新撰組副長 土方歳三さん。近藤勇さんや沖田総司さんらと共に新撰組として活躍した幕末の志士です。歳三さんのふるさと、東京都日野市の生家跡には「土方歳三資料館」があり、歳三さんの愛刀である「和泉守兼定」や武具、手紙などが展示されています。
その歳三さんのご子孫で、土方歳三資料館 館長の土方愛さんがパーソナリティをつとめる「ゆるっと幕末トーク❣️」
音声プラットフォームVoicyで聴ける「ゆるっと幕末トーク❣️」は、歳三さんや幕末のお話のほか、聴きながら館内を回れる解説放送なども発信されています。
今回は、土方愛さんがVoicyで放送をスタートするきっかけや、リスナーの皆さんからの反響などを伺いました。
資料の解説に音声ガイドを活用したり、声の発信で来場者の方との距離が縮まったと教えてくださた土方さん。音声ガイドに興味がある資料館や博物館の方や、ファンの方に向けて想いを届けたいと考えている方の参考になるお話です。
(写真:土方歳三資料館提供)
目次
土方歳三さんの子孫 土方愛さんが幕末や新撰組について語るチャンネルをスタート!
ー土方愛さんのこれまでのご経歴を簡単に教えてください
土方歳三の兄が土方家の実家を継いでいて、その兄から数えて6代目にあたる子孫が私です。歳三さんは35歳の時に独身で亡くなっているので、直系の子孫はおりません。
私自身、歳三さんと同じ家で育ちました。お風呂は薪で入るような、そんな古い家で「この柱で歳三さんが相撲のお稽古をしたんだよ」など歳三さんの様々な話を聞いて育ってきたんです。
私の代で歳三さんの生家に住んだ子孫は最後だったので、歳三さんや新撰組について知っていることは伝えたいなと思って、母から土方歳三資料館を引継ぎました。
館長として資料館の運営をしたり、大学の客員教授として授業も持っています。たまに、歴史のツアーやイベントを主宰をしたりもしています。
ーVoicyで放送している「ゆるっと幕末トーク❣️」では、どんなお話をされていますか?
館長として日々いろいろな情報に触れていますので、歳三さんのことや、新撰組、幕末、日本刀などの情報をお話ししています。その他、私の関心のあることや、新撰組クイズや幕末の本なんかも紹介しています。
歴史の話となると年号や地名が出てきて、難しいなと感じる方もたくさんいると思うので「ゆるっと幕末トーク❣️」ではシンプルにお話しして、興味を持ってもらえるように心がけています。
ーリスナーさんはどんな方が多いのですか?
やっぱり、幕末ファンや新撰組ファンの方が多いですね。若い方だと大学生の方から、上は数十年来の新撰組好きのシニアの方まで幅広いです。Voicyでたまたま見つけて聴きました、というリスナーさんもいらっしゃいます。
コロナ禍で資料館も休館。全国の幕末、新撰組ファンに声で想いを届けたかった
ー土方歳三資料館は元々Twitterでもかなり積極的に発信されていましたが、Voicyを始めようと思ったきっかけを教えてください
新撰組ファンの方などから「コロナ禍でいろいろなイベントがオンラインになって、史跡巡りやツアーに参加できない」「鬱々としている」といった声があったので、新撰組に触れられる何かがあるといいな、声で何か発信してみようかなと思ったのがきっかけです。
みなさんの心に新撰組のこんなチャンネルがあるんだな、とちょっと癒しになればいいなという感じですね。
Voicyには歴史のチャンネルがいくつかありますが、幕末や新選組の分野で発信されている方はまだいなかったので、やってみようと思ったんです。
ーTwitterやYouTubeでも発信されていますが、それぞれどのように使い分けられているのですか?
Twitterは気軽で情報も早く出せるので、一番更新しています。ただ、拡散力が強い分、誹謗中傷や炎上も怖いなと…。資料館の公式アカウントとして使っているので、気軽にフォローしたり、リプライを返したりはできないですね。
Twitterであまりファンの方と交流ができない分、Voicyではもっと砕けた内容で私観なども話しています。
YouTubeも、コロナ禍の中で時間が増えた方もいるだろうと思って2021年からはじめました。動画は撮影や編集が大変だったので、最近はストップしています。
館内を聴きながら回れる解説放送!音声を使えば、コロナ禍でも安心して解説を聴いてもらえる
ー放送の中で、特に反響が大きかったものはありますか?
