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電子レンジは「チン♪」で本当にいいの?サウンドデザイン・音の研究者、中央大の戸井教授に音の可能性をいろいろ聞いてみた

電子レンジは「チン♪」で本当にいいの?サウンドデザイン・音の研究者、中央大の戸井教授に音の可能性をいろいろ聞いてみた

こんにちは、Voicy広報の村田です。
音声市場や音声技術の最新動向をご紹介する「ボイステック最前線」。今回はオフィスを飛び出し、ある方のところにインタビューにやってきました。

生活に身近な「音」について多面的視点から研究されている、中央大学理工学部の戸井武司教授です!

■こちらの記事を声で楽しむことができます

Voicy上のチャンネル「VoiceTech最前線」では、戸井教授のインタビューをそのまま放送しています。ユーモアあふれる素敵ボイスの戸井教授のお話をそのままお楽しみください。


戸井武司教授のご紹介

音の研究を始めたのは2000年より少し前。当時は、「音は悪者」というイメージが強くて、車や家電などの製品音においては「騒音」と捉えられていて、音を下げる「低騒音化」という考えが主流だったとのこと。

そんな中、戸井教授は「音を下げていけば本当に良い世の中になるのか?」という疑問を持ちます。極論すれば、音を下げて無音になった場合、全く音のしない掃除機や洗濯機、自動車というものになると、「それはおかしな世界じゃないかな?」と思ったことが、音の研究を始めるきっかけだそうです。

そして、ただ音を下げるだけではなく、快適な音である「快音」という、「騒音」の対になる定義をして、音響学会などで提唱されていきました。
それ以来ずっと、音を下げることも選択肢の一つだけれど、いろんな形に音を変えていって「快音」を作るという研究をしていらっしゃいます。

たしかに最近では、家の中でもオフィスでも車でもとても静かになっていて、逆に静かすぎて、今まで気にならなかった小さな音でも目立ってしまっていることがありますよね。

「音への着目度や音へのこだわりが強くなってきているというのが今の世の中。そうなってくると、音の仕事はますます増えてきて、最近では音を作る『サウンドデザイン』という分野で、研究室でもいろんな企業さんと一緒に仕事をしています」と戸井教授。

中央大学 戸井研究室-音響システム研究室: https://toi-lab.com/

戸井教授に音についていろいろ聞いてみた!

さて、ここからはインタビュー形式でお届けします!
Voicyチャンネル「VoiceTech最前線」では、すべてのインタビューが放送されていますので、ぜひこちらもお聞きくださいね!

音の世界遺産を選ぶなら…スイスの山あいの牛たち!?
心地よい音をデザインするとはどういうこと?

(村田)音を研究されていらっしゃいますが、具体的にはどんな内容でしょうか?

(戸井)音はそもそも空気と同じように当たり前のもので…… というより、空気があるから音が伝わるわけですよね。スターウォーズでは宇宙空間でバンバン音がしていますが、あれは全部ウソなわけです(笑) 宇宙空間ではどんな大きな爆発があっても、あんなふうに音はしないんですよね。私は楽しく観ていますけれど(笑)
そう、地球上では音があるのは当たり前なのですが、逆に音を少し変えることでより生活の質が上がらないかとか、製品の価値が上がらないかとか、そういうことを考えて研究しています。

(村田)音の快/不快の定義みたいなものはあるのでしょうか?

(戸井)どの音が良いということは難しいのですが、平たく言うと、聞き慣れている音が安心して、眠くなるということは言えると思います。そして、耳につく音は覚醒を上げるということになります。例えば、自動車の中では、安全のために覚醒を維持しつつ、快適な空間を作らないといけません。そういった相反する状況をいかに作るかということが、我々の研究テーマです。また、電気自動車になってくると音がしなくなるので、スイッチの音やドアを閉める音などで、高級感やしっとり感といった「音で製品の質感をデザインする」ことが増えています。

(村田)私たちの暮らしにおいて、音の価値や重要性というのはどういうところにあるのでしょうか?

