TOPハウツー・学習語学言葉と思索- 翻訳家の縁側ブルース#386 翻訳者の悲哀 表紙におまえの名前など要らんという著者10:29 7月26日 587再生 問題を報告する 再生する シェアする AI目次著者の要求「翻訳者名、表紙から削除せよ」「翻訳者不要」著者の姿勢への落胆欧州で高まる「翻訳者を表紙に」の波これまで他人事だった欧州翻訳者の苦しみ翻訳者の仕事の価値を認める活動の必要性AI文字起こし(β版) # イントロ 本川の皆様、こんにちは。翻訳家のエンガーブルース略して本川、パーソナリティでノンフィクション翻訳家のひじかたなみです。 このチャンネルでは、60冊のノンフィクションを翻訳してきた私が、翻訳から学んだこと、心に残った本、気になった海外のニュースなどをお伝えしていきます。 サブテーマとして、人生における大小様々な失敗に立ち向かう筋肉、失敗期を期待ようということを掲げておりまして、皆様からの失敗エピソードも募集しています。 # 「おまえの仕事に価値はない」と言われる衝撃。ヨーロッパの翻訳者達が味わってきた苦しみが初めて自分事として感じられました。翻訳者を守るために私は何ができるだろう。 本館の皆様、こんにちは。 今はね、7月の25日の夕方ぐらいなんですけれども、 翻訳者の家の中庭の椅子に座っているところです。 なんかね、翻訳者の家の近くは黒猫がウロウロしていて、 すっごい人懐っこい猫でね、 今私の真横に、仲間のように一緒に椅子に座っているんですけれども、 今日は空気がすごく澄んでいるのか、 遥か遠くの湖とか山がとても綺麗に見えて、 なんかね、本当にこういうところで過ごさせてもらっているのは何のご褒美なんだろうと、 とても幸せを感じるんですけれども、 やっぱりね、人間万事、最王が馬じゃないけど、 ご褒美っていうのにはね、やっぱりこうパニッシュメントっていうの、 そういう試練もつきものなのかなと思うような出来事があったんで、 今日はね、それをお話ししようと思うんですが、 私現在進行形で3冊ぐらい本を進めていて、 もう翻訳が仕上がっているものもあれば、 今取り掛かっているものとかもあるんですけれども、 だいたい翻訳作品っていうのは、 日本語版の表紙のデザインとかができると、 著者にお伺いを立てるんですよね。 よほどのことがなければ、各国のセンスとか、 マーケティングに合わせて、 あんまり表紙に文句は言われないことが多いんだけど、 今回のその作品の著者はね、 とにかく英語版の本の表紙とそっくり同じじゃなきゃいけないと、 しかもタイトルも英文のものをそのまま使えと、 これかなり非常識なことなんですけれども、 だって英語のタイトルをそのまま日本語にしたところで、 意味がわからないケースもたくさんあるし、 やっぱり日本のマーケットっていうのは海外とは違うので、 それに合わせてタイトルを作るっていうのが、 ごく当たり前のことであって、通常はそれが尊重されるんですけれども、 今回の著者はね、タイトルも元々の原書通りじゃなきゃいけないし、 しかもね、表紙からその翻訳者の名前を削除しろって言ってきたんですよ。 これね、私これまで65冊ぐらい翻訳書を出してきましたけど、 そんなリクエストをされたことは初めてで、 出版社の方はね、私がずっと20年近くお世話になっている方で、 なんとか私の名前を翻訳書の表紙に残そうと頑張ってくださってますけれども、 結局表紙の決定権っていうのはやっぱり著者の意見が大きいのでね、 私の名前が表紙に残るのか否か、まだ情勢が流動的なところなんですけど、 正直本音を言うとね、私も65冊ぐらい翻訳書が出てるし、 今さら自分の名前が表紙に載った本が1冊増えるかいなかって、 正直それはそこまでこだわりがないっていうかね、 それ以上に今の感情として、そういう著者に関わってしまったことが残念っていうか、 なんていうんだろう、その著者の作品を翻訳するのにね、 3、4ヶ月間私は毎日その人の本当に言わんとしていることはなんだろうっていう、 日々その人の文章と向き合って、それを一番日本の読者にとって分かりやすい形で、 彼のメッセージを伝えるにはどうするのがいいのかなっていうことと日々向き合いながら、 カイコがクワの方をパクパクと食べてね、お尻から絹の糸を出していくような、 そんな地道な数ヶ月間を毎日ポリポリと積み重ねた末に翻訳を仕上げてみたら、 著者の方から別に翻訳者の名前なんかいらないだろうっていうね、 翻訳者に対するリスペクトが一つもないような反応をされたわけですよね。 なんかそれがすごく残念な気持ちなんですよね。 