#212 他人の声で生きることをやめ、自分で人生の手綱を取り戻すための本~安斎勇樹著『静かな時間の使い方』
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安斎さんは研究者でありながら経営者でもあり、学術の世界と経営現場を行き来しながら、人の創造性を活かした組織づくりとキャリア論を探究している方で、その両軸を生きる姿勢がこの本の土台になっています。
この『静かな時間の使い方』は、一言で言うと、”現代社会のうるささから自分を守り、ケアするための本”です。
■ソーシャルノイズとは
安斎さんはこのうるささを「ソーシャルノイズ」と呼んでいます。
ソーシャルノイズは物理的なうるささ、例えば家の隣でマンションの工事をやっていて、その騒音が何デシベルというようなうるささではなく、頭の中が他人の声でジャックされている状態のことです。
ソーシャルノイズは、大きく「社会の規範」「市場のスコア「共同体の空気」の3つに分類できます。
ソーシャルノイズ自体は決して悪ではないが、これらのノイズが過剰になると、誘惑または抑圧の悪影響で「自分が本当にやりたいこと」がわからなくなってしまう、というのが問題意識です。
では、どうしたらいいのか。
ソーシャルノイズ、外圧に反応しない「静かな時間」を意図的に確保して、自分の内側をちゃんと振り返りましょう、というのが本書の提案です。
■リフレクションとは
その振り返りの方法として提案しているのが、リフレクション(内省)です。
これは反省や自己批判とは違います。上司の評価や数字の達成度ではなく、「自分はあの時何を感じていたのか」「何に興味が向いていたのか」「何を大事にしている人間なのか」——それを自分の言葉で言語化していく作業です。
リフレクションの習慣がある人は
・やりたいことが見つかりやすくなる
・ネガティブな感情を早く切り替えられる
といい、これを安斎さんは「ディフェンス力が上がる」と表現しています。
自分でキャリアをデザインできる感覚を持てるとも。
ポイントは、いわゆる時間術や生産性アップの本とは真逆の発想であるということです。
なぜなら、生産性を上げようとすること自体、ソーシャルノイズに乗っかってしまっていることになるから。
むしろ、うまくサボって、自分のゼンマイを自分で巻き直す時間を取ることが、長期的には一番パフォーマンスが上がるという考え方なのです。
■ソーシャルノイズ診断
この本は全編で六章から構成されています。
第一章は「ソーシャルノイズ診断」。自分がどんなノイズに弱いかというタイプを知ることができます。
私はどの数値も低かったのですが、唯一 当てはまるとすれば承認依存タイプでした。(とはいえスコアが3で、そのノイズの影響を受けにくいという診断でしたが)
確かにひと昔前までは「承認されるためなら死んでもいい」という態度でした…それに疲れて適合から意図的に逸脱していまこんな風になってしまいまったんですがw
逸脱するのだということを自分に言い聞かせるように放送したのが
ラジオ Voicy 📻#35 「私は暇です」本当に大事なことのために暇でいる努力をする
でした。
「暇な人」って、社会人として一番ダメじゃないですか。
そんな人に誰も仕事を依頼したくないですし、人からそう思われることはめちゃくちゃ怖いです。なので震えながら放送しましたw
結論からいうとこの放送では「本当に大切なことのために時間を使う」という話をしているんですが、このタイトルで発信することが怖い、と感じるということはつまり承認依存があるのだと思います。
わざわざこんな宣言をしてノイズを減らしているおかげで、いまは毎日幸せを感じていますが、社会的にはかなりダメになっていると思いますw
でもそれが面白いと思えるようになったのは、めちゃくちゃ大きな変化があったんですが、これについては後ほど。
続いて第二章はリフレクションの基礎習慣。モヤモヤの言語化や、飽きセンサーを鋭くするなど、とても具体的に書いていますので、書いてる通りにするだけで実践できます。
