#281 NPO法人フェアスタート 永岡鉄平さん~生まれや育ちに関わらずすべての若者が活躍できる社会をつくる
38:09
57再生
横浜を拠点とする、株式会社フェアスタート/NPO法人フェアスタートサポート代表の永岡鉄平さんにインタビューしました。
フェアスタートは、児童養護施設や里親家庭出身の若者を中心に人材紹介を行う株式会社と、キャリア教育や就職斡旋後のアフターフォローを担うNPO法人フェアスタートサポートの二枚看板で活動している団体です。
ㅤㅤ
永岡さんは1981年横浜市生まれ。明治学院大学卒業後、リクルートや人材紹介会社で働き、人材業界のノウハウを一通り身につけました。30歳までに起業すると決めて29歳で退職し、一年間かけて子どもや教育に関わるNPOや勉強会を訪ね歩いたといいます。
ㅤㅤ
運命の出会いは2010年、東京・立教大学で開かれた「子どもの貧困」をテーマにしたシンポジウムでした。児童養護施設出身の当事者団体の代表の発表で18歳で施設を出た後、多くの若者がワーキングプアに陥っている現実を知り、永岡さんは「なんじゃこりゃ」と衝撃を受けます。
ㅤㅤ
自身の家庭環境に社会的養護の関わりはありませんでしたが、それでもどこか「わかる気がした」といいます。高校時代に入り浸っていたゲームセンターにいた素性の知れない若者たち、大学時代に新宿歌舞伎町の夜の世界で出会った人たち。当時は意識していなかったけれど、思い返せば、親と距離のある若者には何人も出会っていたと。
ㅤㅤ
そこから先の行動は早かった。シンポジウムの翌週には鎌倉児童ホームに飛び込み、ボランティアを申し出ました。2011年8月に株式会社フェアスタートを設立し、人材紹介というビジネスモデルを児童養護施設出身者向けに適用。施設を出た若者を企業に繋ぎ、成功報酬を得るという事業をはじめました。
ㅤㅤ
しかし、やってみて分かったことがありました。子どもたちに「何がしたいの?」と聞いても、具体的な答えが返ってこない。人材紹介は対症療法にはなっても根本の処方箋にはなりませんでした。高校を卒業するまでの間に、世の中にどんな仕事があるのかを知る機会も、ロールモデルに出会う機会もないまま社会に出る。いわば井の中の蛙のまま、タイムリミットが来て放り出される、そこにこそ本当の課題があると気づきました。
ㅤㅤ
だったら中学生や高校生のうちから、いろいろな仕事や大人に触れる機会を作ろう。そのためには別の器が必要だと、2013年1月、NPO法人フェアスタートサポートを設立しました。ㅤ
具体的には、株式会社フェアスタートが担うのは、児童養護施設や里親家庭出身の若者を対象にした人材紹介と、若手障がい者向けの人材紹介。
一方のNPO法人フェアスタートサポートは、施設で暮らす子どもたちへのキャリア教育支援、就職のあっせん、そして就職後の定着サポートを担っています。施設訪問や企業見学、就労体験といった機会提供を積み重ねてきた結果、2026年6月末時点で、個別就職相談支援は962名、就職実績は125名になります。
この10年間(2016〜2025年度)にフェアスタートがコーディネートした高卒新卒者の1年以内離職率は平均18%。東京都の調査による都内施設出身者全体の離職率(約43%)と比べると、その差は歴然としています。利用施設は児童養護施設だけでなく、自立援助ホームや母子生活支援施設、児童相談所なども含め、累計342施設、里親・ファミリーホームは43家庭にのぼります。
ㅤㅤ
またフェアスタートは『エール』という情報誌を発行しています。施設を巣立った若者たちの生き様や、彼ら彼女らを支える人々の取り組みを紹介する冊子で、基本的には賛助会員や児童養護施設など社会的養護に関わる人しか読むことができません。デザイン的にもすぐれており、ふだん表に出てこない若者たちのリアルな声を、着実に届け続けている媒体です。
ㅤㅤ
永岡さんが今、力を入れているのは全国展開。とはいえフェアスタートがすべてを直接担う必要はないと考えています。
全国各地には、地域の子どもたちのために「何かやりたい」と手を挙げてくれる、おせっかいな中小企業経営者が、思っている以上にいる。フェアスタートの役割は、まず児童養護施設が抱える課題を発信すること。それに共感してくれた経営者を一人ひとり見つけ出し、地域の児童養護施設に直接繋いだら、あとは一歩引いて寄り添います。
ㅤㅤ
取材時には愛媛で200名規模のイベントの傍らで小学生12人が企業2社を訪ねる企画を、山口県防府では子ども60人と企業8社によるプチ職業体験会を実施するなど、種をまく機会も並行してつくっていると伺いました。