世の中全体で見れば、本を書く人の大部分っていうのは、 自分の本を外国語に翻訳する翻訳者に対してリスペクトを持っている人の方が大多数だと思うんですよね。 実際にガルシア・マルケス、100年の孤独を書いた有名なノーベル書作家がいますけれども、 彼は自分のスペイン語で書いた本を英語に訳した翻訳者に対して、 私の作品を英語で完全にリクリエーションしてくれた、 改めて創造してくれたって言ってすごく感謝の意を表明したりとか、 そういう大作家であっても、翻訳家へのリスペクトを当たり前に持っている人はたくさんいるんですよね。 だから私もそんな暇じゃないっていうか、たくさんの翻訳書のオファーをありがたくいただく中で、 よりにもよってそういうハズレくじみたいなものを引いちゃったっていうのがショックだったりするんですけれども、 そんな翻訳者を使用人みたいな、表紙に取り上げる、一緒に載せる価値もないと思うような人であれば、 もともとAIに翻訳させる時だと思うんですけどね。 ただ以前もこのチャンネルで配信したように、翻訳者の名前が当たり前のように表紙に載る日本っていうのは決してメジャーではないというか、 ヨーロッパ諸国ではむしろ表紙に翻訳者を載せない国の方が伝統的には多かったんですよね。 ドイツとかイタリアとかイギリスもそうなんだけれども、だから今回の著者も単に無知なだけでね、 なんでこの翻訳者の名前なんか表紙に載せるんだよと奥づけでいいじゃんと思っただけかもしれないんですが、 でもそうした状況を変えようと近年では、今私が滞在しているスイスの翻訳者の家もそうですけれども、 そういう翻訳に関わる施設とか翻訳者とか作家の方々が協力し合ってね、 translatorの名前をちゃんとはっきり言いましょうとか、translator on the cover、翻訳者を表紙に載せましょうとか、 そういうムーブメントがここ近年すごく盛り上がっているんですよね。 やっぱり自動翻訳などの台頭があって、翻訳者が絶滅危惧種になりかかっているんだけれども、 そうした中で、人間の創作物を他の言語に置き換える翻訳という仕事をきちんと大事にしよう、 そういう思いもあって、この翻訳者を表紙にという動きがヨーロッパではすごく広がっていて、 前に先月滞在したドイツの翻訳者の家でも、ドイツの翻訳者の家は翻訳の賞を一つ主催しているんですが、 10年ほど前は、応募してくる作品の中で、表紙に翻訳者の名前があるのは10%くらいだったんだけれども、 最近ではほぼすべての応募作に、表紙に翻訳者の名前が載るようになったとか、 明らかにプラスの変化が出てきているので、今回の私のイギリス人の著者は、 単に考えが古い無知な人なのかもしれないんですけれども、 日本では翻訳が盛んになったのが明治維新で、実際にいち早く翻訳を手掛けたのが福沢諭吉とか、 そういう人は当然自分の名前を翻訳書のカバーに出そうとするし、 それは出版社側の思惑としても、福沢諭吉が翻訳した本だということで載せる意義があって、 そういう歴史から日本では翻訳者の名前が載るのが当たり前だったから、 私はこれまではヨーロッパの翻訳者の苦労なんて聞いても、 やっぱり自分事として捉えられていなかったなって今回改めて思うんですけど、 でもたまたま私は今、翻訳者の家で翻訳家の方々に囲まれているので、 著者からこんなこと言ってきたんだよってみんなに話を聞いてもらったら、 それはつらいよねってすごく共感してもらえて、 やっぱり自分がすごく一生懸命取り組んだ仕事が否定される、 価値がないもののように扱われるっていう衝撃は、 なかなか今回経験してみないとわからなかったことなので、 それからことが起こって数日経った今となって、いい勉強だねと思って、 逆に自分自身、翻訳者の仕事の価値を認めるための活動を もっともっとしていかなきゃいけないなと前向きに捉えるきっかけにもなって、 VC始めたのもそういうつもりで始めたわけで、 もうちょっと真面目にやらんとあかんなと思ったわけだけど、 先日このチャンネルでもお話しした、イギリスの翻訳者の方が始めたって言ってた、 そのYouTubeで翻訳者の方々が自分の作品を5分間くらい読むっていうね、 そういうの本当にやっぱり日本でもしないといけないなーなんて、 また改めて思ったんですけど、 いろいろな取り組みをしていくことも大事なんだけど、 やっぱり基本は自分の翻訳の質を高めていくってところが出発点なんでしょうね。 やっぱり機械翻訳じゃなくて、人間の訳した文章っていいねと思ってもらえるような、 やっぱりそういう作品を作っていかなきゃいけないなとか。 でもそのためには商品表示みたいな、そういう仕組みも必要なんだろうなと思ったりしました。 