そして、第三章から六章は感情、技術、興味、信念のリフレクションの方法が記載されています。具体的なフレームワークで用意されているので、読みながら手を動かせる実用書でもあります。
そして、これは私もなのですが、多くの方が読み終わると、
「もう今すぐリフレクションしたい!!」
と思ってしまうという、めちゃめちゃパワフルな内容。
他人の声で生きることをやめて、自分で自分の人生の手綱を取り戻すことを助けてくれる本です。
■心理的成功とパーパス
安斎さんは第6章で「信念を言語化することは究極のリフレクションだ」と言っています。明確な信念は、ソーシャルノイズに対する免疫になる。そして信念とは、自分の才能の発動条件でもある、と。
これは私がライフワークにしている心理的成功(Psychological Success)とパーパスのことだと思いました。
心理的成功は、ボストン大学の心理学者ダグラス・ホール博士が提唱する「プロティアンキャリア」で重視されている概念です。一言で言うと、キャリアや人生において個人的・超主観的に感じる満足感や達成感のこと。
そしてそれを実現するための行動指針・判断基準がパーパスです。
私自身の心理的成功の状態は、建築家クリストファー・アレクサンダーの言葉を借りるなら「無我の創造(Egoless Creation)」ができている感覚のこと。自分で何かをやってやろうという作為性や力みを手放して、自然に降りてくるもの。安心して、隠さず、嘘をついていない状態が、私は一番クリエイティブだと思っています。
そのためのパーパスは、「自分の天性・天分にかなって生きる、開発する」。
天性・天分は四書五経に出てくる東洋思想の言葉で、生まれ持った才能や性質のことです。私たちは自分が持っているものは当たり前に感じてしまうから、持っていないものにばかり目が向く。あの人に比べて自分はこれが劣っている、自分にはこれが足りない、と。
これってまさにソーシャルノイズですよね。
自分が元々持っている性質や才能を尊重して、それがフィットする環境を自分で作っていく。そのスタンスを保っていくことが私のパーパスです。
■探究テーマは「漏れ活(もれかつ)」
このパーパスを言語化してから、日々の選択が本当に楽になりました。毎日が幸せだなと思えるようになった。そして、自分の探究テーマである「漏れ活」も言語化できました。
当事者性が高いから気になるのだと思いますが、私は自分を調整してうまく社会に適合している(乾いて匂いのない)人よりも、うまく調整ができなくて、内側のいのち(エロス、水分)が溢れ出してしまっているような人が大好きです。
好きなもの、心から愛するものは往々にして
「それで食えるの?」
「生産性は?」
「何の役に立たつの?」
といったソーシャルノイズになることが多いように感じます。
でも、その瑞々しいエネルギーは私には生き生きとした生命力に見えますし、それこそがAI時代に人間が存在する理由だと思うのです。
昼スナでは、そんな「漏れている人」を合法的に愛でるために、イベントという形で推し活をしています。
「漏れ」の概念は京都大学の歴史哲学者・藤原辰史先生の「分解の哲学」からインスピレーションをいただいたのですが、この事を藤原先生にお伝えしたとき、「フィッシュさん、それは推し活じゃなくて漏れ活ですね」と名付けてくださったのです。
それ以来、漏れ活が私の探究テーマになっています。
百年・千年の長い時間軸で見ると、いかに効率よく生きたかよりも、いかに漏らしながら瑞々しくエロスを発揮して生きたか、ということに私は価値を感じるのです。
■「役に立たなくてもいい場所」の意味
私はもともとマスコミ出身で、テレビや新聞の仕事をし、海外メディアでも働きました。その際に性別や人種による差別を経験して、自分のマイノリティ性を自覚することで、世界の見え方がガラリと変わりました。
帰国後は社会福祉士になり、大学の研究センターで社会課題解決の事業立ち上げや教育に関わりました。その後、バングラデシュのグラミングループで働いたことからSDGsの文脈で組織のパーパスに関わりましたが、組織のパーパスはリソースをたくさん使って大切にされるのに、そこにいる一人ひとりのパーパスにはあまり関心が向けられないことに、違和感があったのです。
