#280 NPO法人AlonAlon 農福連携で障害者の経済的自立を実現する
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千葉県冨津市にあるNPO法人AlonAlonを訪ねました。
https://alonalon.or.jp/
ここは知的・精神障害のある人たちが、胡蝶蘭とマンゴーの栽培を通して技術を身につけ、企業への就職までを見据えて働ける場所です。案内してくださったのは、施設の立ち上げメンバーである大澤剛志さん。
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厚生労働省の調査による就労継続支援B型事業所の平均工賃は、令和6年度で全国平均24,141円、千葉県平均23,646円。そんな中、AlonAlonでは令和7年度の月額平均工賃が63,587円で、令和8年6月には94,889円という単月過去最高を記録しています。
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仕事に胡蝶蘭の栽培を選んだ理由は2つあります。
1つ目は、企業間の慶弔で使われる胡蝶蘭は値崩れしにくく付加価値の高い花であること。
契約農家からAlonAlonが仕入れる苗は1株あたり1,000円ほど、それを半年かけて育てて1万円で販売すれば、粗利は9,000円という利益率の高さです。
2つ目は、法人理事長の那部智史さん自身の経験です。重度の知的障害者である息子さんを育てる中で、将来の所得をどう守るかを考え続けてきました。経営者として取引先との慶弔でたびたび胡蝶蘭をやりとりしていた経験から、この選択にたどり着いたのでした。
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■季節や決算のリズムを映す胡蝶蘭
胡蝶蘭は20度から25度くらいの環境を好む植物で、夏場は温室を閉めきっても30度近くまで上がることも。大澤さんいわく、温度と湿度の管理がいちばん難しいポイントだそうです。
年間で2万株の苗を扱っており、繁忙期は入学や開店祝いが重なる4月、株主総会が集中する6〜7月、そして半期決算のタイミングにあたる10〜11月。企業が動くタイミングに合わせて、胡蝶蘭の需要も変わります。
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■技術継承の流れが自然と生まれている
出荷間近の鉢がずらりと並んだスペースに案内していただきました。花はすべて同じ方向を向いており、正面から見たときにいちばん美しく見えるよう、一本ずつ向きを確かめながら支柱に留めていく作業は、想像していた以上に繊細です。花の高さも、茎の硬さも、うねり方も一つひとつ違う。マニュアルで「この順番でクリップを留める」ことは教えられても、最後の微調整は人の目と手に委ねられています。
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この感覚をつかめるようになるまでには相応の訓練が必要。実際、大澤さん自身も提携農家のもとで半年間修業をしてから現場に立ちました。立ち上げ当初はすべてが手探りで、軌道に乗るまでは大変な日々が続いたといいますが、一つひとつクリアしていくうちに、今度は経験を積んだメンバーが後輩に教える、という継承の流れが自然と生まれているといいます。
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■ 働く時間、工賃、そしてその先の就職
現場で働くメンバーは、朝9時半から15時半まで、お昼休憩をはさんで実働5時間ほど。
AlonAlonが大事にしているのは「技術を身につけた人を、企業の戦力として送り出す」という発想です。パートナー制度と呼ばれる仕組みがあり、作業技術が安定して身についたメンバーを、胡蝶蘭をたくさん使う企業に紹介し、温室のベンチの一角を貸し出す契約を結びます。企業側は苗を買い、自社の社員として雇ったメンバーにそのベンチで育ててもらうというもの。福祉施設から一般就労へ、しかも同じ仕事内容のまま移行できるという仕組みで、これまでに多数、実績を積んできました。
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花を仕立てる作業には、ハサミなどの道具を使う細かい仕事もあり、そうした技術を積んだメンバーほど就職につながりやすい傾向があります。一般企業に就職すると、それまで培った技術がまったく生かせない仕事(メールの仕分けや清掃など)に就くケースも少なくないといいますが、AlonAlonの仕組みではそのまま花づくりの仕事を続けられるというわけです。
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■ マンゴーという新しい挑戦
胡蝶蘭だけでなく、近年はマンゴー栽培にも力を入れています。きっかけは台風被害。温室が数日間停電し、当時育てていた胡蝶蘭の苗が大きなダメージを受けたことがありました。一つの作物に頼るリスクを痛感し、新たな柱として選ばれたのがマンゴーでした。
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栽培しているのは、じっくり手をかけずとも比較的まっすぐ育つ品種や、甘みと酸味のバランスが良いとされる品種など。国産のマンゴーは早摘みされた海外産と違い、アレルギー反応が出にくいそう。ちなみに1玉5000円前後という価格は、企業への贈答用や、株主総会・お祝い事の記念品としての需要を想定しています。
取引先企業がマンゴーを福利厚生や返礼品として使う「等価交換」のような仕組みも生まれているそうで、花よりも間口が広く、誰でも食べられるフルーツだからこそ広がる可能性があるのです。