福岡でも、中小企業家同友会や経営実践研究会といった経営者コミュニティを入り口に、介護福祉、法律、美容業など、業種を超えた「おせっかい」が集まりつつあります。北九州と福岡市の中間にある児童養護施設では、秋の地域祭りに子どもたちと一緒に出店する企画も進行中だとか。
ㅤㅤ
自分たちが直接、受益者である子どもたち一人ひとりを支援することにこだわっているわけではない、と永岡さんは言います。大事なのは課題解決そのものであって、そのための一番良い処方箋を必ずしもフェアスタート自身が持っている必要はないのだと。
「地域の互助や共助を促す、いわば触媒になること。それこそがNPOの真骨頂じゃないかと思っているんです」。
ㅤㅤ
この活動をコンサルティングのように仕立て、関わる企業から手数料をもらうというビジネスモデルもつくれるかもしれません。しかしあえてそうせず、連携の仕組みが現場で勝手に生まれていくことがむしろ健全だと。繋いだところで手を引き、対価は受け取らない、いわばビジネスとしての見返りが生まれないこの一見非合理的なやり方を、永岡さんはあえて「矛盾」と呼びます。
ㅤㅤ
「そういう部分の矛盾に、向き合えるのもNPOの良さかなと思っていて」。現在はその分の原資を、赤い羽根共同募金をはじめとした助成金でまかなっています。
永岡さんは、これを苦労とは捉えておらず「誰もやってないことをやるのが面白いんですよね」。
ビジネスとしての最適解を追いかけるより、生まれや育ちに関わらずすべての若者が活躍できる社会をつくるという公正な、あるべき自然な状態に近づけていく。そのこと自体を、永岡さんは楽しんでいるように見えました。
ㅤㅤ
今回のインタビューは、ラオスでものづくりを通して障害のある女性の自立を支援するNPO法人Support for Woman's Happiness
代表の石原ゆり奈さんのご紹介で実現しました。素敵なご縁をありがとうございます。
ㅤㅤ
フェアスタートの活動やエールの購読、賛助会員については、公式サイトからご覧ください。
また活動に協力いただける、全国の企業からのご連絡もお待ちしております。
https://fair-start.co.jp/
フェアスタートは、児童養護施設や里親家庭出身の若者を中心に人材紹介を行う株式会社と、キャリア教育や就職斡旋後のアフターフォローを担うNPO法人フェアスタートサポートの二枚看板で活動している団体です。
ㅤㅤ
永岡さんは1981年横浜市生まれ。明治学院大学卒業後、リクルートや人材紹介会社で働き、人材業界のノウハウを一通り身につけました。30歳までに起業すると決めて29歳で退職し、一年間かけて子どもや教育に関わるNPOや勉強会を訪ね歩いたといいます。
ㅤㅤ
運命の出会いは2010年、東京・立教大学で開かれた「子どもの貧困」をテーマにしたシンポジウムでした。児童養護施設出身の当事者団体の代表の発表で18歳で施設を出た後、多くの若者がワーキングプアに陥っている現実を知り、永岡さんは「なんじゃこりゃ」と衝撃を受けます。
ㅤㅤ
自身の家庭環境に社会的養護の関わりはありませんでしたが、それでもどこか「わかる気がした」といいます。高校時代に入り浸っていたゲームセンターにいた素性の知れない若者たち、大学時代に新宿歌舞伎町の夜の世界で出会った人たち。当時は意識していなかったけれど、思い返せば、親と距離のある若者には何人も出会っていたと。
ㅤㅤ
そこから先の行動は早かった。シンポジウムの翌週には鎌倉児童ホームに飛び込み、ボランティアを申し出ました。2011年8月に株式会社フェアスタートを設立し、人材紹介というビジネスモデルを児童養護施設出身者向けに適用。施設を出た若者を企業に繋ぎ、成功報酬を得るという事業をはじめました。
ㅤㅤ
しかし、やってみて分かったことがありました。子どもたちに「何がしたいの?」と聞いても、具体的な答えが返ってこない。人材紹介は対症療法にはなっても根本の処方箋にはなりませんでした。高校を卒業するまでの間に、世の中にどんな仕事があるのかを知る機会も、ロールモデルに出会う機会もないまま社会に出る。いわば井の中の蛙のまま、タイムリミットが来て放り出される、そこにこそ本当の課題があると気づきました。
ㅤㅤ
だったら中学生や高校生のうちから、いろいろな仕事や大人に触れる機会を作ろう。そのためには別の器が必要だと、2013年1月、NPO法人フェアスタートサポートを設立しました。ㅤ
具体的には、株式会社フェアスタートが担うのは、児童養護施設や里親家庭出身の若者を対象にした人材紹介と、若手障がい者向けの人材紹介。
