2025年6月
#020 沢庵和尚『不動智神妙録』:「人も空」「我も空」
17:40
貴殿の兵法に当て申し候はゞ、太刀を打つ手に心を止めず、一切打つ手を忘れて打つて人を切れ、人に心を置くな。人も空、我も空、打つ手も打つ太刀も空と心得、空に心を取られまひぞ。
鎌倉の無学禅師、大唐の乱に捕へられて、切らるゝ時に、電光影裏斬春風(でんこうえいりにしゅんぷうをきる)。といふ偈(げ)を作りたれば、太刀をば捨てて走りたると也。
無学の心は、太刀をひらりと振上げたるは、稲妻の如く電光のぴかりとする間(あいだ)、何の心も何の念もないぞ。打つ刀も心はなし。切る人も心はなし。切らるゝ我も心はなし。切る人も空、太刀も空、打たるゝ我も空なれば、打つ人も人にあらず。打つ太刀も太刀にあらず。打たるゝ我も稲妻のひかりとする内に、春の空を吹く風を切る如くなり。一切止(とどま)らぬ心なり。風を切ったのは、太刀に覚えもあるまいぞ。かやうに心を忘れ切って、万(よろず)の事をするが、上手の位なり。舞(まい)を舞(ま)へば、手に扇(おうぎ)を取り、足を踏む。其(その)手足をよくせむ、舞を能(よ)く舞はむと思ひて、忘れきらねば、上手とは申されず候。 未(いま)だ手足に心(こころ)止(とどま)らば、業(わざ)は皆(みな)面(おも)白(しろ)かるまじ。悉(しっ)皆(かい)心(こころ)を捨てきらずして、する所(しょ)作(さ)は皆(みな)悪(あく)敷(しく)候(そろ)。
鎌倉の無学禅師、大唐の乱に捕へられて、切らるゝ時に、電光影裏斬春風(でんこうえいりにしゅんぷうをきる)。といふ偈(げ)を作りたれば、太刀をば捨てて走りたると也。
無学の心は、太刀をひらりと振上げたるは、稲妻の如く電光のぴかりとする間(あいだ)、何の心も何の念もないぞ。打つ刀も心はなし。切る人も心はなし。切らるゝ我も心はなし。切る人も空、太刀も空、打たるゝ我も空なれば、打つ人も人にあらず。打つ太刀も太刀にあらず。打たるゝ我も稲妻のひかりとする内に、春の空を吹く風を切る如くなり。一切止(とどま)らぬ心なり。風を切ったのは、太刀に覚えもあるまいぞ。かやうに心を忘れ切って、万(よろず)の事をするが、上手の位なり。舞(まい)を舞(ま)へば、手に扇(おうぎ)を取り、足を踏む。其(その)手足をよくせむ、舞を能(よ)く舞はむと思ひて、忘れきらねば、上手とは申されず候。 未(いま)だ手足に心(こころ)止(とどま)らば、業(わざ)は皆(みな)面(おも)白(しろ)かるまじ。悉(しっ)皆(かい)心(こころ)を捨てきらずして、する所(しょ)作(さ)は皆(みな)悪(あく)敷(しく)候(そろ)。
禅僧と考える...日々の暮らしから人生まで
恵林寺 古川周賢
- 00:101.
初めのあいさつ
- 01:342.
貴殿の兵法に当て申し候はば...
- 09:513.
仏光国師・無学祖元禅師のこと...臨刃偈(りんじんげ)
- 00:304.
かように心を忘れきって...
- 05:285.
「忘れ切る」こと
- 00:106.
終わりのあいさつ
コメント
バックナンバーを購入するとコメント欄に参加することができます