロデューサーである村野さんにお話を伺ってきました。

日本経済新聞 「ながら日経」プロデューサー 村野孝直さん

プロフィール
Voicy日経チャンネル「ながら日経」「ヤング日経」総合プロデューサー。日経新聞ではデジタル事業デジタル編成ユニットに所属。 価格解説やアイドルを中心に記事を執筆している。BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」で「値段の方程式」コーナーのコメンテーターとして出演している。

「ながら日経」・「ヤング日経」とは

「ながら日経」
平日と土曜日の週6日、オーディションで選ばれた個性豊かなパーソナリティが厳選されたニュースを5〜6本、お届けしています。キャッチフレーズは「お手元はそのまま、ながら日経」。朝の放送ということもあり、通勤時間帯に聞かれることの多いチャンネルです。

「ヤング日経」
平日の5日間、夜9時に配信しているチャンネルです。20秒で5つのニュースがわかるダイジェスト・それぞれのニュース・エンディングトークで構成され、忙しくてもサクッとチェックすることができます。


「質のよいニュース」・「確かな情報」を届けたい

昨年末、すでに米国において音声メディアの普及が進んでいる状況はキャッチしていた中で、日経として先んじた取り組みを始めたいという思いがありました。今回は特に、「日経の扱う一次情報に接するすそ野を広げたい」という目的でVoicyでの音声配信を開始しています。

比較的デジタルへの移行が進んでいると言われている日経ですが、それでも購読者数の伸び悩みや若年層へのリーチは依然課題として残っています。特に若年層の特徴として、ニュースを「まとめサイト」や「ニュースサイト」、TwitterなどのSNSで目にするのみであるなど、ニュース自体への関心の低下が挙げられます。この状況は、読者の先細りにつながるだけでなく、確かな情報に触れる人の減少も招き、フェイクニュースやデマの蔓延など、社会にとっても決して良いことではありません。より多くの人に、取材をもとに発信する確かな一次情報・質の良いニュースに触れてもらいたい、そのための方法・窓口の一つに新しいチャネルである「Voicy」や「音声」がなれるのではないか、という考えがありました。

音声への取り組みという意味ではグループ会社の日経ラジオ社が「ラジオNIKKEI」を放送しています。Voicyのリスナー層は若い方が中心ということでどのような記事選定がよいのか、番組構成が良いのかなど、チームで模索しながら工夫して運営しています。

「音声ならでは」の編集方針

一つ目の工夫は、届ける記事の「量」について。実は、日経の記事すべてにしっかり目を通すと1日かかってしまうという笑い話のような本当の話があります。私たちの新聞は経済発展のためにあるのに、これでは良くない。経済活動がストップしてしまいますからね(笑)。まずはハードルを下げるためにも、ぐっと量を絞り毎日5-6記事を紹介するということにしました。

配信する記事は、編集のデスク経験者が毎日選びます。「ながら日経」は日本経済新聞や日経電子版のスピンアウト版という位置付けです。あくまで本紙の編集方針を引き継ぎ、①一面に載るような重大なニュース ②他の面に載る重要なニュース ③通常見過ごしてしまいそうな、しかし影響の大きそうなニュースや全国で参考になりそうな地方ニュース、を取り上げることにしました。政治や経済といったジャンルではなく、あくまでその日における重要度で選ぶようにしています。また、朝の配信ということもあり、基本的には働く意欲を削ぐような暗いニュースはできるだけ避けています。

一方で「ヤング日経」は、より若年層に関心を持たれそうな記事を届けることに振っています。鮮度・新しさにはそこまで拘らず、明るい未来を連想させるような記事選びをすることで、とにかく日経の記事に触れてほしいと思いながら運営しています。(「ヤング日経」はTwitterやInstagramでも記事配信をしているのでぜひチェックしてください!)

距離の近さを感じられるパーソナリティ

二つ目の工夫は、ニュースを届ける「声」について。

毎朝記事を読むパーソナリティはオーディションで選定しました。正確に、うまく読めることも大事ですが、リスナーがパーソナリティに距離の近さを感じられることや個性あるコメントを聞けることも重視し、本業の職種・業種がばらけるような工夫もしました。

また「読んで」理解しやすい表現と「聞いて」理解しやすい表現は異なります。パーソナリティたちは、読み手でありながら、ニュースの受け取り手の1人でもあるため、日々読み方・伝え方について議論することが、私たちにとっても伝わるニュースについて考える貴重なきっかけになっています。

炎上しにくいのは「想像力」を求められるから

音声ならではの強みとして、「一度聞くと頭に残る」というのがあると思います。それからやはり、パーソナリティのトーク。個性を感じられたり、臨場感が伝わったりすることも音声ならではの魅力だと思います。

個人的には、音声だと「炎上しにくい」のではないか、とも感じます。音のみである以上、リスナー側が内容を理解するためには、少々想像力を働かせる必要があります。全てが語られる動画や、物事の一面のみ伝えるツイッターのような簡易なテキストが「ストレートな反応」を巻き起こすのに対して、「想像力を必要とする」音声で聞く情報は、頭の中で一旦中和されるように感じます。いまの社会において、「想像する」ことが減ってきているのではないか、だから一面的に他人を批判することが増えているのではないか。こう思うと、音声で想像を促すことで社会が良くなっていく一翼を担えるのではないかと思っています。

さらにコンテンツを広げていくために

あくまで今回の施策の目的は「日経の記事に触れる人のすそ野を広げたい」ということ。急いでマネタイズするというよりも、リスナーとコンテンツの接点を増やすための施策を打っていきたいと考えています。例えば若年層のフォロワーを持っているVoicyパーソナリティや他企業、可能なら同業他社である新聞社とコラボレーションして、良いコンテンツ・良い記事に触れる人の総量を増やして行きたいですね。

それからパーソナリティが日経を広めてくれるインフルエンサー、スターになることも期待しています。彼らの周りにいる人たちが、日経を好きになってくれるような、そんな働きかけ方ができたら理想ですね。

チャンネル開設からおよそ2ヶ月半、着々とリスナーを伸ばしている「ながら日経」「ヤング日経」。今後の放送もお楽しみに!

※この記事を読んでご関心をお持ちになったメディアの方へ
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