例えば遺伝子組み替えの台像を使ってない的な表示ってあるじゃないですか。 これからその翻訳者の中でね、もしAIが一番最初の第一項っていうの、 それをAIにやらせた場合はTranslated by AIみたいな、 なんかその商品表示でこれは人間のものなのか、 AIを使ったものなのかっていう表示がなければね、 なかなか読者の方に人間の翻訳者の良さみたいなものも伝わりにくいと思いますしね、 そういう表示みたいなものを翻訳出版の業界全体で考えていただきたいな、みたいなことも考えましたし、 なかなか翻訳者って立場が弱いから、そういうのって出版社を中心に進めていただかないと進まない話だったと思うんだけれども、 少しでもね、そういう業界全体の翻訳者を守る動きに自分として関われたらいいなとか、 そんなことをここ数日ずっと考えてました。 なんかちょっと今日は愚痴っぽいお話になっちゃったけど、 まあ長いことね、翻訳者20年くらいやってるとこういうこともあるんだなと、 逆に20年間こういう思いをしないで済んできたっていうのは幸運だったのかもしれないですね。 That's all for today. Thank you for listening. もっと見る言葉と思索- 翻訳家の縁側ブルース土方奈美(翻訳家)00:291.イントロ10:002.「おまえの仕事に価値はない」と言われる衝撃。ヨーロッパの翻訳者達が味わってきた苦しみが初めて自分事として感じられました。翻訳者を守るために私は何ができるだろう。コメント感想・質問・応援メッセージを書こう Kei M7月30日作家の名前を教えてくれたら、こちらでしっかり酷評しておきますよ!それにしても、「お前の本は二度と訳さない。こんな本に私の名前を載せるな!」って、逆に言ってやりたいレベルですね(笑)1返信 いたる7月29日出版社と原作者の関係性が気になるお話だなと思いました。著者にしてみたら「お前らがやりたくて勝手にやってることだろうから、余計なものをつけるな」ぐらいの感じがあるのかしら?あるいは別に英語圏以外に広まらなくてもいいと思っているのかしら?ただ、良い作品であると思っているから広めたいと思っているわけであり、その思いに対する敬意は示せないのかなとは思います。翻訳者の家ご滞在は、あとどのくらいでしたっけ?三冊同時進行中とのこと、世の中に出てくるのが楽しみです。1返信 ちーもん7月28日ショックですね。これも翻訳の価値を発信する原動力にしてがんばってください🙌🏻本や芸術含む全ての価値があると評価されている仕事は作品を目立たないで支えているたくさんの人々の力があって成立していると思います。そんな目立たないけど重要な仕事をただの道具のように見えてないように扱う態度がダサくなる時代に向かっていると信じてます。1返信 よっしー7月27日小学生時代にアーサー・ランサム全集という児童文学にはまり、何度も読み返したのですが、そのシリーズの翻訳者である神宮 輝夫さんに、子供心に感謝しました。外国のお話を日本に伝えてくださることの大事さを理解できていたのだと思います。著者がどう扱おうともその大切さは変わらないので、自信を持っていただければ良いと思います。1返信 はずれスライム7月26日翻訳者に限らず(日本の)読者にも感謝が無いんでしょうね。そもそも本を書いてる意味すら聞いてみたいところですが、きっと日本語以外の翻訳家に対しても同じなんだと思います。次回の契約は無い、ですね。出版された時に紹介されるでしょうから著者名を記憶しておきます(笑)3返信 もっと見る
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それにしても、「お前の本は二度と訳さない。こんな本に私の名前を載せるな!」って、逆に言ってやりたいレベルですね(笑)
著者にしてみたら「お前らがやりたくて勝手にやってることだろうから、余計なものをつけるな」ぐらいの感じがあるのかしら?
あるいは別に英語圏以外に広まらなくてもいいと思っているのかしら?
ただ、良い作品であると思っているから広めたいと思っているわけであり、その思いに対する敬意は示せないのかなとは思います。
翻訳者の家ご滞在は、あとどのくらいでしたっけ?
三冊同時進行中とのこと、世の中に出てくるのが楽しみです。
著者がどう扱おうともその大切さは変わらないので、自信を持っていただければ良いと思います。
そもそも本を書いてる意味すら聞いてみたいところですが、きっと日本語以外の翻訳家に対しても同じなんだと思います。
次回の契約は無い、ですね。出版された時に紹介されるでしょうから著者名を記憶しておきます(笑)