(戸井)確かに第一印象は見た目が重要というのはあるでしょうけれど、生活環境の中ではスマホを見たり、目をつぶったり、他のことを気にしたりしています。視覚情報と違って、音の方は絶えず私たちに情報を伝えています。音というのは、それがどういう状態なのかをメッセージとして伝えてきています。製品から出る動作中の音も、高級感やフレンドリーといったメッセージを伝えてきてくれるので、音をコントロールしていくことは重要だと思います。見た目は高級で重厚感のあるドアなのに、開け閉めする音が安っぽかったりすると、期待値とズレて違和感になってしまいますからね。

(村田)戸井教授が「素晴らしい音の世界遺産」を選ぶとしたら、どんな音がいいと思いますか?

(戸井)やはり自然の音は一番馴染みやすくていいですし、風景と音が合っていると素敵だと感じますね。昔旅行に行ったときのことですが、スイスの山で牛が放牧されていて、カウベルが聞こえてきたことを思い出しました。きれいな山と広々とした牧草地と牛のベルの音と、それらが相まった情景がいいなと思いました。

多数のスピーカを用いて車内の音環境を分離(サウンド・パーティション)

”らしさ”をデザインするサウンドブランディングの世界
受け入れられやすい音声広告のポイントとは?

(村田)音とブランドの関係性はどういうものでしょうか?

(戸井)サウンドブランディングという考えでいうと、トヨタだったらトヨタらしい音、ホンダだったらホンダらしい音というのがあると思うんですよね。そういった「らしい」と言われるような音がデザインされて、「こういう音はするけれど、こういう音はしない」ということを区分けして音を作っていく。電子音や物理的な音をトータルでデザインして、統一できるようになってくると、それがブランドになっていく。サウンドブランディングの難しいところは、動作中に出てくる音のすべてをものづくりの中でデザインしていかないといけないんです。そこに挑戦していくと、日本、そして世界で価値が上がっていくと思っています。

(村田)カラーバリエーションのように、音にもバリエーションがあるといいですよね。

(戸井)まさにそうです。例えば電子レンジ。機能・性能は満たされて、見た目の外観もイメージに合わせてデザインできたけれど、音はいつも「チン」ではやっぱりおかしい。例えば「ぽわーん」とか「ボーン」とかも、ある意味では人間は期待しているかもしれないのに、音だけが取り残されてしまっているという状態なのかなと思っています。高級家電というものでは、音に対する科学も高めないといけないでしょうね。外観も音もデザインしないとトータルの統一感は出てこないし、ブランディングにはなっていかないと思います。

(村田)企業が音だけでなく音声を活用していく可能性はどんなところにありそうでしょうか?

(戸井)音声は「声色(こわいろ)」と言われるぐらい、人の気分や感情が伝わっているはずです。音声情報はもっと活用すべきだし、本人の真意というものが含まれているものです。音声情報から人の健康状態を見ようという動きもあります。聴覚は視覚と違って、後ろを向いても前を向いても、寝そべっていても音は聞こえてきますよね。だからこそ、「音環境」を上手に創っていくことが必要になります。
音声広告においても、聞いている人の音環境に馴染んだ音をうまく入れていければ受け入れられやすくなると思います。受け入れられている状態のところに、さりげなくメッセージを発信するとか、残すとかが大事。大きな音声でトリガー的に気づかせるというやり方も一部にはあると思いますが、さりげなく入り込む方が、結果的にはメッセージが心に残るのではないかなと思います。


戸井教授と話していると、普段何気なく触れている「音」というものの輪郭がはっきりしてくる感覚を覚えます。特に製品について好き嫌いを評価するときは、オシャレとかかっこいいとか、ほとんどを視覚的なデザインで判断していますが、たしかに音が作るイメージというのも大事だなと感じました。

世界を見ても、音についての研究はまだまだ多くはされていないとのこと。

私たちVoicyも、映像・画像や文章ではなく、音声だからこそ伝えられるコミュニケーションがあると考えて仕事をしています。

音や音声の世界をもっともっと深めて、盛り上げていきたいですね!

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