資料館の解説(【土方歳三資料館解説】歳三の一生をたどる)はチャンネルページのトップに置いてあるので、公開日から時間が経っても再生数が伸びていますね。
あとは皆さんの好きな歳三さんの俳句をTwitterでアンケートをとって、その結果を放送したり。新撰組クイズも緊急事態宣言中に2回やりました。
そこまでニッチな問題ではなく、半分くらいの方が正解が分かるかな?というお題にしているので、皆さん楽しんでゆるっと聴いてくださっているのかなと思います。
ーVoicyを聴きながら館内を回れる、資料館の解説放送はどういったきっかけで作られたのですか?
コロナ前の開館日は、毎回5分くらい私が解説のスピーチをしていたんです。
土方歳三資料館には、毎月いらっしゃる熱心なファンの方もいらっしゃいます。リピーターさんは毎回その解説を聴くので、なんだか悪いなと…マイペースで見たい人も多いはずなんですよ。
資料館の解説放送があったら「各自聴いてください」とご案内できると思ったので、放送を作ったんです。
大きな美術館や博物館で使われている音声ガイドをやろうとすると、機材の購入が必要だったり、コロナ禍の今は機材の消毒もしなきゃいけなくて。色々と難しいと思っていたので、Voicyを使って音声ガイドができるのは便利ですよね。
放送が聴けるQRコードを入れて、案内のカードを作って、資料館の受付のところに置いています。
実際の資料館の解説放送はこちら▼
期間限定展示の和泉守兼定刀身公開(歳三と最期までを共にした遺刀の展示)は、今年は完全予約制で時間ごとに区切って来館いただいたので、みなさんちょっと早めにいらっしゃるんですよ。Voicyの放送をご案内すると、待ち時間に聴かれる方もいらっしゃいました。
ただ、館内で聴きながら展示を見ている方は今のところ少ないですね。館内では実物に集中したいみたいです。帰った後に復習するのに聴く方もいらっしゃったり、そうやって活用いただいています。
Voicyの解説放送の他にも、和泉守兼定刀身公開では、刀の解説をボイスメモに録って展示中に流しました。コロナの前は毎回解説していましたが、やっぱり飛沫が飛ぶなどの問題もあるので。音声が流せれば、来場者さんも安心できるのが良いですよね。
声の発信は親近感が湧く!放送をスタートしてから、来場者さんが話しかけてくれるようになった
ーVoicyを始めてみて、リスナーさんからの反響はいかがでしたか?
嬉しい声も色々いただけるようになりました。
大学生の方から「オンライン授業でリモートばかりで限界です。朝起きてパソコンを開く毎日だけど、今は土方さんのVoicyが楽しみになっています!」という声をいただいたり。
コメントをたくさんいただく中で「◯◯さん、今日新撰組の映画がありますよ!」とリスナーさん同士の交流が始まったりもしています。笑
あと、日野市に「日野市立新選組のふるさと歴史館」という施設があるんです。そこの受付を半年前に始めた方が、地元だからと軽い気持ちで応募したので、あまり新撰組への熱量がなかったらしいんです。でも私のVoicyを聴いて、熱心なみなさんのコメントを見ているうちに、みんなが新撰組をどう思っているのか、何で新撰組を好きなのかが分かってきたみたいで。「今では新撰組にすごい興味を持ってます!」と言っていただいて、すごく嬉しかったですね。
ー放送を聴いてから、資料館に来る方もいらっしゃいますか?
いらっしゃいます。先日の和泉守兼定刀身公開の期間には、事前にVoicyを聴いたことがあった方が、2割くらいいらっしゃいました。予約をして刀身を見たいというファンの方なので、熱量も高く、事前に放送を聴いていらっしゃったんだと思います。
ーVoicyの放送を始めたことで、起こった変化はありますか?