一方のNPO法人フェアスタートサポートは、施設で暮らす子どもたちへのキャリア教育支援、就職のあっせん、そして就職後の定着サポートを担っています。施設訪問や企業見学、就労体験といった機会提供を積み重ねてきた結果、2026年6月末時点で、個別就職相談支援は962名、就職実績は125名になります。
この10年間(2016〜2025年度)にフェアスタートがコーディネートした高卒新卒者の1年以内離職率は平均18%。東京都の調査による都内施設出身者全体の離職率(約43%)と比べると、その差は歴然としています。利用施設は児童養護施設だけでなく、自立援助ホームや母子生活支援施設、児童相談所なども含め、累計342施設、里親・ファミリーホームは43家庭にのぼります。
ㅤㅤ
またフェアスタートは『エール』という情報誌を発行しています。施設を巣立った若者たちの生き様や、彼ら彼女らを支える人々の取り組みを紹介する冊子で、基本的には賛助会員や児童養護施設など社会的養護に関わる人しか読むことができません。デザイン的にもすぐれており、ふだん表に出てこない若者たちのリアルな声を、着実に届け続けている媒体です。
ㅤㅤ
永岡さんが今、力を入れているのは全国展開。とはいえフェアスタートがすべてを直接担う必要はないと考えています。
全国各地には、地域の子どもたちのために「何かやりたい」と手を挙げてくれる、おせっかいな中小企業経営者が、思っている以上にいる。フェアスタートの役割は、まず児童養護施設が抱える課題を発信すること。それに共感してくれた経営者を一人ひとり見つけ出し、地域の児童養護施設に直接繋いだら、あとは一歩引いて寄り添います。
ㅤㅤ
取材時には愛媛で200名規模のイベントの傍らで小学生12人が企業2社を訪ねる企画を、山口県防府では子ども60人と企業8社によるプチ職業体験会を実施するなど、種をまく機会も並行してつくっていると伺いました。
福岡でも、中小企業家同友会や経営実践研究会といった経営者コミュニティを入り口に、介護福祉、法律、美容業など、業種を超えた「おせっかい」が集まりつつあります。北九州と福岡市の中間にある児童養護施設では、秋の地域祭りに子どもたちと一緒に出店する企画も進行中だとか。
ㅤㅤ
自分たちが直接、受益者である子どもたち一人ひとりを支援することにこだわっているわけではない、と永岡さんは言います。大事なのは課題解決そのものであって、そのための一番良い処方箋を必ずしもフェアスタート自身が持っている必要はないのだと。
「地域の互助や共助を促す、いわば触媒になること。それこそがNPOの真骨頂じゃないかと思っているんです」。
ㅤㅤ
この活動をコンサルティングのように仕立て、関わる企業から手数料をもらうというビジネスモデルもつくれるかもしれません。しかしあえてそうせず、連携の仕組みが現場で勝手に生まれていくことがむしろ健全だと。繋いだところで手を引き、対価は受け取らない、いわばビジネスとしての見返りが生まれないこの一見非合理的なやり方を、永岡さんはあえて「矛盾」と呼びます。
ㅤㅤ
「そういう部分の矛盾に、向き合えるのもNPOの良さかなと思っていて」。現在はその分の原資を、赤い羽根共同募金をはじめとした助成金でまかなっています。
永岡さんは、これを苦労とは捉えておらず「誰もやってないことをやるのが面白いんですよね」。
ビジネスとしての最適解を追いかけるより、生まれや育ちに関わらずすべての若者が活躍できる社会をつくるという公正な、あるべき自然な状態に近づけていく。そのこと自体を、永岡さんは楽しんでいるように見えました。
ㅤㅤ
今回のインタビューは、ラオスでものづくりを通して障害のある女性の自立を支援するNPO法人Support for Woman's Happiness
代表の石原ゆり奈さんのご紹介で実現しました。素敵なご縁をありがとうございます。
ㅤㅤ
フェアスタートの活動やエールの購読、賛助会員については、公式サイトからご覧ください。
また活動に協力いただける、全国の企業からのご連絡もお待ちしております。
https://fair-start.co.jp/
昼スナママ・フィッシュ明子の役にたたなくてもいいラジオ
フィッシュ 明子
- 00:161.
タイトルコール
- 08:532.
「親を頼れない若者」の課題解決に取り組む
- 28:183.
永岡鉄平さんインタビュー
- 00:434.
フェアスタートの活動やエールの購読、賛助会員についてはこちら
コメント

感想・質問・応援メッセージを書こう