#190 メンタルクリニックが消えていく?~令和8年度改定で取り残される患者たち
09:14
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先日、あるお客さんがお店のカウンターに座るなり、こんなことをおっしゃいました。
「フィッシュさん、私、仕事ができなくなるかもしれない」
ㅤㅤ
この方は、児童精神科医。子どもの精神医療に長年取り組んでいらっしゃる先生です。驚いて「何があったんですか?」と聞くと、こんなことを教えてくださいました。
ㅤㅤ
ーーーーーーー
2026年2月、中央社会保険医療協議会(中医協)が、令和8年度の診療報酬改定の答申を公表しました。
話題になっているのは、「注13」と呼ばれる新規定です。
令和8年度の改定では、非精神保健指定医(指定医の資格を持たない医師)による通院・在宅精神療法に対して、新たな減算規定が設けられました。厚生労働省の答申資料にはこう記されています。
ㅤㅤ
「非精神保健指定医による通院・在宅精神療法において……所定点数の100分の60に相当する点数を算定する」
(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 Ⅲ-5-4 質の高い精神医療の評価⑪」答申資料)
ㅤㅤ
一定の施設基準を満たさなければ、診療報酬が4割カットになるということです。
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減算を免れるには「施設基準」の届け出が必要ですが、その要件が問題です。
施設の要件(いずれかを満たすこと)は、病院の多くが当てはまる可能性があり、まだ現実的。
問題は医師の要件(両方を満たすこと)です。
ㅤㅤ
令和8年5月31日時点において、精神医療に20年以上従事していること
過去1年間に医療観察法対象者を診察している、または保健所・児童相談所の嘱託医、障害支援区分の審査会委員など行政機関の業務を行っていること
ㅤㅤ
「精神医療に20年以上」かつ「行政機関の業務も担っている」この2条件を同時に満たす非指定医は、ほぼ存在しないそうです。
ーーーーーーー
ㅤㅤ
背景には、精神療法を行うクリニックの急増があります。
トレーニングを受けていない医師による通院精神療法の増加が問題視され「昨日まで美容皮膚科だったところが、今日から精神科」というようなクリニックが実際に存在し、質の低いクリニックを淘汰するための改正だという説明がされています。
その意図は理解できますが、そのしわ寄せが、全く別の場所に来ることになります。
ㅤㅤ
私にこの話を教えてくださった先生は、もともと小児科医でした。子どもたちを診る中で、精神医療の必要性を痛感し、児童精神科医になった方です。
このような先生も4割減算の対象になってしまう。
真剣に子どもの精神医療に取り組んできた先生たちからすると、巻き添えと言えるかもしれません。
ㅤㅤ
医師や経営者の問題として語られがちなこの改定ですが、最も深刻な影響を受けるのは患者さんです。
精神科・心療内科の初診待ちは深刻な状況で、予約の電話をかけたら2〜3カ月先が当たり前、というケースも珍しくありません。
もともと病院の数も医師の数も、需要に対して供給が十分ではない。そして構造的な問題もあります。初診患者の診療時間は再診の3〜5倍かかります。3〜5人の既存患者が卒業してはじめて、1人の初診を受けられるという状況になっているのです。
ㅤㅤ
この逼迫した状況に、今回の改定が追い打ちをかけます。
ㅤㅤ
① かかりつけの先生が突然いなくなる
長年通っていたクリニックが閉院・縮小に追い込まれると、患者さんは別の医療機関を一から探し直さなければなりません。長い時間をかけて築いてきた治療関係が、制度の都合で断ち切られることは、起きてはならないことだと思います。
ㅤㅤ
② 初診待ちがさらに長期化する
非指定医クリニックが受け入れていた患者さんが指定医クリニックに集中すれば、すでに逼迫している初診枠はさらに縮小します。「2カ月待ち」が「半年待ち」になる未来は、あり得る話だと思います。
ㅤㅤ
③ 地方では「受診できる場所」がなくなる
都市部では指定医クリニックへの移行も不可能ではないかもしれません。でも地方では、精神科医そのものが不足しています。非指定医クリニックが撤退すれば、文字通り「受診できる場所がない」医療空白が地方に広がる可能性があります。
ㅤㅤ
先生はこうもおっしゃっていました。
「指定を取りに行かなくてはならないだろう。ただ、そうなると、今の患者さんを見ることができなくなる。少なくとも1年半くらいは」
その間の患者さんのことを、本当に心配していらっしゃいました。
6月からの施行まで、もう3カ月を切っています。移行期間があれば徐々に調整もできるでしょうが、そんな猶予はありません。
ㅤㅤ
医療の質を担保することは重要ですが、その先に生じる患者さんへの影響が、今の議論では軽く扱われているように感じます。
ㅤㅤ
私の専門ではありませんが、クリニックに通っている子どもたちのことを思うと、なんとも言えない気持ちです。
皆さんは、どのようにお感じになるでしょうか。
「フィッシュさん、私、仕事ができなくなるかもしれない」
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この方は、児童精神科医。子どもの精神医療に長年取り組んでいらっしゃる先生です。驚いて「何があったんですか?」と聞くと、こんなことを教えてくださいました。
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2026年2月、中央社会保険医療協議会(中医協)が、令和8年度の診療報酬改定の答申を公表しました。
話題になっているのは、「注13」と呼ばれる新規定です。