資料館に来て、話しかけてくださる方がすごく増えて、来館者さんとの距離が近くなりましたね。
最近の和泉守兼定刀身公開の際には、普段からコメントを下さっている方はほぼ資料館にいらっしゃったんです!しかも「いつもコメントしてる◯◯です!」ってリスナー名を乗り出てくださって。「Voicy聴いてます」「楽しんでます」とか、毎日聴いてくださる方は資料館にきた際に必ずお声をかけてくださるんです。
私もコメントを読んでいるので、何度もコメントをくださる方って分かるじゃないですか。だから実際にお会いできるって嬉しいですよね!
これって、今までTwitteや他のSNSではなかった距離感ですね。コメントやRTをしてくださる方はいらっしゃるけど、オフラインで会ったときに名乗り出てくださる方はいなかった。声の発信は、それだけ濃いというか、親近感が湧くんだなと思いました。
特に、今はコロナ禍で飛沫対策のビニールカーテンもあるし、話しかけづらいじゃないですか。それをVoicyは繋いでくれる感じがありましたね。
ーVoicyでの発信が、他の活動に役立ったことはありますか?
講座の細かな告知もしやすくなりました。ただ「講座をやります」というだけじゃなくて「今回はこういうところにフォーカスして、こんな講座にしようと思ってます」と想いも伝えやすいです。
コメントでも「講座申し込みました!」と言ってくださった方もいらっしゃいました。たぶん普段から放送を聴いていると、リスナーさんが「この人はがんばろうとしてるんだな」と思って応援してくださっているのかなと(笑)
特色ある館は、音声発信と好相性!コロナ禍の今、声でファンに想いを届ける
ー同じく資料館・記念館を運営する、声の発信に興味がある方に向けてアドバイスをお願いします
緊急事態宣言がいきなり出て、準備してきた展示が公開できなくなることが日本全国で起きていて…悩まれている館が多いと思います。
今までのような大型展示に行列ができて収益が上がる、という展示モデルは無くなっていくのかなと…。今、資料館や記念館はみんな生き残りをかけてSNSをやっています。
その中でも、音声の発信は親近感を持ってもらいやすく、ファンになってもらえると思います。企画展示の様子など、世界中に向けて動画で配信するのも良いですが、特色のある記念館や博物館は、音声の発信も相性が良いと思いますよ。
Voicyは、うちみたいな小さい資料館や、個性的な特色のある館は特にすごく便利に使えるんじゃないかな。
学芸員さんの展示の裏側とか、企画までのプロセスとか、興味ある人もたくさんいますよね。例えばアーカイブ施設や図書館とかで、どこかの地方の昔話をシリーズで収録して残していくとか、記録的な放送も面白そうです。
各地の民族、民藝とか、オカルトとか妖怪伝説、日本刀とか…そういった特色のある施設は活用度が高いと思います!コロナの時代に音声はマッチしていると感じますね。
ー今後の土方さんの活動の展望を教えてください
資料館の今後ですが、背伸びせず、個人でできる範囲で続けて行こうかなと思っています。コロナを経験して、運営をずっと続けていくのは難しいかなって気がしているんです。
でも、新撰組が好きな人はたくさんいらっしゃって、こういう資料館がなくなると、だんだん語られること、取り上げられる機会も少しずつ減っていってしまうので。
実は、Voicyを始めたのもそういう背景があるんですよね。資料館がなくなっても、最後のご奉公じゃないけど、最後にお話を残してみんなに楽しんでもらいたいなって思いもありました。
今後、Voicyの放送でやってみたいのは、新撰組の子孫の方とコラボして、子孫同士のトークをするのも面白いだろうなって。あとは、他の歴史チャンネルの方とコラボも興味があります。私は子孫という立場なので、歴史の専門家から、ニュートラルなご意見も聞きたいですね。コテンラジオさんとか、お話ししてみたいです!そしてこれからもクイズしたりアンケートをしたり、楽しんで放送していきたいです。
Voicyは担当のスタッフさんが使い方や発信の方向性まで困った時はいつもサポートしてくださるので本当に心強いです。音声配信をVoicyで始めることができて、本当にラッキーだったと心から思います。
ー土方さん、お話ありがとうございました!
声での発信は、想いが伝わりやすく人柄が直接リスナーに届きます。資料館や記念館の情報・裏話などを声で伝えて、ファンの方とより深く繋がりませんか?
ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。音声コンテンツに関する経験豊かなスタッフがサポートします。