TOPハウツー・学習歴史十二単着付け師の【にちにち気づきだより】第658話 【木守柿】ひとつ残すということ10:52 一昨日 33再生 問題を報告する 再生する シェアする AI目次柿が持つ学名と秘められた意味平安時代から続く「木守柿」の習わし全てを教えない講師業の「余白」の価値「残す」行為から学ぶ日本人固有の知恵一つ残された柿が語る「豊かさ」とはAI文字起こし(β版) # 今日はどんな日? 日々気付きだより佐藤美奈子です。 今日もお聞きいただきありがとうございます。 このチャンネルでは、毎朝、平安の行事、季節の移ろい、 当時の人の暮らし、そして衣のこと、その日の暦を一つお話ししています。 千年前の営みが、今の暮らしや仕事にどう繋がっているのか、 毎朝一つお届けしています。 はい、10月9日です。 そろそろ店先に柿が並ぶ頃ですね。 ちょっと固そうかなと思うので、まだ私は買っていませんけれども、 皆様、もうこの秋柿を召し上がられましたでしょうか。 あの柿の橙色というのを見ると、秋が一つ深くなったように感じますね。 紅葉の赤とも、栗の茶色ともやっぱり違う。 少しくすんだ柔らかい橙色というのは、日本の秋によく似合います。 柿にはとても面白いことがあって、学名はディオスピーロス柿。 最後にそのまま柿と入っています。柿ですね、発音は。 ディオスピーロスというのは、ギリシャ語で神のディオス。 食物、例えば穀物のことをピーロスを組み合わせた言葉で、神の食べ物、神のたまものという意味を持ちます。 そして学名の最後には柿。 日本語の柿がそのまま学名になったものなんですね。 ディオスピーロス柿。 柿そのものは中国に起源があると言われていますけれども、日本で古くから栽培されていて、様々な品種が育てられてきました。 そのため世界でも柿という名前で知られるようになったのですね。 今日はこの柿にまつわる一つの小さな習わしからお話をしてみます。 # 残すことも必要 平安の人たちも柿を食べていたと言われています。 当時の食べ物を考えるとこれはなかなか大切なことで、今の私たちは甘いものを食べようと思えばいつでも手に入りますが、 平安の時代には甘いもの、砂糖は特に貴重なものだったわけです。 天面という植物からとった甘い汁もありましたけれども、 手間がかかってたくさん摂れるわけではありません。 そんな時代に木になった実をそのまま食べて甘いわけです。 柿はそれだけでもありがたい果物だったのでしょう。 さらに干せば甘みが増して長く保存することもできますよね。干し柿、私大好きです干し柿。 実の少なくなる季節を前に甘さを残しておける。 柿は秋の味覚というだけではなくて、暮らしを支える食べ物でもあったのだと思います。 そして柿には木守柿という言葉があります。 木を守る柿と書きます。 柿を収穫する時、全ての実を取ってしまわず、木に一つあるいはいくつか残しておくという習わしです。 来年もよく実りますようにという願いだとも言われています。 そして冬を越す鳥たちのために残しておくんだという土地もあるんだそうです。 由来ですとか意味というのは地域によって少しずつ違いますけれども、していることは同じで、実っているからといって全部は取らない。 手を伸ばせば取れるものをあえてそこに残しておくということです。 木の上に一つだけ残った柿、人が取り忘れた実ではないということを覚えておいてください。 これは残しておくと決めて残したものなんですね。 私はこの取り尽くさないという感覚が何かいいなぁと思いました。 ちょっと鳥肌が立ったんですよね。この音声を取る時に調べた時には全部取らないいいなぁと思いました。 考えてみると私の仕事にも少し似たところがあります。 教える仕事をしてつい全部を伝えたくなることはいつもあります。 こうして、次はこうして、次はこうですよ、ああですよ、この場合はこう考えると良いですよというふうに、こちらにはそれなりの経験もありますので、 受講生の方が迷うところも、つまづきそうなところもある程度私も経験してきているのでわかります。 ですから先回りして答えを渡すことはいくらでもできるんですけれども、今はあえて言わずに待つということがあります。 手が止まって少し戻る。もう一度やってみる。