2025年6月
#021 沢庵和尚『不動智神妙録』:「放心」の教え
39:18
求放心(ほうしんをもとめよ)と申すは、孟子が申したるにて候。放(はなた)れたる心を尋ね求めて、我身へ返せと申す心にて候。
たとへば、犬(いぬ)猫(ねこ)鶏(とり)など放れて余(よ)所(そ)へ行けば、尋ね求めて我家に返す如く、心は身の主なるを、悪(あ)敷(しき)道へ行く心が逃げるを、何とて求めて返さぬぞと也。 尤(もっと)も斯(か)くなるべき義なり。然るに又邵康節(しょうこうせつ)と云ふものは、心要放(こころをはなつをようとす)と申し候。 はらりと替(かわ)り申し候。
斯く申したる心持は、心を執(とら)へつめて置いては労(つか)れ、猫のやうにて、身が働かれねば、物に心が止(とどま)らず、 染(そま)ぬやうに能(よ)く使ひなして、捨(すて)置(お)いて何所(いずこ)へなりとも追放せと云ふ義なり。
物に心が染(そ)み止(とどま)るによつて、染(そまら)すな止(とどま)らすな、 我身へ求め返せと云ふは、初心稽古の位なり。蓮の泥に染(そま)ぬが如くなれ。泥にありても苦しからず。よく磨きたる水晶の玉は、泥の内に入(い)っても染(そま)ぬやうに心をなして、行き度(た)き所にやれ。
心を引きつめては不自由なるぞ。 心を引きしめて置くも、初心の時の事よ。一期其分(いちごそのぶん)では、上段は終(つい)に取られずして、下段にて果(はて)るなり。
稽古の時は、孟子が謂(い)ふ求其放心(そのほうしんをもとめよ)と申す心(こころ)持(もち)能(よ)く候。至(しい)極(ごく)の時は、邵康節(しょうこうせつ)が心要放(こころをはなつをようとす)と申すにて候。
中(ちゅう)峰(ほう)和尚の語に、具放心(ほうしんをそなえよ)とあり。此(この)意(い)は即ち、邵康節(しょうこうせつ)が心をば放さんことを要せよと云ひたると一(い)つにて、放心を求めよ、引きとめて一(ひと)所(ところ)に置くなと申す義にて候。
又具不退転(たいてんせざるをそなえよ)と云ふ。是(これ)も中峰和尚の言葉なり。退(たい)転(てん)せずに替はらぬ心を持てと云ふ義なり。人たゞ一度二度は能く行けども、又つかれて常に無い裡(うち)に退転せぬやうなる心を持てと申す事にて候。
たとへば、犬(いぬ)猫(ねこ)鶏(とり)など放れて余(よ)所(そ)へ行けば、尋ね求めて我家に返す如く、心は身の主なるを、悪(あ)敷(しき)道へ行く心が逃げるを、何とて求めて返さぬぞと也。 尤(もっと)も斯(か)くなるべき義なり。然るに又邵康節(しょうこうせつ)と云ふものは、心要放(こころをはなつをようとす)と申し候。 はらりと替(かわ)り申し候。
斯く申したる心持は、心を執(とら)へつめて置いては労(つか)れ、猫のやうにて、身が働かれねば、物に心が止(とどま)らず、 染(そま)ぬやうに能(よ)く使ひなして、捨(すて)置(お)いて何所(いずこ)へなりとも追放せと云ふ義なり。
物に心が染(そ)み止(とどま)るによつて、染(そまら)すな止(とどま)らすな、 我身へ求め返せと云ふは、初心稽古の位なり。蓮の泥に染(そま)ぬが如くなれ。泥にありても苦しからず。よく磨きたる水晶の玉は、泥の内に入(い)っても染(そま)ぬやうに心をなして、行き度(た)き所にやれ。
心を引きつめては不自由なるぞ。 心を引きしめて置くも、初心の時の事よ。一期其分(いちごそのぶん)では、上段は終(つい)に取られずして、下段にて果(はて)るなり。
稽古の時は、孟子が謂(い)ふ求其放心(そのほうしんをもとめよ)と申す心(こころ)持(もち)能(よ)く候。至(しい)極(ごく)の時は、邵康節(しょうこうせつ)が心要放(こころをはなつをようとす)と申すにて候。
中(ちゅう)峰(ほう)和尚の語に、具放心(ほうしんをそなえよ)とあり。此(この)意(い)は即ち、邵康節(しょうこうせつ)が心をば放さんことを要せよと云ひたると一(い)つにて、放心を求めよ、引きとめて一(ひと)所(ところ)に置くなと申す義にて候。
又具不退転(たいてんせざるをそなえよ)と云ふ。是(これ)も中峰和尚の言葉なり。退(たい)転(てん)せずに替はらぬ心を持てと云ふ義なり。人たゞ一度二度は能く行けども、又つかれて常に無い裡(うち)に退転せぬやうなる心を持てと申す事にて候。
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