そこで個人のパーパスを言語化するセッションを始め、一人ひとりの人生を聞く場所として、博多の中洲でお昼のスナックを開きました。
お店の名前は「役に立たなくてもいい場所」といいます。
私自身、かつては「役に立たなければ死ぬ」くらいに思っていました。
親に愛されるために
先生に褒められるために
上司に認めてもらうために
必死でまさにソーシャルノイズまみれだった。
でも歳を取ると体力も集中力も落ちて、頑張れなくなってくる。
そうして「もうただ役に立つために生きるのは嫌だな」と思ったのです。
「役に立たなくてもいい場所」というのは、何もしないとか能力が低いということではなく、他人に自分の価値を決めさせないということ。自分の願いや内発的な動機を大切にすること。時間やお金といった自分のリソースを、自分の人生のために使っていいんだと、自分に許可を出すことです。
これを生きることで、結果的に今、人生で一番人の役に立っていると感じています。
■そのノイズ、実は自己再生している可能性も
1 on 1でのパーパスの言語化セッションは、仕事も年齢も国籍もさまざまで、すでに600人近くになりました。企業や学校からキャリア自律の文脈でお声がけいただく機会も増え、ワークショップまで含めると6,000人以上の方とご一緒してきました。
自分が何を大切にしたいか、どんなふうに生きていきたいかを言語化することが、自分らしく生きる・働くことを助けてくれる、その人の力を最大化するということを日々、目撃し、実感しています。
そして、このリフレクションを習慣化して、より効果的にしてくれるのがグループコーチングです。
毎月最終日曜日の午前中、お店が開く前に、パーパスを言語化した方たちが集まって、パーパスを軸に振り返りをしており、そこでお互いに感じたことをフィードバックしあっています。
というのも、一人でいきなり静かな時間を取ろうとしても、なかなかソーシャルノイズはキャンセルできないものだからです。
「こんなこと言ったらバカにされるんじゃないか」
「もういい歳なんだから」
「母親なんだから」
——そういったソーシャルノイズは、外から聞こえてきている、誰かが言っているように聞こえて、実は自分の頭の中で勝手に再生し続けているということがとても多い。
1 on 1のセッションでは、「そのノイズ、誰も言ってませんよ、あなたが再生しているんですよ」ということを一緒に確認しながら、だんだんノイズのボリュームを下げていき、聞こえてくる心の声——信念を言語化していきます。
そしてグループコーチングでは、お互いが貢献しあって静かな時間を作り、その感覚を持ち帰って、一人でリフレクションするという流れを作っています。
毎月参加される方もいれば、時々いらっしゃる方も。
企業や自治体関係の団体でもオンラインで定期的に実施しています。
■昼スナは探求のフィールド
ゴールデンウィークにゆっくりリフレクションをしてみて、あらためて言語化できたことがありました。
・昼スナは、私にとって静かな時間を作る場所だった
・「役に立たなくてもいい」というのは、ソーシャルノイズをできるだけ小さくするという意味だった
・お店はそんな私の探究テーマの実践フィールドだ
だということです。
安斎さんは最後にこう言います。
「探究の意味は、自分と世界のより良いつながり方を探ること」
自分を通して世界を理解して、世界を通して自分を理解する。
昼スナを通じてその探究ができていることは、私にとって本当に幸せなことで、一緒に探求してくれているお客さんたちに、心から感謝しています。
昼スナママ・フィッシュ明子の役にたたなくてもいいラジオ
フィッシュ 明子
- 00:161.
タイトルコール
- 06:092.
現代社会の「うるささ」から自分を守りケアする
- 04:524.
昼スナは探求のフィールド
コメント

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セッション、私もとても楽しみです。いつもありがとうございます。
いや、そのノイズがめっちゃうるさかったんですw