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■ 地域に開かれた場所として
利用者の見学や体験の受け入れはいつでもウェルカム。1日だけの体験から、1週間、2週間とじっくり関わってみることもでき、「合えば」そのまま働き始めることもできます。
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そしてこの仕組みを自分たちだけで抱え込もうとはしていません。同じような取り組みを他の地域でも広げたいという思いから、自分の地域で同じような事業を始めたいと考える経営者や福祉関係者の視察も多く受け入れています。苗の調達から資材の調達まで一貫してサポートする体制があり、実際に九州など各地で、この仕組みをもとにした施設が生まれています。地元に根づいた小さな農家や、後継者不足に悩む農園と福祉施設が手を組む構想も、少しずつ動き出しています。
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■将来にむけた課題
組織の規模は急速に拡大しているものの「仕事の展開に応じてスタッフを採用する労働集約型の事業だと、増えた利益を配分することになるため、胡蝶蘭、マンゴー、ホテル清掃等行の中で足りないところをお互いに補填し合って、スタッフの賃金アップ、幸せに繋げていく方向にチャレンジしています」と大澤さん。
今後の課題は工賃を得たメンバーが、そのお金をどう使うかのサポート。金銭的な自立という意味では、多くのメンバーが最低賃金以上の工賃を得られるようになってきているものの、稼いだお金を自分の人生を豊かにするために使う、その先の伴走がまだ十分ではないといいます。
グループホームでの買い物や外出の付き添いひとつとっても、人手が足りず、遠くへ出かける機会にはなかなかつながっていない。「みんなでディズニーランドに行ってみる」ような、お金の使い方に焦点を当てた支援を、これから育てていきたいとのことでした。
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福祉の理想と、ビジネスとしての合理性。その両方を本気で追いかけようとするほど、難しさに直面します。AlonAlonの現場は、その緊張関係を抱えながら、それでも「急ぎすぎない」バランスを探り続けているように見えました。
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今回の取材はラオスでの女性や障害者の自立支援・雇用創出を行っている日本のNPO法人Support for Woman's Happinessの石原ゆり奈さん、サポーターの池下カナさんに助けていただきました。
大澤さん、大変丁寧にご対応いただきありがとうございました。
https://alonalon.or.jp/
ここは知的・精神障害のある人たちが、胡蝶蘭とマンゴーの栽培を通して技術を身につけ、企業への就職までを見据えて働ける場所です。案内してくださったのは、施設の立ち上げメンバーである大澤剛志さん。
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厚生労働省の調査による就労継続支援B型事業所の平均工賃は、令和6年度で全国平均24,141円、千葉県平均23,646円。そんな中、AlonAlonでは令和7年度の月額平均工賃が63,587円で、令和8年6月には94,889円という単月過去最高を記録しています。
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仕事に胡蝶蘭の栽培を選んだ理由は2つあります。
1つ目は、企業間の慶弔で使われる胡蝶蘭は値崩れしにくく付加価値の高い花であること。
契約農家からAlonAlonが仕入れる苗は1株あたり1,000円ほど、それを半年かけて育てて1万円で販売すれば、粗利は9,000円という利益率の高さです。
2つ目は、法人理事長の那部智史さん自身の経験です。重度の知的障害者である息子さんを育てる中で、将来の所得をどう守るかを考え続けてきました。経営者として取引先との慶弔でたびたび胡蝶蘭をやりとりしていた経験から、この選択にたどり着いたのでした。
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■季節や決算のリズムを映す胡蝶蘭
胡蝶蘭は20度から25度くらいの環境を好む植物で、夏場は温室を閉めきっても30度近くまで上がることも。大澤さんいわく、温度と湿度の管理がいちばん難しいポイントだそうです。
年間で2万株の苗を扱っており、繁忙期は入学や開店祝いが重なる4月、株主総会が集中する6〜7月、そして半期決算のタイミングにあたる10〜11月。企業が動くタイミングに合わせて、胡蝶蘭の需要も変わります。
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■技術継承の流れが自然と生まれている
出荷間近の鉢がずらりと並んだスペースに案内していただきました。花はすべて同じ方向を向いており、正面から見たときにいちばん美しく見えるよう、一本ずつ向きを確かめながら支柱に留めていく作業は、想像していた以上に繊細です。花の高さも、茎の硬さも、うねり方も一つひとつ違う。マニュアルで「この順番でクリップを留める」ことは教えられても、最後の微調整は人の目と手に委ねられています。
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この感覚をつかめるようになるまでには相応の訓練が必要。実際、大澤さん自身も提携農家のもとで半年間修業をしてから現場に立ちました。立ち上げ当初はすべてが手探りで、軌道に乗るまでは大変な日々が続いたといいますが、一つひとつクリアしていくうちに、今度は経験を積んだメンバーが後輩に教える、という継承の流れが自然と生まれているといいます。