令和8年度の改定では、非精神保健指定医(指定医の資格を持たない医師)による通院・在宅精神療法に対して、新たな減算規定が設けられました。厚生労働省の答申資料にはこう記されています。
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「非精神保健指定医による通院・在宅精神療法において……所定点数の100分の60に相当する点数を算定する」
(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 Ⅲ-5-4 質の高い精神医療の評価⑪」答申資料)
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一定の施設基準を満たさなければ、診療報酬が4割カットになるということです。
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減算を免れるには「施設基準」の届け出が必要ですが、その要件が問題です。
施設の要件(いずれかを満たすこと)は、病院の多くが当てはまる可能性があり、まだ現実的。
問題は医師の要件(両方を満たすこと)です。
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令和8年5月31日時点において、精神医療に20年以上従事していること
過去1年間に医療観察法対象者を診察している、または保健所・児童相談所の嘱託医、障害支援区分の審査会委員など行政機関の業務を行っていること
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「精神医療に20年以上」かつ「行政機関の業務も担っている」この2条件を同時に満たす非指定医は、ほぼ存在しないそうです。
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背景には、精神療法を行うクリニックの急増があります。
トレーニングを受けていない医師による通院精神療法の増加が問題視され「昨日まで美容皮膚科だったところが、今日から精神科」というようなクリニックが実際に存在し、質の低いクリニックを淘汰するための改正だという説明がされています。
その意図は理解できますが、そのしわ寄せが、全く別の場所に来ることになります。
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私にこの話を教えてくださった先生は、もともと小児科医でした。子どもたちを診る中で、精神医療の必要性を痛感し、児童精神科医になった方です。
このような先生も4割減算の対象になってしまう。
真剣に子どもの精神医療に取り組んできた先生たちからすると、巻き添えと言えるかもしれません。
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医師や経営者の問題として語られがちなこの改定ですが、最も深刻な影響を受けるのは患者さんです。
精神科・心療内科の初診待ちは深刻な状況で、予約の電話をかけたら2〜3カ月先が当たり前、というケースも珍しくありません。
もともと病院の数も医師の数も、需要に対して供給が十分ではない。そして構造的な問題もあります。初診患者の診療時間は再診の3〜5倍かかります。3〜5人の既存患者が卒業してはじめて、1人の初診を受けられるという状況になっているのです。
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この逼迫した状況に、今回の改定が追い打ちをかけます。
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① かかりつけの先生が突然いなくなる
長年通っていたクリニックが閉院・縮小に追い込まれると、患者さんは別の医療機関を一から探し直さなければなりません。長い時間をかけて築いてきた治療関係が、制度の都合で断ち切られることは、起きてはならないことだと思います。
ㅤㅤ
② 初診待ちがさらに長期化する
非指定医クリニックが受け入れていた患者さんが指定医クリニックに集中すれば、すでに逼迫している初診枠はさらに縮小します。「2カ月待ち」が「半年待ち」になる未来は、あり得る話だと思います。
ㅤㅤ
③ 地方では「受診できる場所」がなくなる
都市部では指定医クリニックへの移行も不可能ではないかもしれません。でも地方では、精神科医そのものが不足しています。非指定医クリニックが撤退すれば、文字通り「受診できる場所がない」医療空白が地方に広がる可能性があります。
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先生はこうもおっしゃっていました。
「指定を取りに行かなくてはならないだろう。ただ、そうなると、今の患者さんを見ることができなくなる。少なくとも1年半くらいは」
その間の患者さんのことを、本当に心配していらっしゃいました。
6月からの施行まで、もう3カ月を切っています。移行期間があれば徐々に調整もできるでしょうが、そんな猶予はありません。
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医療の質を担保することは重要ですが、その先に生じる患者さんへの影響が、今の議論では軽く扱われているように感じます。
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私の専門ではありませんが、クリニックに通っている子どもたちのことを思うと、なんとも言えない気持ちです。
皆さんは、どのようにお感じになるでしょうか。
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