そして時々こちらを見て答えを求めていらっしゃる方もいて、 そんな時にはすぐには答えを言わずに、今どこが気になりますかとか、 何かその後やってみたいことがあるんですかとか、自分ではどうしたいと思いますかというふうに聞くようにしています。 すると、もう一度この衣の布目を見ていたら、ちょっと気になることがあった、だとか、手で触って少し離れて眺めて自分なりに考え始めようと思います、だとか、 あとはご自身で答えを見つけることもあります。 その答えが私の考えていたものと全く同じではない、でもそれが良いと思っています。 大切なのは自分で見て考えて自分の手を動かしたことですね。教えてもらった答えというのはいつか忘れてしまうことがありますけれども、 自分で迷って見つけたことというのは体のどこかにも残るんですね。 以前はたくさん伝えることが良い指導ではないのかと思ったこともありましたけれども、 こちらが全て受講生さんの空間を埋めてしまうというか、私の考えで埋めてしまうと、その方が考える場所までなくしてしまうことがあるので避けるようにしています。 だから今は少しだけ残しておく、ここから先はご自分で見つけてほしい、そう思いながら答えをひとつわざと手渡さずに置いておく、 そういうふうに余白が次の稽古につながるということがあります。 木のてっぺんに実をひとつ残すように、教えることにも全部は取らないという還元があるのかもしれません。 木漏り垣、この習わしを考えていると、私はこの残すということについて考えました。 ひとつの実を残したからといって、それだけで翌年の収穫が決まるわけではないわけですよね。 鳥のためという意味もたった一つで十分とは限りません。 鳥のためだったら何個も残しておかなきゃいけない。 それでも人はちゃんと一つ残してきたわけです。 なぜでしょうか。もしかすると大切なのは、実そのものよりも全部は取らないという感覚を毎年、手で確かめることなのかもしれません。 欲張らないようにしましょうとか、ほどほどにしましょうとか、 そう言葉で言われてもどこまでがほどほどなのか、案外わからないものですけれども、 木の上に一つ残すという感覚、それで決まっていれば、そういうことっていうのはできますよね。 最後の一個へ手を伸ばした時に、ああこれは残しておくんだったと思い出せる。 その一瞬で手が止まる。理屈ではなくて体が覚えるんですよね。 私は昔から続くこの習わしには、こういう知恵がよく入っているように思います。 大切なことを難しい言葉で教えるのではなくて、一つの動作にして残しておく。 教えることも似ています。自分で考えてくださいというだけではなかなか伝わりません。 だから教える側が先に手を止める。答えを全部は渡さない。 そして相手が考えられる場所を残しておく。 何かを育てる時には、足すことばかりではなくて、残すことも必要なんですよね。 全てを取らない。全てを言わない。全てを埋めない。 そこに残った一つが、次の季節をつないでいくこともあるのだと思います。 10月9日、今日は柿のお話でした。 これから柿の実がますます色づいていきます。 もし柿の木を見かけることがあったら、収穫の後にも少し見上げてみてください。 高いところに一つだけ実が残っているかもしれません。 取り忘れた柿ではなくて、残すために残した柿。 そこには木守柿という名前があります。 全部を手にしないことで、残るものもある。 秋の木の上に残った一つの実は、そんなことを教えてくれているように思います。 うちの最寄り駅のホームに立って電車を待っていますと、柿の木があるお家があるのです。 その柿の木は、渋柿なのかどうか分かりませんが、全く収穫していないのです。 いっぱいあの実をならして、カラスがやってきて、食べているのはよく見るので、あえて食べさせているのかもしれませんが、 そこは木守柿というよりは、ただ収穫しない柿で、この橙色にいっぱい染まっている木です。 冬がどんどん近くなってくると、一つ二つと少なくなっていって、 鳥さんたちも嬉しく食べているんだろうなぁと思いながらいつもホームに立っています。 それではごきげんよう。 もっと見る #二十四節気 #余白 #七十二候 #木守柿 #全部与えない 十二単着付け師の【にちにち気づきだより】さとうみなこ02:091.今日はどんな日?08:432.残すことも必要コメント感想・質問・応援メッセージを書こう
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