TOPエンタメ映画・本ショートストーリーの朗読中辛の続き06:57 10月17日 1再生 問題を報告する 再生する シェアする AI目次再現したい一枚の写真と秘められた真実「中辛」が暴く、記憶と現実のズレ大切な記憶を彩る「白い器」の存在「今日、何が食べたい?」新たな問いかけ「二人」と記す未来への約束AI文字起こし(β版) # 中辛の続き 中辛の続き 引きどころ 閉店する店で、最古の中辛鍋が煮えています。 マホは、旧友との一枚の写真をもう一度撮りたいのです。 あの夜を再現するために足りないものは何でしょうか。 5分物語 赤い鍋が煮えていた。マホは携帯の写真と見比べ、率の椅子を少し右へ動かした。 5年前と同じ店。 同じ席、同じ中辛。 今夜を最後に店は閉まる。 もう少し寄って。前の写真と同じにしたいから。 久しぶりに会った率は、カバンを膝に抱え直した。 先に店員へ声をかける。 水を2杯お願いします。 緊張しているのだとマホは思った。自分も昨日から落ち着かない。 率が引っ越してから会うのは1年ぶりだった。 この鍋は予約でしか食べられず。代金も押し払ってある。 最後の一鍋ならあの夜の続きが話せる気がした。 写真の中の二人は赤い鍋を挟んで笑っていた。 マホはその一枚を旗種を変えても消さなかった。 前、美味しかったよね、これ。 うん、あの夜楽しかったよ。 マホは麺を取り分けた。 率が一口食べて止まった。 水を飲みもう一杯を引き寄せる。 笑おうとした顔がくしゃっと縮んだ。 中辛なのに辛さ変わったのかな? 僕、もともと辛いのが苦手なんだ。 鍋の泡立が返事のない間を埋めた。 マホは昔の写真を開き直した。 率はこんなに笑っている。 あれまで間違いだったら、自分は何を大切にしていたのだろうか。 でも、また食べたいって言ったよ。 言った、マホとなら。 マホは水を注いだ。 グラスがいっぱいになってもしばらく手が止まらなかった。 率がそっと水さしを支える。 薄めるスープは残っていないか店員に尋ねた。 最後の営業で別添えの辛くないスープは売り切れていた。 別添え、その言葉でマホは写真の隅を拡大した。 率の前に小さな白い器がある。 マホの器は赤い。 記憶の中では二つとも同じ色になっていた。 あの時もこっちで薄めたんだ。 途中でマホが話し始めて、僕は食べるのが遅くなって。 仕事を辞めようかなって話? 終電一歩逃したよ。 写真には終電も白いスープを足す手も写っていない。 ただ二人が笑っている。 マホが覚えていた辛さは自分の器のものだった。 マホはあの夜、率が長い話を嫌がらずに聞いてくれたことも覚えていた。 けれど、予約するとき書いたのは、中辛、窓際、午後7時、それだけだった。 率が今も同じ条件で笑えるかは一度も聞いていなかった。 厨房から最後の注文を締める声がした。 代わりの料理はない。 鍋を下げればこの味にはもう戻れない。 マホは箸を持った。 自分が食べれば率をここに座らせておける写真だって撮れる。 率は空いたグラスを両手で持っていた。 昔の写真と同じ笑顔を作ろうとしてやめた。 今日は何が食べたい? 今日? うん、写真の日じゃなくって。 温かいもの、辛くないやつ。 マホは? マホは箸を置き、店員に鍋を下げてもらった。 赤い湯気が遠ざかる。 支払った予約代は戻らない。 二度と撮れない写真も、そのまま携帯の中に残った。 二人が外へ出ると、店員が札を裏返した。 マホは振り返り、それから率の歩幅に合わせた。 少し先にまだ明かりのついたうどん屋があった。 店の前で写真を撮る人たちを避け、二人は歩き出した。 マホの携帯はカメラの画面のままだった。 率が何か言いかけたので、マホは画面を閉じた。 今度は先に聞いてよ。 辛さ? ううん、来られるかどうか、最後の日まで待たないで。 マホは笑って自分のメモを開いた。 中辛とだけ残っていた古い一葉。 その下に新しいページを作った。 マホは店の名前より先に二人と書いた。 もっと見る #恋愛コメディー #食の物語 ショートストーリーの朗読ソフトウェアテストTACT 「そふてた」と呼んでください06:571.中辛の続きコメント感想・質問・応援メッセージを書こう
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