2018年、スマートスピーカーはアメリカで約4,300万人に利用されているということが発表されました。
もう少し分かりやすく表現すると、6人に1人がスマートスピーカーを持っていることであり、登場3年後のiPhone普及率とほぼ等しいと言い換えることもできます。
ここ数年で急速に生活に浸透してきているスマートスピーカー。日本でもアメリカと同様に、その利用率が高まっています。
その中でも、スマートスピーカーを利用した音声レシピの分野は盛り上がりを見せています。2017年4月末時点で、GoogleHomeから500万種類の音声レシピが提供されているほどです。
日本でもクックパットなどを筆頭に、音声レシピを利用したサービスを開始しています。
そしてVoicyも2018年11月、創刊30周年を迎えるレタスクラブと連携し、音声レシピサービスをリリースしました。
今回は、音声と料理をどのようにかけ合わせてサービスを作っていったのか?音声レシピはどんな特徴があるのか?Voiceデザインチーム(VUX)の京谷と、エンジニアの飯塚に、サービスに込められた知られざる音声の可能性を聞きました。
音声の特徴を生かして、調理体験をもっと楽しくしたい。
京谷)
私は普段、料理動画を利用するユーザーの1人でした。今回、レタスクラブさんと音声レシピを作る上で、動画では生み出せない部分を音声で提供できればと思ってこのサービスを作り始めたんです。
例えば動画で料理をする場合、どうしても動画が調理のペースを上回ってしまいます。そのため、手が塞がった状態で携帯を何度も操作し、巻き戻しなどを行わなければいけません。調理を何度かストップしたり、スマートフォンが汚れてしまう経験をしたこともありました。
しかし、音声なら調理を行うユーザーに寄り添ったサポートができるのではと考えたんです。
実際に社内で調理を行いながら、音声レシピの最適解を探っていきました。Voicyを運営する中で、音声ができることや長所は理解していたので、それを音声レシピにどう活かせるのか?音声の特徴を生かして、調理体験をもっと楽しくできないか?と日々試行錯誤していました。
レシピを見栄えではなく、人で選択する可能性
京谷)
今回のサービスを作る上で1番に心がけていた点は、ユーザーがより調理しやすい音声体験を作ることでした。
温かみがあり一緒に調理をしているような体験を提供したかったので、無機質な機械音ではなく、実際に料理研究家の声を録音しました。収録時には、料理教室の生徒さんに話しかけるようなイメージでセリフを調整していきました。
また、食材を煮込んだり、焼く時間もこれまでの動画レシピや音声レシピでは短縮される部分を、そのまま残す選択をしました。
理由は、調理時間などを短縮せずにそのまま伝えることで、レシピサービスの1番のネックになっていた、調理の際に生じる無駄な操作の必要性を無くし、より調理を楽しんでいただけるようにしたかったからです。
メリットはそれだけではなありません。調理時間をそのまま収録することで、各調理時間の適切なタイマー機能も兼ねることができます。時間的な余白も生まれ、調理のポイントや豆知識など幅広い知識をユーザーに届けることも可能になりました。
作り手が使いやすい音声体験を技術面でサポート
飯塚)
僕はエンジニアとして、技術面でサービスのサポートしてきました。
例えば、先程の「食材を煮込む」や「食材を焼く」などの時間には、作り手の力量によっては工程のスキップが必要になると想定していました。そのため、調理スピードが早いユーザーはスムーズに次の調理工程に移れるようにスキップする、などの操作を可能にしました。
また、音声が一度に伝えられる情報量には限度があります。
例えば、カレーの材料を紹介するときに、「材料は、じゃがいも4個、人参1本、玉ねぎ1個、牛肉300グラム…」などと一気に読み上げてしまっても、ユーザーは情報を覚えきれなくなってしまいます。そのため、スマートスピーカーを駆使して文字も使いながら、より調理に集中できる機能的な要素も組み込みました。
また今回制作したレシピには、調理音も一緒に録音する試みに挑戦しました。
ユーザーがより調理しやすい音声体験を実現するために、できるだけ臨場感のあるダイナミックな音声をユーザーに届けられるようにしています。実際に一緒に調理をしているような音の体験を想起させ、より良い料理体験を演出したいと思い、調理音も一緒に録音した音声レシピを作り上げました。
音声レシピの可能性と特徴について
うすい)音声レシピのリリースお疲れ様でした。実際に1から音声レシピを作ってみてどうでしたか?
京谷)やっぱり、音声レシピでどんな体験を生み出せるかは正直挑戦だなと思っていました。
でも実際に音声レシピを作る中で、動画にはできないけど音声にしかできないことがあるなと気付いたんです。それを表現できたことは、とても達成感がありました。
飯塚)僕も音声レシピを作っていく中で、動画レシピが優れているとか、音声レシピが優れているではなくて、音声にしかできないことがあると感じました。使い手の力量や得たいことに対して適した方で情報を選ぶことができれば、より調理体験が良くなるなと感じました。
うすい)動画レシピと音声レシピの違いはどこだと思いますか?
京谷)動画レシピだと、短い時間で調理の全容が把握できます。調理のポイントが短時間で取得できるので、パッと料理したい人や、献立を探している人にはとても向いていると思います。だた、簡単そうに見える分、実際に作ると想定よりも時間がかかってしまったり、難しかったりします。
音声レシピだと、調理者の声を聴きながら寄り添った情報を得ることができます。初心者や初めて作るレシピを作っていきたい方には向いていると思います。
うすい)なるほど。アメリカで音声レシピが人気になる理由も分かりますね。
飯塚)音声による料理レシピは、撮影機材や美しいスタジオがなくても、自宅のキッチンからスマートフォン一つで収録して配信することが可能になっていくと思います。そうすると、これまでよりもはるかに簡単にレシピをアップロードすることが可能になります。旬の食材を使ったレシピや自慢のレシピも、個人の発信者からスムーズにリリースしていくことになるかも知れないですね。
京谷)SNSを駆使して、誰もが料理の情報を共有できるようになると面白いですよね。
京谷)あと今回サービスを作る過程で、音声レシピはレシピだけではなく人間性も伝えていくこともできるなと思ったんです。
うすい)人間性ですか?
京谷)今まで献立を決める選択って、たくさんのレシピから美味しそうなものを選ぶ形でした。でも音声レシピが活発になると、発信者である料理研究家から献立を決める選択肢が増えると思うんです。あの人の音声レシピはわかりやすいし勉強になるし美味しい!みたいに。
音声レシピを通じて、料理研究家の新しい表現の場が生まれれば素敵だと思っています。
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今回のレタスクラブ様との取り組みでは、全5種の音声レシピを公開しています。
今晩のレシピにいかがですか?
音声レシピの詳細はこちら。