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■ 働く時間、工賃、そしてその先の就職
現場で働くメンバーは、朝9時半から15時半まで、お昼休憩をはさんで実働5時間ほど。
AlonAlonが大事にしているのは「技術を身につけた人を、企業の戦力として送り出す」という発想です。パートナー制度と呼ばれる仕組みがあり、作業技術が安定して身についたメンバーを、胡蝶蘭をたくさん使う企業に紹介し、温室のベンチの一角を貸し出す契約を結びます。企業側は苗を買い、自社の社員として雇ったメンバーにそのベンチで育ててもらうというもの。福祉施設から一般就労へ、しかも同じ仕事内容のまま移行できるという仕組みで、これまでに多数、実績を積んできました。
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花を仕立てる作業には、ハサミなどの道具を使う細かい仕事もあり、そうした技術を積んだメンバーほど就職につながりやすい傾向があります。一般企業に就職すると、それまで培った技術がまったく生かせない仕事(メールの仕分けや清掃など)に就くケースも少なくないといいますが、AlonAlonの仕組みではそのまま花づくりの仕事を続けられるというわけです。
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■ マンゴーという新しい挑戦
胡蝶蘭だけでなく、近年はマンゴー栽培にも力を入れています。きっかけは台風被害。温室が数日間停電し、当時育てていた胡蝶蘭の苗が大きなダメージを受けたことがありました。一つの作物に頼るリスクを痛感し、新たな柱として選ばれたのがマンゴーでした。
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栽培しているのは、じっくり手をかけずとも比較的まっすぐ育つ品種や、甘みと酸味のバランスが良いとされる品種など。国産のマンゴーは早摘みされた海外産と違い、アレルギー反応が出にくいそう。ちなみに1玉5000円前後という価格は、企業への贈答用や、株主総会・お祝い事の記念品としての需要を想定しています。
取引先企業がマンゴーを福利厚生や返礼品として使う「等価交換」のような仕組みも生まれているそうで、花よりも間口が広く、誰でも食べられるフルーツだからこそ広がる可能性があるのです。
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■ 地域に開かれた場所として
利用者の見学や体験の受け入れはいつでもウェルカム。1日だけの体験から、1週間、2週間とじっくり関わってみることもでき、「合えば」そのまま働き始めることもできます。
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そしてこの仕組みを自分たちだけで抱え込もうとはしていません。同じような取り組みを他の地域でも広げたいという思いから、自分の地域で同じような事業を始めたいと考える経営者や福祉関係者の視察も多く受け入れています。苗の調達から資材の調達まで一貫してサポートする体制があり、実際に九州など各地で、この仕組みをもとにした施設が生まれています。地元に根づいた小さな農家や、後継者不足に悩む農園と福祉施設が手を組む構想も、少しずつ動き出しています。
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■将来にむけた課題
組織の規模は急速に拡大しているものの「仕事の展開に応じてスタッフを採用する労働集約型の事業だと、増えた利益を配分することになるため、胡蝶蘭、マンゴー、ホテル清掃等行の中で足りないところをお互いに補填し合って、スタッフの賃金アップ、幸せに繋げていく方向にチャレンジしています」と大澤さん。
今後の課題は工賃を得たメンバーが、そのお金をどう使うかのサポート。金銭的な自立という意味では、多くのメンバーが最低賃金以上の工賃を得られるようになってきているものの、稼いだお金を自分の人生を豊かにするために使う、その先の伴走がまだ十分ではないといいます。
グループホームでの買い物や外出の付き添いひとつとっても、人手が足りず、遠くへ出かける機会にはなかなかつながっていない。「みんなでディズニーランドに行ってみる」ような、お金の使い方に焦点を当てた支援を、これから育てていきたいとのことでした。
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福祉の理想と、ビジネスとしての合理性。その両方を本気で追いかけようとするほど、難しさに直面します。AlonAlonの現場は、その緊張関係を抱えながら、それでも「急ぎすぎない」バランスを探り続けているように見えました。
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今回の取材はラオスでの女性や障害者の自立支援・雇用創出を行っている日本のNPO法人Support for Woman's Happinessの石原ゆり奈さん、サポーターの池下カナさんに助けていただきました。
大澤さん、大変丁寧にご対応いただきありがとうございました。
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フィッシュ 明子
- 00:161.
タイトルコール
- 08:242.
工賃は全国平均の約2.6〜2.7倍
- 13:303.
大澤剛志さんインタビュー
- 01:014.
福祉の常識を覆す発想で挑戦を続ける
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